第7話

絵梨と花蓮と一緒にバベルを探索した次の日の日曜、征司は再び黒狐としてソロで探索を行っていた。最初は今日も絵梨を連れてバベルに向かおうとしたが何事も休みは必要だと考え誘わなかった。

征司が今いるのは51階層は昨日の迷宮から一転、塔内とは思えないほど青い空に辺り一面が岩山のような場所にいた。この階層は見晴らしがよくモンスターもあまり強いモンスター征司基準がおらず征司にとっては絶好の狩場である。


「ピギャァァァア!!」


鉱石で覆われた巨鳥が征司に襲い掛かる。

オーアホークと言われるモンスター、爪は鋭く硬く、どういうわけか鉱石を生成し飛ばしてくる。個体によって飛ばす鉱石は異なりそれを拾うだけでもかなりの金になる


「はぁ~ただの石か外れだな・・・」


飛ばされた岩を足場にしながらオーアホークに近づき背後に飛びつく


「ピィギャ!?」


そのまま空間から2本の剣を取り出しオーアホークの翼を切り裂いた。


「ピギャァァァアア!!!」


痛みで暴れだすオーアホークにしがみつきながら更に一撃を加え仕留める


「これで10体目・・・少し休憩するか・・・」


朝8時から約5時間探索していたところで征司は休憩を始めた

この階層に1階層から全速力で他を無視して1時間、そんな場所になぜ征司がいるか。


「(少しは気晴らしになったか)」


それは・・・・欲求不満なのだ。


この逆転世界は女性ばかりいるせいか比較的露出が激しい服が日常的だ

クライマーの防具は全身布などで覆われているがなぜか胸や局部を丁寧に目立たせるデザインをされている物が多い。

前世は天寿を全うしているが脳が肉体年齢に引っ張られてしまうせいもあって征司はいろいろ溜まっている。そのため征司は鍛錬と発散も兼ねてバベルに登ることがある


「(そういう世界だって理解したつもりだったんだがな・・・)」


ため息をつきながら征司は考えた。自分の欲望を優先するのはいいが今は絵梨という仲間もいる、仮面をしているため表情は出ないがあまり女性をそういう目で見てはいけないと思っている反面この欲求はどこで発散するか検討がつかない。


「もう少し発散して帰るか・・・」


征司はモンスターを狩りながら発散し続け約2時間、切り上げようとしていた時


「ピギャァァアア!!」


遠くの方からオーアホークの鳴き声が聞こえた。それを聞いた征司はそれを最後にして帰ろうと思い声のする方へ向かう。

着くとそこにはすでにオーアホークと戦っているパーティーがおり苦戦しつつもダメージを確実に与えている様子だった。


「(6人パーティーでオーアホーク相手に苦戦しているがおそらく大丈夫だろうけど一応様子を見るか)」


通常パーティー推奨なのだが征司にとってはその程度の存在、征司は邪魔にならない位置で念のための待機し後学の為にパーティーの動きを見ていた。


「皆!もう少しで倒せるわ!」


リーダー格であろう女性の一声にパーティーは武器を構えオーアホークに襲い掛かる、2人の遠距離職もおり魔法で牽制し動きを抑え近接職がダメージを与えている


「ピギャァァアア!!」


オーアホークの悲鳴のような雄叫びにパーティーメンバーも怯まず攻撃の手を休めず続ける。


「よし!今よ!!」


リーダー格が叫んだと同時に前衛職が武器で叩きつけ、後衛職は魔法で追い打ちをかける。そしてついに・・・


「ピギャァァア・・・」


オーアホークは倒れた。それを見届けたパーティーメンバーは喜び合い勝利を分かち合っていた。


「(なるほど・・・遠距離攻撃で羽を攻撃し出来る限り飛ばさないように抑え近接職が・・・なるほどいい連携だったな)」


征司も感心していた。たまたまではあったが見るだけでもこれからの良い経験になったと感じ立ち上がり去ろうとした


「(やはり戦いは勉強にな・・・ッ!!)」


刹那。先ほどの倒されたオーアホークの死体を見る。すると死んだはずのオーアホークがいきなり起き上がり風がオーアホークを包む


「なっ!!まだ生きてたの!?」


「そんな!確かに倒したはずよ!」


パーティーメンバーは驚いていたが征司にはわかっていた、これの現象が何なのか。すぐさま走りだし戦っていたパーティーに近づく


「撤退しろ」


「え!?黒狐!?」


征司はリーダーと思われる女性に近づき声をかける、突然の征司の登場で驚きながら女性は警戒を強める


「なんとなくわかるだろう?あれが何なのか・・・」


「ええ、見るのは初めてだけどあれは確実に・・・」


「「存在進化エクセリクシィ」」


存在進化エクセリクシィ・・・極稀に起き条件も不明、文字通りモンスターが進化する現象その強さはその階層からさらに10階層上の強さと言われている

やがてオーアホークを包んでいた風が掃われる。そこから出てきたのは一回り大きくなり琥珀色の鉱石を纏った四足歩行に進化したオーアホークがいた


「さしずめオーアグリフォンと言ったところか・・・」


オーアグリフォンと征司は呼んだそのモンスターは咆哮を放つ。その威力だけで征司以外のパーティーメンバーを震え上がらせ立つのがやっとだった。そんな中でもリーダー格の女性は何とか冷静さを保っていた。しかしどうすることもできない、ここで対峙したとして何人生き残れるだろう・・・


「転送石でさっさと撤退しろ、進化したアレに記憶があるかわからんが真っ先に狙われるのはあんた等だ。それにオーアホークに手間取るようじゃ悪いが邪魔になるだけだ」


「・・・・ッ」


征司の言葉に女性は悔しそうに歯を食いしばりながら頷き仲間と共に転送石を使い撤退していった。それを見届けた征司はオーアグリフォンに向き合う


「・・・さて、どこまでやれるか・・・」


恰も征司の準備を待っているように何もしてこなかったオーアグリフォン

目の前にいるのはバベルで今まで出会ったモンスターの中でもトップクラスの存在、その強さを肌で感じながらも征司は剣を構え戦闘態勢に入った。

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