第三話 街

背中が重いなあ。

街は和洋折衷なので、地面は石畳とレンガである。規模は大きくも小さくもない。夜明け。人々は寝静まっているので、スタスタと自分の足音だけが響く。


暫くして、俺たちは小洒落たカフェを見つけ、導かれるままにそこに入る。


「開いてますかー?」


誰もいない。しかし、腹が減っているのでカウンター席に座る。こいつも座らせる。


「ご注文はどうしましょうか?」


声はカウンターの向こうからだった。

俺は小さな男の子が居ることに気づかなかった。

豊富なメニューからよりどり選ぶ、少年はこくりとうなずいた。


5分足らずで次々と食事が運ばれてくる。ステーキやら揚げ物やら漬物やらなんやら。その香ばしい香りでこいつも起きたようだ。


「おい!食べていいのか?」


「食べなくてもいいぞ」


こいつは凄まじいスピードで食べ進め、料理も残り半分に差し掛かった。俺は思い出したかのように聞いた。


「そういえば名前は?」


「私はティッシュ。本名はティシュティッシュシュティッティティッティーよ。あなたはなんて名前なの?」


「ナカザキだ。遠い昔に世界を破滅に追い込んだマシーンがあって、そいつの名前から取ったらしい。」


俺は深刻な面持ちで肉を切る。


「それは大胆ね。ところで、ナカザキごときがこんなご馳走を食べられる程のお金なんて持ってないと思うんだけど。」


「酷い言いようだが、お金は少しあるんだ。ただこの金もいつか尽きる。何とかせねばな。」


「それならついてきて!」


ティッシュが立ち上がる。

そして、爆速で会計を済ませると、

俺は此奴に街の中心にある掲示板に連れられた。

するとティッシュが、あるポスターを指差した。



【海のどこかに眠る幻の魚、見つけてリッチになろうぜ!!  from 海を愛する教】


と書いてある。


「今一番稼げるのはこれよ!」


「いや残念だが、俺の旅の目的はこんなゴミじゃない。」


ティッシュは絶望している。


ん?

俺はポスターを凝視した。


(この教団のマーク、指輪のと一緒じゃないか!)


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