第21話 呪術師と片鎌槍


 結局よろず屋スミスでは片鎌槍とレザージャケットザージャケとチャップス、そして細々としたアイテムを揃えて予算を使い切った。

 本当はブーツも欲しかったんたけどな。

 鉄板入りのゴッツいデザインで履き心地も良さげだったんだよなぁ。


 武器もマニアックなのが揃ってて見始めたら時間が溶けるわ。

 後日改めて金と時間を作って再訪しよう、見始めたら絶対に欲しくなる自信がある。


 懐も大分寂しくなってきたので早速街を出て森へ向かう。

 街門の近くでは剣呑な感情が渦巻いてたけど何だったんだろう。

 これだから街は落ち着かない、物騒な魔の森の方がシンプルで過ごしやすいまである。

 ……いや、狩人ハンターギルドやスミスの店は過ごしやすかったから一概にそうとは言えないか。


 街では保存食とは別に乾燥させた麦米の実(仮称)が売っていた。

 何も乾燥させたから必ずしも粉末状に砕く必要があるわけでも無く、水で戻したり蒸したりすれば良かったのだ。

 保存に優秀なので多めに補充しておいた、今後は群生地を見つけたら大量に確保してもいいかも知れない。


 後はハーブを少々、ぶっちゃけ塩花が優秀過ぎて他の調味料への興味が薄れるのだ。

 でも食わず嫌いは勿体無いので落ち着いたら色々試してみよう。

 

 そうそう、やっぱり塩花は高級品だった。

 換金も考えたけど特殊な植物らしく生息地も限られてるらしい。

 俺が見つけた群生地も魔の森を抜けるだけで1週間かかるから、売らないで自家消費してしまおう。

 手持ちを使い切る前に、計画立てて採取して来なくては。




 二晩掛けて鹿を3頭、猪を2頭仕留めた。

 5頭も狩ると闇の世界も手狭になってくるので一度街へ行こう。

 美麗品とやらの納品なので寝込みを襲わせてもらった。

 昼でも普通に狩れる様になりたいものだ。


 ホロホロ鳥は木登りする必要があるから今回は見合わせた、鈎手甲とか購入したら嬉々として木登りして狩ってしまいそうな自分がいる。

 肉としては鹿や猪よりも上物なのだが、取れる肉の量が違ってくる。

 今後は狩っても自家消費かな?


 森では何をするにしても自分でやらなくてはいけない。

 街では感情のウネリが気持ち悪いが、金さえ払えば飯の準備や寝床の準備などは手間が省ける。

 それに自分の発想では思いつかない料理とも出会えるから一長一短なんだろうな。


 森での単独作業は色んなことを考えたり見つめ直すのに丁度よい。

 そう言えば記憶にある前世ではチンピラに絡まれようものなら泡を食ってた筈だ。

 弱肉強食、尚且つ他の生物へ仇なす魔物が闊歩する森の生活で随分と鍛えられた様だ。

 現に死にかけたものなぁ。


 そうそう、武器も新調したのでゴブリン、ホブゴブリン、そしてオークとも戦った。

 武器の品質が違うと、こうも変わるのかと思い知らされた。

 まだ闇が馴染んでないので魔力を芯に通す強化もまだまだなのに危なげなく勝てた。

 枝刃が本当いい仕事するんだよな。


 このまま修練を積んで腕を上げたいものだ。

 俺は我流の闇術闘法だが、近接職になるとスキルを使って戦うらしい。

 強打とか飛ぶ斬撃とか、何かそう言うのを魔力を消費して使うらしい。

 

 スキルを使いこなす方が、刃筋を立てるとか手の内を締めるだとか素の技術を磨くよりも手っ取り早いんだとか。

 スキルを使う順番や組み合わせ等の組み立てこそが戦いの妙であると捉えられてる節がある。

 

 そしてスキルは剣のスキルが広く知れ渡られており、“近接職の武器=剣”と言う認識が一般的なんだとさ。

 勿論、達人とか呼ばれる程の人種はスキルも素の技術も高いレベルで修得してるらしい。




 街へ戻る道中で遭遇したオークも問題なく狩れた。

 魔物は心臓の近くに魔石があるらしく、それの売却が冒険者の稼ぎになるらしい。

 冒険者ギルドで知る前はスルーしてたから勿体無い事をしていたんだな。

 

 さて剥ぎ取るかと思った矢先に何かが突っ込んできた、放つ感情は怒りと痛み。

 槍を構えて様子を伺うと、黒く大きな毛玉が立ち上がった。


 熊だ。


 威嚇する身の丈はオークより一回り小さいとは言え野生動物……しかも厄介な事に手負いの様だ。

 対峙するも嫌な予感が止まらない、こいつはやくいぜ。



 

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