第67話 呪術師と路地裏の惨劇


 チンピラに絡まれた。


 前に2人、後ろから2人。

 前の一人が一歩進んで口上を垂れる。


 しかも俺を呪術師だと決めつけている。

 一体何処で嗅ぎつけてきたのやら。


「呪術師は狩りの対象だから諦めな」


 ニヤけ面が上から物を言ってくるが、どう言う理屈だ?

 しかも微妙に内股気味なのが不気味だ。


 と言うか何処かで見た様な気もするが……誰だ?

 あと少し臭い。


 腰の剣に手を伸ばしてるが街中で抜くつもりなのか?

 取り敢えず投槍器ウーメラを取り出し構えを取る。


「それじゃあ、ただの通り魔だろうが」


「うるせぇ!黙ってボコられろ!」


 話にならない。

 投槍器ウーメラを軽く振り煙玉を緩く投げる。


 避けたニヤけ面が馬鹿にした様に更に相好を崩す。

 が、背後にいた男の悲鳴に振り返る。


 相方が避けたとこから飛んできた煙玉に反応が遅れて避け切れなかったんだろう。

 そして粉末辛味茸に詰め替えられた煙玉をマトモに喰らえばどうなるかはご覧の通りだ。


 投槍器ウーメラを闇の世界に仕舞い、一気に距離を詰める。

 新たに取り出した投擲杖でニヤけ面の向こう脛を打ち付けながら走り抜ける。

 

 不用意に視線を切ってくれたお陰で余裕の一撃だ。

 そのまま煙玉にヤられた男も行き掛けの駄賃で頭を打ち抜き昏倒させる、これで包囲網は抜けた。


 投擲杖を構えて様子を見る。

 粉末辛味茸は広がり脛を打った男も咳き込みだす。


 何が起きたのか把握できないまま後ろに居た連中が駆けつけてくる。

 けど何の準備もしないでそこまで来るとですね……案の定、粉末辛味茸を吸い込んでエラい事になってる。


 ちなみに俺自身は闇を纏って防いでるので抜かりは無い。

 やれやれ、それではOHANASHIしましょうかね。



 取り敢えず反抗的な態度が出来なくなるまでデュクシった。

 衛兵に突き出す事も考えたのだが俺の潔白を示す物が何一つ無いのだ。


 最悪、俺の方が通り魔として御用になりかねない。

 ならばしょうがない、と言う事でコイツらの流儀に合わせてみた。


 曲がってるなりに根性はあったけど脳に軽〜く痛みペインを掛けてやるとアッサリ落ちた。

 人間、耐えられない種類の痛みってあるんですよ。


 結局、俺が呪術師だって言うのも襲う為の言い掛かりだったみたいだ。

 けど得体の知れない術を使うと言うのはバレてしまったみたいだ……その化け物を見る様な目つきは止めてもらってもいいかね?


 って言うかコイツは冒険者ギルドで絡んで来た奴じゃん。

 なんて因縁でしょう、念入りに祓っておかねば。


 ついでに残りの三人の足先に在住していた菌達にも移住を提案しておいた。

 新天地での御活躍を期待しております。



 ――――――――



 ゴミ共は裏通りに捨ておいた。

 下手に金をむしり取ったりしても大した金額も持ってないだろうし、何より変な縁が出来ても困る。


 それよりもデュクシった時に思ったんだが投擲杖が思いの外使いやすかった。

 まぁ、そもそもジャベリンに合わせた長さと重量バランスなんだから手に馴染むのは当然なんだが杖ならではの使い勝手の良さがある。

 

 ジャベリンと同じ長さ1.5メートルの杖は刃を持たない為に殺傷力こそ低いが持ち手の位置を選ばず変幻自在な動きを可能にする。

 バランスにクセがあるが逆にそれを利用した鈍器としても優秀だ。


 突いて良し、打って良し、投げて良し、と隙が無い。 

 おやっさんが気に入ってたのも頷ける。


 個別面談OHANASHIの時に持ち替えた兜割りも優秀な鈍器だった。

 刃引きした脇差しと言った得物だが刀身が分厚く重い。


 叩きつければ骨ぐらい容易に砕けるだろうし、先端は尖っているので突き刺す事も出来る。

 つまり十分実戦に耐える武器だ。


 買う時に大振りの十手とどっちにしようか迷ったけど、こっちを選んで正解だったかな?

 でも十手も十手で面白そうではあるんだよなぁ。


 鈍器ってのは刃物とは違った趣がある。

 何より多少雑に扱っても丈夫な点が素人には有り難い。


 だけどヌンチャクの類いは使い熟せる自信が無い。

 ただ強力なのは確かだ、思い切り振り抜いても手に反動が来ないからな。


 そう言った意味では長柄のフレイルとかもアリなんだよな……

 一方で鈍器ならばメイスの携行性の良さも捨て難くてコレ一本って形に中々収まらない。


 

 本当にスミスの武器は沼だ。



 

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