第16話 呪術師とウィンドウショッピング
狙い通り盾を投げ捨てると、さっさと冒険者ギルドから退散だ。
声を掛けられる前に霞を纏って気配を薄める。
しかしまぁ、揃いも揃って野卑で軽薄な感情が気持ち悪かった。
念入りに厄祓いしとこう……いや、その前にボーラにも厄祓いだ。
それとも不浄過ぎて処分した方が良いだろうか……試作品とは言え思い出の自作武器第一号だし現状手持ちの数少ない武器なんだよなぁ。
くそっ!チンピラめ。
何にしろ武器屋は見ておきたい、それなのに受付嬢から聞き出せなかったんだよなぁ。
ま、北部にはそのテの店が集まってるらしいから適当に散策してみるか。
出来れば冒険者ギルドから離れてる店でゆっくりと吟味したいところだ。
何本か通りを抜けて適当にブラブラと目に付く店や屋台を冷やかす。
おっと異世界名物串焼き肉の屋台は是非とも味見しなければ……ふむ、普通だ。
至って普通、普通に美味い。
ただ期待値を超えることは無い、そりゃあ激ウマだったら即完売だろうしリーズナブルなお値段で提供されてもいないだろう。
俺謹製の干し肉が美味すぎただけなんだ。
菌術による熟成も
武器屋を何軒か見てみたが、何処も揃って剣がメインだった。
剣はゲームなんかだとメジャーだけど実際使うとなると、かなりの技術を要する。
刃筋を立てるってのは一朝一夕で身につくものでもないし、棒振り剣法ならいっその事メイスでも振り回してた方が効果的まである。
メイスもメイスで力任せでは無く技術で振ろうとすれば、それはそれで手首の使い方の妙があるとか無いとか。
何にしろ斬り結ぶ間合い前提となる武器をメインウェポンに据える程の自信は持てない。
原始の武器が長い棒と投石ならば、それらを洗練した武器とは槍であり弓矢なのだ。
なのに店に主力商品ですと並んでるのは刀剣の類いなのだ、解せぬ。
金物屋を見つけたので気分を変えて入ってみる。
大ぶりのナイフを見て愕然とする、ゴブリンナイフと比べたら品質の差は歴然だ。
よく今までゴブリンナイフで解体とかしてたよな、売り物のナイフは刃の厚みからして違って凄く使いやすそうだ。
店員曰く名工のお弟子さんの手による物でお手頃ながらも解体から枝打ちまで万能に使える上におろしたての研ぎたてなのでヒゲだって剃れます、だってよ。
売り言葉に買い言葉ってのは意味が違うかも知れないけど、本当に剃れるなら試していいかと煽ってみたら「剃れたらお買い上げ願いますよ?」との事。
面白い店員だ。
水場に案内されて石鹸と小さな鏡を貸してくれたが、怪我は自己責任だと念を押された。
ショリショリと剃ってみるとソコソコの剃れ味、流石にツルツルと迄はいかないが充分に処理できた。
ついでに髪も切ってしまおう、手櫛で適当な長さで掴んでバッサリ切り落とす。
切った髪は掴んだまま闇の世界へ仕舞っちゃうおじさんだ。
どうにも冒険者ギルドの臭いが髪に染みついてる様で気持ち悪かったのだ、髪を切り縁を切るのは呪術師流の験担ぎだ。
鏡を覗き込みながら随分とサッパリした短髪なのを確認すれば、よくよく見れば味のあるイイ男と自画自賛。
サッパリついでに手足に巻きつけてた毛皮も仕舞っちゃおう、街中では少々浮いていたようだ。
気持ちよく三万マールのお支払い、この切れ味なら納得のお手頃価格だ。
適当な店で適当なローブを購入、二万マールは高いのか安いのか。
だがコレですっかり街人っぽくなった、俺ってばすっかりシティボーイだ。
適当に流して北部の端の方に辿り着いたら、そこには
建物の造りは冒険者ギルドと似て非なる感じ。
受付窓口は少なく、解体場へは受付ゾーンから気軽にウォークインなロケーション。
挨拶して試しにホロホロ鳥を査定して貰うと一羽五万マール……冒険者ギルドにしてやられたか?
あと二羽だけストックしてたので全部解放、合計十五万マール……総額だけなら冒険者ギルドと同じだな。
話を聞くと冒険者ギルドでは魔物の討伐がメインで獣肉に関してはついでみたいな扱いらしい。
そもそも刀剣類で戦うので毛皮も肉も傷んでる事が多いらしい。
一方で
安全・確実で獲物の傷みも少ない狩猟法なのだが期間も人数も必要としている為、単価が高くなるのだそうだ。
一言で言うならば行き掛けの駄賃で狩ってくるのが冒険者、計画を立てて確実に仕留めてくるのが狩人って感じ。
そして
今後は
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