第8話 ページ15,16 水出しコーヒー好き
定休日の朝は起きるまで寝る、と健三は決めていた。この日の目覚めは午前九時半だった。毎朝6時に起き、スイーツの準備、開店の準備をするので週に一度の定休日は、睡眠を楽しむ。目覚めてからも布団でゴロゴロと転がるのも健三にとっては至福の時間だ。
「岡田さんと歌舞伎見に行ってくるよ」
ドアの外から則子の声が聞こえた。健三は至福の時間を壊された気がしたが、はいはいとだけ返した。則子は数年前から近所の岡田さんと歌舞伎に行くのを楽しみにしていた。歌舞伎座に行く時と新橋との違いを健三は尋ねた事があったが、歌舞伎の知らない用語が出て、うん蓄を語り出して以来、この手の話題は出さないようにしている。のっそりと布団から起き上がり、顔を洗い、歯を磨き、一階のうららの冷蔵庫に売れ残ったスイーツを取りに行った。住居と職場が同じなのは便利なときもある。二階の自分の部屋でゆっくりしているときに、忙しくなって呼ばれるときもあるのでメリットばかりではないが。健三はうららの冷蔵庫を開け、季節のフルーツタルトとパイシュークリームを持って二階に上がった。水出しアイスコーヒーをコップに注ぎ、先にパイシュークリームにかぶりついた。シュー生地をパイ生地で包み、焦げる寸前まで焼き上げ、シャンテリークリームとカスタードクリームを半々で混ぜたクリームを注入したうららの名物パイシュークリームだ。仕上げに粉糖をまぶしたパイシュークリームは健三の自信作だった。もちろん昨日の商品なのでサクサク感は少し失われているが、中のクリームとパイ&シュー生地が相まって美味しい。健三の拘りは、自分自身に美味しいと満足させられる味を追求する事。パイシュークリームの焼く前に生地にまぶした砂糖の焼き上がり後のカリカリが心地良い。水出しコーヒーを飲み、フルーツタルトも一気に食べきった。甘いものが好きな健三は、定休日の朝食兼昼食は、自分の作ったスイーツで済ま
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