第4話
驚愕のあの日から数日が経ちバベルに入る前日の夜、あの日連絡先を交換していたので明日のことで電話をかけようと絵梨はしていたが初めての異性への電話に緊張して中々できず時間だけが過ぎていき気づけば23時を回っていた。
「・・・うぅ、もうこんな時間に・・・迷惑じゃないかな・・・」
征司の就寝時間など知らないがなかなかこんな時間に電話をするのは非常識じゃないか?でも・・・などとまた考え始めていた時
『プルルル』
絵梨の携帯に着信が入った。画面を見ると征司と書かれていた、まさかこのタイミングでかかってくるとは思わなかったため慌てて通話ボタンを押した
「も、もしもし!征司さんですか?」
『画面を確認して出たんだろ?今大丈夫か?』
「はい!全然大丈夫です!!」
絵梨は電話越しに大声で返事したため征司の方は携帯から耳を少し離し少しして再び耳に当て口を開く
『それで、明日の事なんだが』
「あ、はい!何時くらいに集合しますか?」
『ギルドで少し早いが9時頃に来てくれるか?」
「わかりました!では9時にギルドで!」
その後特に雑談はなく集合時間だけの業務連絡のような会話だけし電話を切られた、明日は初のパーティーしかも異性と一緒にバベルに挑戦するとあって絵梨は緊張していた。
「ふぅ・・・明日が楽しみだなぁ・・・」
そんな独り言を呟きながら緊張がほぐれたのか布団に入りすぐに眠りについた。
翌日土曜日、絵梨はいつもより少し早く起床し朝食を済ませると身支度を整え自身の装備を持って家を出た、そして約束の時間の1時間前にはギルドに到着していた。
「さすがに早すぎた・・・」
絵梨は手持ち無沙汰になりギルドの施設で訓練をしようと中へ入っていった、中にはすでにそれなりの数のクライマーがいたが時間もあってか少なく思える。
そう思いながら絵梨は受付カウンターにいる天音に挨拶をしに行く
「あれ?桜坂さん?」
「天音さん!おはようございます」
「おはようございます、早いですね征司君は来てないみたいですけど・・・」
天音は笑みを浮かべながら周りを見渡し征司を探していた
「あはは・・・ちょっと緊張して早く来ちゃいました・・・」
「緊張?あぁ・・・そういうことね」
天音は絵梨の一言で大体察した。
「ハハ・・・だから気晴らしに訓練場を使っていいですか?なんか落ち着かなくて・・・」
絵梨は頭を少しかきながら恥ずかしそうに頼む天音はそんな様子を見て微笑みながら頷く そして絵梨は訓練場に足を運ぶ
訓練場はかなり広くスポーツジムのような設備のほかにはクライマーが模擬戦などをするためのバトルフィールドなどがある、絵梨はその場所でストレッチを入念しランニングマシンで煩悩を祓うかのように走り続けた
しばらくして約束の時間15分前になりシャワーで汗を流し再び受付カウンターに向かうとそこにはすでに黒狐状態の征司が来ており待合フロアで座って絵梨を待っていたようで慌てて絵梨は征司に走って向かい謝罪した
「す、すいません!お待たせしました!」
征司は絵梨の謝罪を手で制する。
「いや、大丈夫だも今来たところだ」
よくあるやり取りをしつつ受付に行き天音に手続きを済ませると2人はバベルに向かうが道中二人は無言のままだった。
「(うぅ・・・なにか話した方がいいのかな?でも男の人とを話せば・・・)」
絵梨は内心ドキドキしながら何を話すか考えいると、先に征司から話しかけてきた。
「大丈夫か?」
「はい!?なにがですか!?」
いきなりの事に驚いてしまった絵梨に征司は話を続ける
「・・・さっきからなにかおかしいが・・・調子が悪いなら別日にしてもいいが?」
どうやら征司は絵梨のことを心配してくれたようだった。しかしそんな征司の優しさに嬉しくなるも同時に自分の不甲斐なさを痛感する。
「あ、いえ!大丈夫です!緊張してるだけなんで・・・」
「・・・そうか?」
征司はその様子を見て特に何も言わずバベルへ歩みを進めたがバベルの入り口の前まで着くと急に征司は歩みを止めた
「?どうかしました?」
「チッ・・・鬱陶しいやつがいる」
2人の目線の先、バベル入り口にはすでにクライマーがちらほらバベルに向かっている。そんな中ひと際目立つ自身と同じ大きさの白い戦斧を背負った赤いドレス姿で金髪のクライマーがおりこちらに気づいたようで近づいてくる
「あら!黒狐様じゃないですか!」
戦斧を背負う女性は嬉しそうに話しかけてきた。絵梨はその声にビクッと驚く
「・・・なんの用だ?」
征司はめんどくさそうに返事をするとは笑い始める
「そう邪険にしなさいでください、一応同期ではありませんか」
「・・・ただ同じ日にクライマーになっただけだ」
戦斧の女性は征司に問いかけるが征司は答えずにバベルへ足を進めようとしそれを絵梨は追いかける
「ん?そちらの方は?」
戦斧の女性は絵梨に気づくと足が止まる。
「こいつはパーティーを組んだ奴だ」
征司の言葉に驚き女性は先に笑みを浮かべながら観察するように絵梨を見ていた
「へぇ、貴女様がねぇ・・・名前は?」
女性は絵梨のほうに視線を向け聞いてくる
「え、あ、はい!桜坂絵梨と言います!」
「そう、私は
そう言うと花蓮は手を出し絵梨に握手を求める、突然のことに驚きつつも絵梨は花蓮と握手を交わす
「よ、よろしくお願いします」
2人の自己紹介も終わり征司がバベルに向かおうとしたとき花蓮が再び征司に声をかける。
「それで黒狐様、この方とパーティーを組んだのでしょう?でしたら私とも一緒にパーティーを組んでくださらない?」
「断る」
征司は花蓮の提案を即拒絶した。だが花蓮は諦めず征司を説得する
「まあそうすぐに結論を出さないでくださいな。黒狐様、貴女様は初めてパーティーを組むのでしょう?ソロとパーティーではなにかと違いがあります、何かしら事情で絵梨さんを教育するのでしょうが見たところ初心者、いくら貴女様が強かろうが守りながらは限界があります。それに・・・」
「・・・」
花蓮の言葉に征司は沈黙のままだった
「何階層に行こうとされました?」
花蓮に問われ征司は上を見上げしばらく考えた後口を開く
「・・・20階層でやるつもりだ」
「おバカですか!?貴女様の実力ならそこらの雑魚程度余裕でしょうが、絵梨さんは初心者ですよ!確かにあそこ辺りなら様々な種類のモンスターがおりますが
花蓮の正論に征司は何も言い返せずにいた。絵梨は自分がかなり危険な状態だったことを知り花蓮に内心感謝した。
「とにかく!そういう危険があるのですから私がしっかりとフォローいたしますのでいかがでしょうか?」
花蓮は征司の目を真っ直ぐ見ながら問いかけるが征司は目をそらし答えようとしない、絵梨もこのままでは話が進まないと思い助け船を出すことにした。
「あ、あの!」
2人の目が一斉に絵梨を見る
「えっと・・・私なら大丈夫です!」
絵梨は力強く2人に言い放つ。それを聞いて花蓮は嬉しそうに笑みをこぼすが征司の方はため息をひとつこぼしてから口を開く
「・・・わかった好きにしてくれ」
「ではよろしくお願いいたします。」
しばし征司は考えながら諦めた様子で花蓮の提案に乗ることにした、それを聞き花蓮は笑みを浮かべ征司に言葉を贈る。
「それでは改めてよろしくお願いしますわ黒狐様、桜坂さん」
「はい!こちらこそよろしくお願いします」
「ああ」
こうして急遽3人になった征司たち一行はバベルへと入っていった。
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