第7話 ページ13.14 梅の新作スイーツ

の嬉しさが優しさに現れ、子供が出来た事にも喜びがあり、退社して今の仕事を完璧に近い形で受け継いでほしい。そんな時、妊娠初期のつわりが始まり、辛く当たる日も出て来た。さらに仕事を早く覚えてもらわないと自分が仕事を辞める事が出来ないプレッシャーもあったと考えた。健三の推理を田中さんに話すと半信半疑で妻に確認すると帰った。二日後に推理がピタリと当たっていたと報告に来てくれた。きつく言うのは悪いと思いながらも、早く仕事を覚えてもらいたい一心で仕事を教えていたそうだ。その奥さんが班長に、お世話になりましたと書いたプレートを付けてケーキをプレゼントしたいと本日来店してくれた。

 則子が言い出すと止まらなくなるので、健三はハイハイとあしらって片づけを始めた。明日の定休日は新商品の梅を使ったスイーツを開発予定だったが、明日は明日の風が吹くさ、と深く考えずに片づけを始めた。一時間半後には熱い風呂に入り、冷え性の手足を温めた。健三の冷え性は、真夏でも他人が手を触ると驚くほどの冷たさ。幼いころから極度の冷え性なので、今となっては何も思わない。また、ケーキを作る職人は、スポンジを切る、シャンテリークリームをナッペする、フルーツを並べる、クリームでコーティングし、飾りのクリームを絞る。全ての工程で健三の手の冷たさが役に立っている。スポンジもフルーツも冷えた状態が好ましい。シャンテリークリームに至っては、温かさは大敵。絞り袋にクリームを入れ、飾りを絞る時などは手の温かい人が絞ると熱が伝わってシュッと先の尖った綺麗な角が絞れないのだ。パティシエと寿司職人は手が冷たい人の適職だと健三は常々考えていた。身体中を温めた健三は風呂上りに昨年の梅で漬けていた梅ジュースを自分で入れ、一気に飲み干した。この時、梅を使ったスイーツのアイディアが下りて来た。健三は直ぐにメモに書き、床に就いた。

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