第77話 呪術師と御出迎え
特級厄物と邂逅して腰を抜かした。
熱に浮かされるままに欲望を口にしなかった自分を褒めてやりたい。
あんなモノを降ろすだけで贄となった黒面は使い尽くされていた筈だ。
そこに新たな願いを口にしていたら……どんな代償を取り立てられていただろうか。
考えるだけでもゾッとする。
自分自身も含めて周囲を念入りに御祓いする。
呪術の炎に炙られて身体のあちこちが黒く焦げ憑いている……コレって浄化しきれるかな?
特級の人外が
集まって来てた良くないモノ達を引き連れて去ってくれたが顕現された場所は淀みが祓えない。
しょうが無いので適当な石を積み、簡素ながら縄を編んで締めた。
苔むし朽ちる頃には元に戻ってくれてるだろう。
それまでは禁足地の目印として人知れず祀られていてくれ。
そう祈りながら拝み、印を切り、礼を尽くす。
そう言えば空気も浄化しとかないとな。
ここいらはトリュフ系キノコの胞子をタップリと撒いておいたのだ。
いざと言う時は菌術で活性化させてアーマードボアを呼び寄せる算段だったのだ。
戦う場所を選べたのだ、この程度の仕込みは誰だってするだろう。
まぁ初手で呪術を封じられて使う機会も無かったけどな。
封じてきた相手は伸びて……ない。
何時逃げた?降臨してた時か?
まあ良い、此処から中層まではかなり遠い……それまでキノコが育たなければいいけどな。
マッシュの手が入ってる特別製で魔力に反応して即席栽培が出来る品種なんだがな。
頑張って生きて伸びてくれ。
何処からか叫び声と共に空に舞う人影を見たような気がするけど多分気の所為、きっとメイビー。
そんな事よりも武器の回収が優先だ。
懸念していた片鎌槍も鎖鎌も何とか御祓い出来そうだ。
ベットリと気持ち悪い魔力の残滓が貼り付いてたけど時間を掛ければ何とかなりそう、きっとメイビー……余計な手間取らせやガッデム!
――――――――
さて御祓いも一通り終わったし希少植物の植生調査も一段落ついた。
帰って一杯
けどなぁ……街場には今回の深層に付いて来れなかった光の剣一派の残党が
しかも森で消耗してない元気なままで。
相手してやってもいいんだけど気分じゃないんだよな。
適当にあしらって旅に出るのも悪く無いかも知れない。
南の方には海があって海産物が豊富だとも聞く。
刺し身に焼き魚、カルパッチョにマリネ、パエリアにペスカトーレ……シーフードカレーってのも乙だな。
もし昆布の乾物なんかあったら大量に仕入れたい。
自作の干し椎茸との合わせ出汁は約束された勝利の味だ。
かつお節は……何なら自作に挑戦してもいい。
試行錯誤は必要だがカビを使った乾燥は得意分野と言ってもいい。
サーモンの燻製なんかは勿論自作に決まってる。
それより何よりシンプルに炙ったイカで日本酒をクイッと
そんな思いを南に馳せていたせいか気付くのが遅れた。
街の北門の辺りに剣呑な感情が渦巻いている。
数百メートル手前で立ち止まる。
以前と比べれば大分離れてても察知出来る様になったが、理想は視認される前に気付く事だ。
こちらが察知した事に気付いたのか光の剣一派の残党が北門周辺に散開する。
まだ数十人も残ってたのかよ。
残党の頭っぽいのが肩で風を切りながら進み出てくる。
「観念しろ呪術師!貴様の悪事もここまでだ!」
あぁ……自分の台詞に酔ってる感情が視えて痛々しい。
「森に探索に出られた光の剣の御二人と運良く入れ違った様だが年貢の納め時だ!化けの皮が剥がれて黒い
これ、お宅らのボスである呪術師に付けられた火傷痕なんですけど。
「
何とまぁ、騎兵までゾロゾロ現れて来ましたよっと。
……お馬さんには悪いけど、最悪犠牲になってもらうか。
このまま逃げても良いけど面白くないから一当て二当てくらいはさせて貰いたいね。
深追いしなきゃ
それにしても南への旅路は㌧だ逃避行になりそうだ。
何の因果なんだかねぇ。
そして騎士の号令の元に残党共が駆け出し、騎兵隊がそれを追い越した。
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