呪術師狩猟中
第28話 呪術師と新狩猟人生活
本格的に森での狩猟を始める。
実際に森で弓矢を使って分かった事がある。
60で当てられれば上等だと言われた意味が良く分かった。
実際には60も離れて射れるチャンスなど、そうは無いのだ。
射線が通らない場合が多く、30以内が実戦的な距離だ。
但し、その30以内も止まってる的では無い。
動く獲物を射抜くには止まった的を60で外さない程度の腕が土台となってくる。
それに半矢、つまり一矢で動きを止められずに逃がしてしまう事を考えても獲物との距離は近ければ近い程良い。
オーケー、近づくのは随分得意になったんだ。
纏う闇、霞と朧のスペシャルブレンドで気配を森に溶かして移動し射線を確保する。
意気揚々と獲物を確認すると思いもよらぬ事態が発生していた。
頭蓋骨を貫いた矢が使い物にならなくなっていたのだ。
矢に魔力を通して強化していたにも関わらず、だ。
パッと見、大丈夫そうに見えなくも無いのだが番えてみるとハッキリと分かる。
バランスが崩れてる、それくらい矢ってのはデリケートなんだろう。
そう思ってた時期が俺にもありました。
後から聞いたら俺が使ってた矢は練習用で、ヘッドショットとかするなら相応の丈夫な矢があると知って凹んだ。
強くない矢で狩るなら多少の肉の劣化が伴うとしても胸を狙うものらしい、それでも充分に納品出来るクオリティなんだそうな。
もっと言えば鹿なんかは脳も珍しい部位ではあるが一応可食部位だから美麗品として丁寧に仕留めるなら脊椎を狙うものだと言われて更に凹んだ。
結局、新しい丈夫な矢を買ったんだけど折角だから闇の世界に馴染むまでジャベリンで狩ってみる事にした。
そして何処まで近づけるか試してみると、なんと普通に槍の間合いまで近づけてしまった。
それなら枝刃のある片鎌槍で仕留めた方が確実なのよ……俺の新兵器って一体。
もう完全に対魔物用の蹂躙兵器なんよね。
練習用の矢でもオーク程度なら柔らかい喉元スナイプで呆気なくキルが取れてしまう。
ゴブリンなんかは矢を使うのが勿体無いので
しかも鉄礫を無くさず回収しやすい様に、かなり近づいてからだ。
何かが間違ってる様な気がするけど今更もう気にしない事にした。
魔物は食用にならないので雑に狩っても問題ない、魔石だけ剥ぎ取れればそれでよいのだ。
それに慣れてしまっても腕が
勿論、狙うだけで常に次の一撃に備える。
“突くよりも引く事を重視して構えに戻る事が基本であり奥義である”
槍の指南書でもそう説いてある。
そうやって森に気配を溶かしながら当たるを幸いに魔物を狩っていたら肌の色が違うオークだとか弓を使うオークやらが現れるようになった。
多少、肌が丈夫になった程度でちゃんと突けばキチンと刺さるので大した差はない。
そもそも魔物は攻撃に感情を乗せ過ぎなのだ。
特に弓は自ら学んだから尚更分かる、当てようと言う思いが先走ると矢がブレるのだ。
それに思いは先走らせるモノでは無く、込めるモノなのだ。
込めた重い想いを編み上げ魔力とし、魔力を編み上げ魔術とする。
呪術の基本だ。
呪術師相手に編み上げもしない単純な欲望をそのままぶつける様な攻撃なんぞ通用しない。
呪眼に映る射線や斬線から身の置き場を外して、正しく立つ。
弓も槍も武の基本は通ずるモノがある。
正しく立てれば正しく突ける、正しく突ければ正しく引けるのだ。
気付けばそこそこ深い所まで来ていた様だ。
引くのは大事だ、帰ろう。
道々、野草や薬草も採取しながら帰路に着く。
希少植物の採取は
彼等程の仕事は出来ないだろうが何事も経験だ、使えない植物が混ざっていても次に生かせればそれでよいのだ。
魔石にハイオークやオークアーチャーの物が混ざっていて、それらは魔の森中層に生息しているので何処まで潜ったのかと呆れられた。
肌が灰色だったからハイオークなのだろうか、と益体もない事を考えていたら植物も希少植物の亜種が混ざっていたとの事。
結構珍しい品種らしく、うろ覚えで採って来ただけなのだが計らずも臨時収入となった様だ。
「これでお前さんも
おやっさんに揶揄われた。
何でも流れの
今度、塩花とか納品してみるかな?
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