第9話 ページ17,18 梅スイーツの試作

せる事が多い。商品としての味見、次の日にも味は変わらないかをチェックする為もある。自分で作ったスイーツを自画自賛するのもどうかと思いながらも、満足感と満腹感で満たされた健三は考えた。美里と誠、森山の関係は?森山は何者で何のために商品を買うのか?手渡し希望なのも腑に落ちない。

 食べた食器を洗い、うららの制服に着替え手を消毒し、新商品の梅を使うスーツの試作に取り掛かった。新しい発想で、梅を甘くした物を使わずに梅干しからスイーツに発展させる試作だった。先ずは、カリカリの梅干しを細かく刻み、シャンテリークリームと混ぜて味見をした。

「まずい、これはダメだ」

 健三が一人で呟くほどのダメな味だった。

次に通常の梅干しを細かくちぎってクリームに乗せて味見をした瞬間、これも違う。次にクリームを使わず、スポンジに二種の梅を乗せて食べた。これもダメだった。健三は梅を使ったスイーツを作ろうと思った事を後悔した。先人たちも作ったはずなのに世に出ているのは、梅クッキー、梅ジャムなどで、生菓子に生の梅干しを使った商品が皆無なのも納得出来た。

先ほどの梅干しよりも原価は上がるが、梅肉ペーストでシャンテリークリームと混ぜてみた。

「あ、これは……梅干し自体より良いかも」

健三は混ぜ合わせの配分を多くしたり、少なくしてみたりして味見を繰り返した。結果はどれもぱっとしない味だった。悪く言えば田舎臭い味のクリームでスッキリした味わいにならない。混ぜる量を少量にすれば何の味か分からない。次に梅肉ペーストをスポンジに薄く塗って食べてみた。梅肉の味がスポンジの甘さに勝ちすぎてダメだ。半分ほど食べ残したスポンジをお皿に戻そうとした時に、シャンテリークリームを入れたボウルに落とした。たっぷりクリームと合わさったスポン

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