第3話 ページ5,6 男女の来店

は去年から考えていた、梅を使った新作を作る予定にしている。梅を使った和菓子や、ゼリーは世に多いが、健三は完全な洋菓子を作りたい。頭の中では構想が出来上がっているので、原材料の準備は出来た。明日の定休日に試作品を作り、六月初旬から店頭に並べる予定でいた。

 うららの営業時間は午前十時から午後八時まで。片づけを始める午後七時半ごろに若い男女が入店した。

「いらっしゃいませ、こんばんは」

 健三の知る限りでは初めてのお客だ。男女でなにやらひそひそと話をし、男性と言うのか、高校生ぐらいの男の子が洋菓子ケースを挟んだ正面の健三に話しかけた。

「あの、あの、長田さんの隣に住む野中です。はじめまして。長田のおばさんの犬を見つけてくれた方ですよね?あの、相談があるんですけど良いですか?」

 地域で困ったこと、解決困難な出来事があると、こうして噂を聞きつけ、うららに来店し、健三に相談する人がたまに居る。健三も今日の売り上げにならなくても、今後の売り上げに繋がれば、との思いで相談に乗ることもある。

「私に乗れる相談なのかは聞かないと何とも言えないですけど、お聞きしますよ」

 男の子が話し始めた。男の子の名前は野中誠、高校一年生。夏向きな短髪で白いTシャツからも筋肉のつき方が解る。デニムのズボンを履き、太ももは、はち切れそうにパンパンだった。一緒に来た女の子は彼女だと健三は思っていたのだが、妹の美里。中学校の制服を着て学校指定の白いソックスとスニーカーを履いている。学校帰りで兄と待ち合わせてそのまま来たのだと健三は考えた。話を聞くと中学三年の美里に、ストーカーのような被害かどうかも判別出来ない人間が居ると相談された。

「美里は高校受験で、都内の難関高校を受験

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