第25話 チンピラの悲哀
「どうして5日も6日も音沙汰がねぇんだよ……ギース!おめぇンとこの舎弟は気ぃ抜けてるんじやねぇか?あぁん!」
テーブルの1つも蹴り上げたいが辛うじて抑える。
が、どうしても声は荒くなる。
「……頭数を揃えて探させている。むしろカナキン、お前の舎弟達はどこで遊んでいる?」
結果も出せねぇくせに、よくも涼しい顔で聞き返せるもんだ。
「節穴連中の見張りをすり抜けて街の外に出てるかも知れねぇからよぉ!森を探させてンだよ!」
嘘だ。
俺の舎弟共は誰に似たのか、どうにもガラがよくない。
安酒場を探させたら、それ以外の場所だとまずトラブって帰って来る。
リーダーからは毛皮野郎を炙り出すまで大人しくしてろとお達しだが、言われていつまでも大人しく出来る連中じゃあない。
だからガス抜いてこいと森で遊ばせてるだけだ。
「街門は手分けして1日中張り付かせている。もとより本当にそんな奇抜な格好をしてたのか?」
「はっ!
「……他にも特徴は無いのか?」
「顔は目が隠れる程のザンバラ髪で見分けがつかねぇ!木の棒や石っころを武器にする田舎者だって何回言やぁ気が済むんだよ!」
「そんな格好なら北部でさえ耳目を集めるものなのだがな……大体そんな山里で暮らしてそうな男がギルドに何しに来てたんだ?」
「知るかよ!石の銭を両替にでも来たんじゃねぇのかよ!」
「……ギルドで情報を集めてくる」
クドクドと同じ質問を繰り返しやがって。
陰気臭ぇ顔をぶら下げてないで最初っからキビキビ探し回れってんだ。
大体あんなドブネズミ野郎は下水にでも逃げ込んでるに違いない。
「よぉ、カナキン。おめぇの舎弟ってアレか?ちょび髭のキドリー達か?」
俺達のやり取りを聞いてたダブスキンだ。
「おぉ、アイツらは使えるからな」
キドリーはイカれちゃいるがパーメンを集める才能があり、そこを見込んでる。
「そういや珍しく魔術師もいたな。どこから引っ張って来たんだ?」
「キドリーのいとこらしくてな、魔術学校の落ちこぼれを拾ってやったらしい」
「確か……
「いや、単純にキレやすいんだ。ヤツの火魔術はいいトコ火傷止まりさ」
「そんなんで使えるのか?」
「生きたまま火あぶりで殺し切らないってのが使えるんだよ!毛皮野郎もこんがりローストにしてやんよ!」
牛の焼き印と同じだ、誰が飼い主か教育してやんねぇとな。
「なるほど!そいつはいい!」
そうだろう、我ながら完璧な計画だ。
楽しい話題で盛り上がってると慌ただしく扉が開きギースの舎弟が転がり込んできた。
「カナキンさん!大変です!キドリーのパーティーが全員死んでます!」
…………は?
――――――――
ギルドに着くと訓練場の一角にキドリー達の死体が転がっていた。
「森の外れで狼に喰われてたところを発見されてな、人を集めて回収してきたんだよ」
ギルマスの説明に納得がいかない。
「森の外れだぁ?キドリー達はE級でも魔術師を取り込んでDも間近な連中だ!浅層でヤられるタマじゃねぇぞ!」
ギルマスが難しそうな顔をしてると応接室?とやらの扉が開く。
出てきた奴は……チッ!
街を儲けさせてやってるのは俺達冒険者だ。
それに引き換えクソ
そのクセ大きな顔して幅を利かせてやがるムカつく奴等だが、このクソ爺ぃは極めつきだ。
クソ爺ぃが従えたクソ
熊の毛皮だ、一目見て分かる。
それにしてもボロボロで、とてもじゃないが納品出来るシロモノではない。
無駄に刻まれた傷もそうだが焦げ跡も目立つ、あれだと肉にもダメージがいってて値がつかないだろうよ。
「森の外れで死んでたのをウチのが見つけてきた。狩るでも無く
クソ爺ぃがガンを飛ばしながら抜かす。
「森で手負いの獣を放つ……この意味が分からん馬鹿は首に縄でも付けておけ。相手が野生でも魔物でも同じだ、森には森のルールがある。生存競争の場であって遊び場じゃないんだ。いいか?森を荒らすな」
何を偉そうに、御高説は自分の庭でやれってんだ。
わざわざ冒険者のシマまで来てヒマな野郎だ。
「毛皮と死体、双方を検分した結果、キドリー達が熊をなぶって返り討ちにあった事が判明した」
ギルマスが補足する。
「てこたぁ、そいつがキドリーをヤッた熊公の皮って事か?チキショウ!ギタギタにしてやる!」
クソ
痛ぇ……たかが木の杖なのに妙に打撃が通りやがる。
「まだ鞣しが終わっとらんしコイツは戒めの為に掲示される事になっとるんだ。それ以前に人様のモノに手を出そうとはどう言う了見だ?教育が足らんの、ギルドマスターよ」
人様の命を奪った獣の皮なんざぁどうなったっていいだろうがよ!
「何してくれてんだ!獣の牙!テメェらは謹慎だ!指示があるまで大人しくしてねぇと降格どころか資格剥奪するからな!」
ギルマスが吠える。
……チクショウ、チクショウ。
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