第5話 初診-生い立ち-生まれたとき
次に先生はこう質問した。
「生い立ちについて教えてください。生まれたとき、なにか異常はなかったですか?」
俺は「ありました」と答えた。
俺が母の体から顔を出したとき、首にへその緒を巻きつけていたそうだ。しかも母親の血をガブガブ飲んでいたらしい。
生まれる前からそのことは分かっていたようだ。
母子ともに危うし。たぶん産んだらどっちも死ぬ。っていうか赤子はほぼ死ぬ。という状態だったらしい。
だからもうこの赤子は諦めようぜ、という雰囲気だったそうなのだが、母は「わたしが死んでもこの子は産む」的なことを言ったそうだ。
母は産んだ。分娩室は血の海だったらしい。
おなかから出てきたはいいものの、赤子は泣かなかった。
医者が赤子を吊し上げてケツをべしんべしん叩いていたとか。
よほどそのSMプレイが良かったのかどうかは知らんが、とうとう赤子が泣いた。
私の性癖が歪んでいるのはそのせいかもしれない。私のエロBL小説にはスパンキングが必ず一回は出てくるしな。きっとこの名残なのだろう。
ともあれ、奇跡的に母子ともに命を取り留めた。
しかし、生まれたての赤子の形相はひどく醜かったらしい。
のちに母はこう語った。
「それこそ、なにか障がいがありそうな顔をしていた。生まれたての赤ちゃんを見たお父さんが、『この子を連れて山にこもる』なんて言っていた」
父は世間体を気にする人なので、そんな赤子を世間の目に触れさせたくなかったのだろう。
そんな感じで、私の出産エピソードはなかなか刺激的なものである。
一番の驚きは、死にかけていた母親が出産直後に自力でトイレに歩いて行ったことらしい。母はつよし。
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