溢れ話 いつかの再会
光差す事無く、暗黒に飲まれる事も無く。
覚醒する事無く、昏睡する事も無く
それが私の世界、宵闇の世界。
穏やかでいて、少しだけ
過去に思いを馳せて胸の痛みを少しだけ思い出す。
それが永く在り続ける秘訣。
闇の象徴として祭り上げられ幾星霜。
闇の
されど自由かと言えばそうでも無く。
不自由かと言えばそうとも言えぬ。
あら?珍しくお客様の様ね。
貴方は…ふふ、久しぶりね。
ここに辿り着いたのなら知見を深めた様ね。
ふふ…そうね。
あら、そうなの?また戻るの?
憑いた人間がまだまだ探求を続けるのね。
いいわ、好きなだけ共に歩んで来なさい。
ふふ、今度は知見を広げてみるのもいいわね。
ああ、そうだわ。
貴方に返さなきゃいけないわね。
はい…貴方の溶けてしまった記憶の一部、
もう引き合う記憶を辿る必要もないもの、元に戻すわね。
うん、“
貴方は既に一部の書として、それも魔導書として成り立っているから。
言うなれば此処へ辿り着く
望めば貴方自身を此処へと導くでしょうね。
貴方が憑いてる術師も…気づけたのなら導いてあげてもいいんじゃ無いのかしら。
え、そうなの?
ふふ、菌術で発酵食品ばかり作ってるのね。
それはそれで楽しそうじゃない。
それで…マイコニドと共生ですって?
よほど相性が良かったのねぇ…
ふむふむ…闇の世界がキノコ農園に?ふふふ。
え?…歴史に名を残したエルダーファンガスまで呼び起こしたの?大したものね。
まぁ…お酒好きが高じて菌術で?
おつまみも菌術で?
…かなり使い倒してるわね。
ふふ、そうね。
あら、もう戻るのね。
ふふ、楽しかったわ。
貴方の術師みたいな人が増えれば世界も少しは変わるかも知れないわね。
気長に待ってるわ。
…………
行ってしまったわね。
それにしても呪術の深みに達して深淵に囚われないなんて珍しい逸材だわ。
だからこそお互い引き合って憑いたのかも知れないわね。
近しき質は互いに引き合う…これもまた一つの真理ね。
その術師も真理を積み重ねて此処に来ないかしら。
私の存在まで辿り着いてお酒の一本でも供物にしてきたら…たっぷりと加護を与えちゃおうかしら。
そうね、それがいいわ。
その為にも
我、宵闇の名の下に命名す。
魔導書の魂を“観察者”とす。
魔導書が憑きたる者を“探究者”とす。
世の理を求める者に祝福を。
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