第66話 チンピラの娯楽
どうにもココんとこツイてねぇ。
ケチが付いたのは間違いなく毛皮野郎を見失ってからだ。
思い出す度ムシャクシャするし、最近は股も痒い。
そして
しかも謹慎ついでに毛皮野郎探しの依頼を取り下げやがった。
ギルドは何を考えてるんだ?
もっと腑に落ちないのは、取り下げた依頼を他のパーティが代わりに引き受けたなんて話を聞かねぇ事だ。
まるで何処かでハナシが付いてるみたいだ。
だが、そんなの関係ねぇ。
オトシマエだけは付けねぇとメンツが立たねぇ。
しかし肝心の毛皮野郎の姿を見かけた奴は誰も居ない……まるで煙みてぇに消えちまった。
それにしても痒い。
ギースが言うにはギルドに登録もしてないフーテン野郎だって話だ。
ダブスキンにも「ビビって山に帰ったんだろうよ」と抜かされた。
それからはツマラネェ日々が続いた。
だが、もっと面白くねぇ事まで起きやがった。
魔の森が荒れてるって話だ。
もしも深層の魔物が中層まで出張って来るとしたらシャレになんねぇ。
深層の魔物は中層と比べて二周りは強い。
俺達D
そんな地力を持つタフなC級冒険者達の壁となるのが
そして
魔の森深層には“
オークやハイオークなんてメじゃねぇくらいヤベェ魔物だ。
オマケに“
浅層なら大丈夫だろうが、そんなトコでチマチマやってたって大した金にはならねぇ。
踏んだり蹴ったり痒かったりだ。
どうやら魔の森が荒れてるのは変異種のオーガが暴れてるかららしい。
何でもオーガの上位種よりも強い個体だとか言われてる。
B級では変異種の黒い
ドタマのネジがブッ飛んだ戦闘狂どもの娯楽は意味が分かんねぇ。
森の調査とやらで
あいつらは
痒い思い、もとい肩身の狭い思いをしてたら調査とやらが進んで原因が分かったみたいだ。
呪術師による陰謀で衛兵も動いてるらしい。
どこから聞きつけて来たのか余所者も流れて来ている。
“黒鬼殺し”か“呪術師狩り”が狙いだろう。
こいつはいい事を聞いた。
魔術師なんて近づければ殴り放題だ。
最近は痒いし、溜まってたんだ。
殴れりゃ誰でもいい、適当なヒョロ助に因縁を付けるいいネタが出来たってもんだ。
下の連中も嗅ぎつけて、吹っ掛ける遊びが流行ってる。
適当なシャバ僧に「呪術師だってのを黙っててやるから金を出せ。出さなきゃお前を呪術師としてしょっ引く」つって小遣い稼ぎしてるらしい。
コイツは面白い。
趣味と実益を兼ねたいい娯楽だ。
中には話をつけずにサイフだけ抜いてく器用な奴も居るらしい。
そりゃあ只のスリじゃねぇか!ってダブスキンの野郎と大笑いしちまったよ。
森が落ち着くまでの遊びにしちゃ上等だ。
街中でも獲物を物色する楽しみが出来た。
中にはヘタを打つ奴も居る。
サイフだけ抜いたのを見つかりスリとして捕まっちまう間抜けだ。
そんな奴がいるのかよ、と思ってた矢先に目の前で捕り物劇に出くわした。
だが気に食わねぇ。
よりによって石っころを紐で括り付けた捕具を使ってやがった。
あんな物を使うのは山育ちの田舎者くらい、つまりは毛皮野郎の同類だ。
……いや、アイツはきっと“呪術師”に違いない。
だから折を見て俺達で狩ってやらないとな。
何処かで見た気もするが顔は覚えた。
今は衛兵がいるからマズい、次に見掛けたら狩ってやろう。
それから数日後、パーティで浅層帰りに奴を見かけた。
まんまと裏通りに入って行ったのは渡りに船だ。
二手に分かれて囲む事にする。
そいつは挟まれたのに気づいたのか立ち止まって何か言ってやがる。
だが関係ねぇ、こっちは痒いけど頭数は揃ってるんだ。
ロングソードの柄を手遊びしながら台本通りに言い放つ。
「よう、お前は呪術師なんだろ?」
それにしても痒い。
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