第62話 呪術師と仕上げ
伯爵様の治療が終わった。
最後の方は意識もあって何とは無しに話もした。
治ったら何処其処地方のワインを飲みたいんだってよ。
すげぇ分かるわ。
病状が酷い時にはそれどころじゃないけれど、回復に向かってると
しっかし疲れた。
最後に念入りに御祓いをして寝室から出ていく。
伯爵様は文字通り胸の
出来る限り丁寧に祓ったからな、後は仕上げを
お抱え魔術師に施術の完了を伝えて、更に一つ二つ注意事項を引き継ぐ。
少々心配そうに本当に大丈夫かと念を押された。
途中の休憩中にも言われてたのだが、どうやら色んなモノを引き寄せていたらしい。
俺に取っちゃ当たり前過ぎて意識もして無かったが座り込んで呪術に集中していると様々な人外のモノを呼び込む。
良いモノにも良くないモノにも等しく魔力を分け与える。
良いモノには祝福を請い、良くないモノには祟ってくれるなと祈る。
最後には縁を祓い痕跡を消すのだが過程ではそういったやり取りは無数に行われる。
良いモノは幸運を一欠片置いていってくれたり、良くないモノは厄の一部を連れ去ってくれたりする。
こっちは施術に集中しているので、その手のやり取りは殆ど無意識に行っている。
マッシュや常連組の気の良い連中は集まって来た連中の相手をしてくれてたりもする。
そんな連中には感謝と魔力を捧げる行為も施術の中に落とし込んである。
俺なりの儀式魔法って感じかな。
最後の方は、そんな人外のギャラリーが結構な数集まってたらしい。
奴らにとっちゃ見世物の千秋楽みたいなモンだからなぁ。
治療も発酵食品の仕込みも大して変わらない。
単純に物珍しく集まって騒ぎたいお祭り好きなだけなのだ。
もしかしたら、そんなカオスっぷりが呪術への理解を遠ざけてるのか?
確かに
問題無い旨は既に説明してあるし、伯爵様の容態を確認してもらえば分かる事だから後は任せた。
俺も
――――――――
数日後、
俺への伝言にやって来たのだが、その視線は糠漬け卵に釘付けだ。
結構な美人さんではあるんだが、こう言うところが何とも言えない。
俺の中じゃジョバンニの愛犬ダグと、さして変わらないポジションに落ち着いている。
寝床に貸したハンモックから、ほんのり良い香りがして複雑な思いをしたのは遠い昔の思い出だ。
ど、ドキドキなんてしなかったんだからねっ!
小皿に取り分けてやって伝言を聞き出す。
なんでも
部屋に引き籠もって外出も禄にしない客で前払いの金が尽きたところで宿屋の人間が部屋を
その身体中に入れ墨とも
それは紛れも無く呪詛返しの跡だ。
伯爵様に憑いてた呪詛は念入りに、懇切丁寧に核の部分を残して手間ひま掛けて送り返させて頂いた特等品だ。
下手にあの場で浄化しようものなら術式が弾けて収拾がつかない手の込んだ厄物にまで育っちまってたんだからしょうがない。
あんな事に呪術なんか使うからそんな事になるんですよ。
状況から見て間違いなく実行犯だろう。
呪詛返しを喰らった見本として記録を取っといて貰えば、黒鬼の魔石を浄化しても同じ様な症状の犯人を炙り出せる事だろう。
伯爵様に憑いてしまった呪詛は変質してしまった為に祓うのに難儀したが、アレは例外だ。
呪物だった壺や黒鬼に埋め込まれてた魔石に施されてた術式は簡単な浄化魔法で呪詛返しが出来てしまう程度のモノだ。
これにて一件落着。
もう面倒臭い事で呼び出される事も無いだろう。
俺は心の中の
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