第48話 呪術師と術後の経過
長時間に渡る手術は殆ど手探りで愚直で細かい作業と確認の連続だった。
気付けば朝とか普通にオーバーワークだ。
ま、お陰でいい経験にはなった。
そういう事態にならないのが一番だが、意識と魔力さえあれば自分が大怪我しても自己治療出来る自信がついた。
……本当に、そんな事態にならない様にしよう。
人間、精神的にも肉体的にも健康が一番だ。
久々に地べたで寝たので身体が痛い。
魔力による身体活性化で回復するんだけど気分の問題が大きい。
快適な睡眠と心地の良い目覚めってのは豊かな人生に必要だと思うんですよね。
こういう時の為にコットみたいなのを持っておいた方がいいかも知れない、ベンチ代わりにもなるからな。
さて魔物の気配もしないし、そろそろ患者を起こすかね。
そろそろ夕方だけど色んな意味で一度起こした方が良い。
纏わせてた
顔色は随分と良くなった、白蝋の様な瀕死状態から普通の重病人くらいの顔色の悪さだ。
ピクピクと動く目蓋が開くと焦点の合ってない視線が虚空を彷徨う。
泳いだ視線が俺を捉えると数瞬の後に覚醒して反射的に起き上がろうとする。
けどな、普通のベッドから降りる様な動作をハンモックの上でするとだな……ホラ、落ちた。
慣れればコツと言う程でもないモノが掴めるんだがな。
幸い低く張ってあったから大したダメージでもあるまい。
涙目で後頭部を押さえてる姿は何処となく憐れみを誘う。
「大丈夫か?急に起きない方がいいぞ?」
極めて親切かつ合理的なアドバイスをしてやる。
「なっ!お前は何者だ!」
急に立ち上がると立ち眩みでへたり込む。
血が足りてないんだから当然だ……しかし一々挙動がポンコツ臭い。
「貧血だな。起き上がるなら低い姿勢で慣らしてから、ゆっくり起きないと身体が追いつかないぞ?血を作んないとだが……薬は使い過ぎてるから飯を食え」
一応、消化の良い粥っぽい鍋は作ってある。
俺も食べるから滋味溢れるスペシャル鍋だ。
焼いて干した川魚で出汁を取りキノコと各種干し肉を細く刻んで入れてある。
そこに麦米の実をぶち込んで野草と
卵が無いのが残念だが十二分に美味い。
正直、金を取れるレベルだと自負している。
死にかけて身体が栄養を求めているのだろう。
匂いに釣られてズリズリと這い寄って来る。
一杯よそってやると俺を窺いながら、おずおずと匙を運ぶ。
一口食べるとカッ!と目が光り匙の動きが加速する……ゆっくり食えよ。
三杯も食えば落ち着いたのだろう。
正気に戻ったのかキョロキョロと見回し俺に何か聞いてきそうだが先に口を開く。
「水場はあっちだ、血糊やら何やら色々と落としたいだろう。今ならまだ夜行性の連中が動き出してないから早目に行く事をお勧めするぞ?」
治療した傷口周辺は洗浄したが、それ以外は拾った時のまんまだ。
飯を食えば色々と身体が目覚めて動き出す、自分で出来る事はやらせた方が良い。
それでも体力は戻ってないだろう。
フラフラしながら帰ってきたから寝てろと指示した。
またジベタリアンか……これは本気でコットの購入を検討せねば。
スミスの店にあったかな?
翌朝、起きてきた患者は気持ちの良いくらい血色が良くなってた。
話を聞くと、どこぞの貴族に
やんごとない御方が面倒臭い病気になって特殊な薬が必要になったらしくて、その薬に必要な希少植物を採りに来たらしい。
冒険者ギルドか
忖度で損害出してりゃ世話ないよな。
餅は餅屋に任せりゃいいのに貴重な騎士が3人も殉職してますよっと。
確かに普通に戦闘力は高いんだろうし有事を想定したサバイバル能力も鍛えてはあるっぽい。
だけど無駄に元気だったもんだから
それでも安全マージンは取ってたらしいんだけど色付きオーガと
不意打ちをくらって隊列が乱れた所を色付きオーガに蹴散らされて終わったと思ったら乱入者が色付きオーガまで全滅させた辺りで意識を失ったらしい。
どうやら謎の
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