第6話

ジョブカード・・・自身のジョブが記載されているカード

ゲームのようにステータスは数値化されてなく記載されているのは自身の名前、ジョブ、スキル、魔法のみ

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ギルドに戻った征司たち、ギルドは朝の静けさから一転喧騒に包まれていた


「あ、黒狐様、桜坂さん・・・あら?花蓮さんも一緒に行かれたのですか?」


受付カウンターに行くと天音が驚いた表情をして花蓮のほうを見る。


「・・・まぁいろいろあってな、買取と絵梨のジョブカードに更新をかけてみてくれ」


征司の言葉に何かあったのだろうと思ったが天音は受付としての仕事を始めた


「そうですか・・・では換金する物とジョブカードをこちらに」


その言葉を聞き征司の空間魔法にしまっておいた魔石をトレーに移し後ろにいた絵梨は自身のジョブカードを置いた


「ではしばらくお時間をいただきますのでおまちください」


そういうと天音は番号札を征司に渡し裏に消えた、絵梨は待ち時間をどうするのか周りを見渡す。すると花蓮が話しかけてきた。


「ではお茶でもしましょうか」


「あ、はい、黒狐さんは?」


「いや、遠慮する。2人で行くといい」


そう言うと征司は待合室に座りスマホを取りだし何かを見ていた


「相変わらずつれないお方ですわ、では行きましょうか絵梨さん」


併設されているカフェにつき一息つくと花蓮が口を開く


「さて絵梨さん今日はどうでしたか?」


その言葉に絵梨は今日の出来事を振り返り答える


「・・・正直、今までにないくらい疲れました」


「ふふ、でしょうね。でも楽しかったでしょう?」


「それは・・・はい」


絵梨は自分自身でもこう思っていることに驚いている。今回のような危険を伴うような探索は初めてだったが自分がここまで動くことができる事に歓喜し征司の足を引っ張る可能性が少しでも減ることに安堵していた。


「きっと絵梨さんはこれからもっと強くなれますわ」


「そうだといいのですが・・・」


「これからも黒狐様と一緒に組むのでしたらネガティブな考えをおやめなさい?でないと・・・取られちゃいますわよ?」


「・・・・ッ!」


花蓮はいたずらな笑みをしながら絵梨に告げる、なぜか顔が赤くなる絵梨をよそに花蓮は続けて言う


「まだクライマーになったばかりの貴女は知らないと思いますが黒狐様、すごい人気なのですよ?今日だって今までソロだった方がいきなり、しかもなりたての方と一緒に組むなんて驚きましたもの」


「・・・・・・・・」


花蓮の言葉に何も言えずにいた、気づかないようにしていたがバベルに入る前やギルドに戻ってきた時多くのクライマー達から視線を感じていたのだ


「と言っても先輩風を吹かしましたが私も黒狐様も世間一般ではまだ初心者ですが・・・」


「え・・・?」


花蓮の突如のカミングアウトに絵梨は驚いた、花蓮は予想通りだったのか笑みを浮かべながら話を続ける


「だってまだ1か月ほどしか経っていませんわよ。私もあの方も」


「え、でも・・・」


絵梨は花蓮の言葉を聞きさらに驚く、花蓮のことは知らないが明らかに初心者とは思えない、そして55階層に行っていた征司が初心者のはずない。そう言おうとした時後ろから声をかけられる


「終わったそうだ行くぞ」


いつの間にか後ろにいた征司に声をかけられ聞くのをやめ絵梨は花蓮と共に受付カウンターに向かう。


「ではまず絵梨さんおめでとうございます。ジョブに変更がございました」


天音から渡されたジョブカードを見るとそこには『剣士』と書かれていた。


「おめでとうございます、これで絵梨さんも登り始めた者スターター卒業ですね」


「あ、ありがとうございます!」


「それに伴いギルドの規定により金50万円の贈呈がございます。これからも頑張ってください」


天音から厚みのある封筒と祝いの言葉をもらい絵梨は嬉しくなり笑顔で頭を下げた。花蓮のほうも見るとほころんだ顔で拍手している、征司のほうを見ると仮面をつけているがおそらく無表情だった。


「続けて提出していただいた魔石の換金額が95万円になりますがよろしいですか?」


天音の言葉に3人はうなずく。それを見た天音は後ろにいる別の職員に指示を出しお金を受け取りトレーに置いた。


「はい、それではこちらが今回の買取金額になります」


天音はそう言いトレーをカウンターに置き征司が受け取る


「手」


「はい?」


征司の言葉の意図が読めなかった絵梨だがとりあえず手相を見せるように手を出す、すると征司は受け取った大金をそのまま絵梨の手の上に置く


「え、ちょ!黒狐さん!?」


「元々お前のための金策だ、別にいらん」


「で、でも・・・」


絵梨は征司から渡された大金に困惑している。花蓮のほうも見るが首を横に振る


「黒狐様がこう言っているのですからもらっておきなさい?それにそれは貴女が頑張ってきた成果ですわ」


「・・・わかりました、ではいただきます(こんな大金持って帰るのか・・・)」


2人に言われ絵梨はしぶしぶとした様子でお金を受け取るが内心はこんな大金を持って帰るのに震えている。


「ありがとうございます黒狐さん、花蓮さん」


絵梨は2人に感謝の気持ちを伝えるが征司は手を上げ答え花蓮も笑みを浮かべ手を振る。その後天音に軽く頭を下げギルドを後にした

途中帰り道の方向の違いで征司と別れ絵梨は花蓮と一緒に帰っていたが絵梨は上の空だった


「(私、征司君、黒狐さんのこと知らなすぎるな・・・)」


征司と会ってまだ1週間ほど、知らないのは当たり前だがこれから一緒にバベルに挑む関係としてはもう少しお互いのことを知るべきではと絵梨は考える


途中帰り道の方向の違いで征司と別れ絵梨は花蓮と一緒に帰っていたが絵梨は上の空だった


「(私、征司君、黒狐さんのこと知らなすぎるな・・・)」


征司と会ってまだ1週間ほど、知らないのは当たり前だがこれから一緒にバベルに挑む関係としてはもう少しお互いのことを知るべきではと絵梨は考える


「(でも征司君、あまり交流しないしな・・・)」


学校ではクラスメイトではあるが男である征司に他の目を気にしながら話しかけるのは些か難しい、クライマーという接点はあるが今はまだビジネスパートナー程度だと絵梨は思っている


「・・・梨さん?・・・・絵梨さん!」


「え?あ、なんですか?」


「もう、どうしましたか?ぼーとして」


考え事をしていたせいで花蓮に呼ばれているのに気づかず絵梨は反応すると花蓮は心配そうな表情で話しかけてきた。


「あ、ごめんなさい・・・少し考え事していて」


「・・・もしかして黒狐様の事ですか?」


図星を突かれ絵梨は驚きながら花蓮のほうを見るが笑っている


「え、なんで・・・」


「わかりますよ、顔に書いてありましたから」


「そ、そうですか・・・」


絵梨は花蓮に隠し事はできないなと思い観念し思いを言った。


「私、いろいろあって黒狐さんとパーティーを組んでもらいましたけど何も知らなすぎるなと思って・・・花蓮さん少しでもいいので教えていただけませんか?黒狐さんのこと」


「ふふ、いい心構えですね。でも私もそこまで交流があるわけではございません。それに今の世の中調べればいろいろ出てきますよ」


絵梨の言葉に花蓮は困った表情を浮かべる。それもそのはず今どきネットで調べれば何でも出てきてしまうのだ、そこで花蓮がスマホを取り出し操作し始めると画面を見せてきた


「これが黒狐様の経歴ですわ」


絵梨は花蓮のスマホをのぞき込むとそこには黒狐に関する情報が乗っていた。

黒狐 年齢・不詳(おそらく20代と思われる)

出身地不明

ジョブ不明

突如ギルドに現れた和服の謎多き女性、常時黒い狐面を被っており寡黙、素顔を見た者はいないため日本人かも不明。特筆すべきはひと月足らずで50階層をソロで突破しているという異常性

当時は多くのクライマーから実力を疑われハイエナ行為を疑われたが、ある時51階層で上級パーティーがモンスターハウスに遭遇、重傷者も出始めたところに黒狐が介入その際黒狐1人の力によって抑えた。それ以降中級以上のパーティーから勧誘を受けるも断り続け現在もソロ、噂では政府が作った人造人間や神に仕える天使のような存在なのではと噂されている


「と、まぁ黒狐様についてはこんなところでしょうか」


花蓮のスマホを返し絵梨はつぶやく


「なるほど・・・(男というのはやっぱりバレてない・・・)」


「・・・他に知りたいことはございますか?」


花蓮の言葉に絵梨は考えながら話を始める


「黒狐さんって花蓮さんにとってどんな人ですか?一応同期なんでしょう?」


「そうですねぇ・・・憧れの存在とでも言えばいいのでしょうか?お強いですしお優しい。いつの間にか背中を追いかけている存在ですね・・・」


花蓮は空を見上げ優しい目夕陽を見ている。話を聞いて絵梨は心当たりがあった、学校ではあまり話さないし表情も変わらないがほぼ初対面だった自分に優しく接してくれた。世の男性とは少し違う存在


「だから・・・貴女に嫉妬していますわ」


「え?」


「・・・なんでもございませんわ。私から話せることはこれくらいですね。さぁ、遅くならないうちに帰りましょう」


絵梨は花蓮が言ったことを聞き返そうとしたが家に着いた為連絡先を交換し別れた


「今日もいろいろあったな・・・」


ベッドの上で横になり今日の出来事を思い出す。バベルでの疲労感はいつもより強いがそれ以上に充実感があった。


「(なんで征司君のことを知っているだけで嬉しいのかな)」


そして征司が黒狐という秘密、花蓮より自分が征司のことを知っているかのような優越感に浸ってしまっている自分がいることに気付いていない


「早く・・・追い付かなきゃ・・・」


絵梨は疲れもあってっかのまま夢の世界へ入っていった。

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