第34話 呪術師とキノコ天国


 キノコと妖精フェアリーのダンスパーティーを観賞した。


 多分コレ以上のサプライズ的な出来事とか起きそうに無いので街に戻る事にした。

 塩花を数株採取して、塩湖の水を遣水やりみずとして確保しておく。

 

 直接掛けても大丈夫だろうか……湖畔に群生してるんだから湖水で育ってるのは明らかだし大丈夫か。

 念の為、葉とかに掛けないで土の方に注ぐ様にしよう。


 マイコニドが顔を出す頻度が激増した。

 呪眼で視える感情も豊かなものになってきている。


 そういや“マイコニド”だと色んな種類……種族?が居たんだよな、個体名を付けてやった方がいいかな?

 俺はテイマーじゃないから「名付け」に特殊な力は宿らないだろうけどな。

 

 ……よし、今日からお前は“マッシュ”だ。

 俺にネーミングセンスを期待しちゃダメなのだ。


 マッシュは俺の肩の上に乗ってる時が多い、次点で頭の上かな。

 とても軽く、気付いたら何時の間にか居る感じだ。


 道々、マッシュなりに有望な倒木を見つけると俺の頬をと叩く。

 指示された倒木を闇の世界に仕舞うと嬉しそうにクルクル回る。


 マッシュの本体は俺の腸内フローラに棲息していて、分体は闇の世界に棲息しているらしい。

 本体と分体の違いは正直分からない、どちらも本体であり分体なんじゃないかな?


 俺の健康管理の代償と考えれば、倒木収集なんざ大した負担でも無い。

 元より指示される倒木は大きくも無いし、それに闇の世界の容量が増えてきてるのだ。


 実は増えてるのは闇の世界の容量だけじゃない。

 呪術書が厚くなってきてるのだ。


 前々から新しい呪術とか改編する度に心なしかページ数が増えてる様な気はしていた。

 それがイーエフ爺と会った時から、明らかに分厚くなったのだ。


 まだ深く読み込めていないんだが、増えたページは殆どキノコ辞典だ。

 食用のところから読み始めてるんだが、そんなワケで今の俺はちょっとしたキノコ博士だ。


 そんなキノコ博士である俺が野営クッキングの準備をしている時に、マッシュがキノコを持ってきた。

 椎茸、平茸、エリンギ、ぶなしめじ、と何とも使い勝手の良いラインナップだ。


 どうやら拾った倒木を原木として闇の世界で栽培してくれたらしい。

 フェアリーサークルでの邂逅で他のキノコ達と胞子を交換したらしく、リクエストがあれば大抵のキノコは育てられるらしい。


 有り難い!

 舞茸と松茸とポルチーニとトリュフを是非ともオナシャス!


 え?時間は掛かるけど、闇の世界に多目に魔力流してくれたらそのうち出来るって?

 そんなんでいいんスか?タップリ流しちゃいますよ!


 闇の世界でマッシュ専用のスペースを明確に、そして広めに確保しよう。

 是則これすなわちマッシュの部屋マッシュ・ルーム”也。


 いやぁ、ミックスキノコがあるだけで味の広がりと言うか深みが全然違ってくるんよね。

 煮て良し、焼いて良し、俺に良し、の三方良しの上に魔力多目でマッシュにも良し、と隙のない構成だ。


 嬉しいから今夜は鍋にしよう。

 下拵えも手間もかからず肉と野菜とキノコのハーモニーが楽しめる、何と言ってもキノコの出汁は最強クラスの仕事をするからな。


 

 久々のホロホロ鳥の水炊きは、キノコと言う素人には禁断の素材が加わり大変美味しゅう御座いました。

 舞茸の為に天ぷらの研究、松茸の為に七輪の確保、ポルチーニの為にパスタとオリーブオイルの確保、トリュフはやっぱりソースだよな……代表的なのが確か赤ワインと酒精強化フォーティファイドワインを使ってた筈で、これも探さないとな。


 トリュフソースは醤油ベースのも作りたい……醤油作りが急務だな。

 本当に宿題ばっかり増えてくよ。


 まぁ、そんなに気張ってアレコレ手を出さなくても常食なら、エリンギ焼いただけでも充分に美味いんだけどな。

 こういうのがいいんだよ、こういうのが。



 しかし希少な植物プラントハンターとして名を上げるよりも、ちょっとレアなキノコ行商人としてやってく方が安定してしまいそうだなぁ……



 

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