第14話 呪術師と冒険者ギルド


 表に回って受付で色々聞いてみる。

 冒険者になるにはFランクスタートなら無試験で、飛び級なら然るべき紹介状が必要だったり級に応じた受験が必要との事。

 

 Fランは小僧扱い、基本的に何でも屋とか便利屋的な扱いで街中の雑事手伝いとか上のランクの手伝いとかを斡旋される。

 E級は見習いと見做されて、魔の森浅層での採集・狩猟がメイン。

 D級でそろそろ一人前扱い、魔の森中層での採集・狩猟、ダンジョンでの荷物持ち等々。

 C級からはプロとして何らかの突出した技能が期待されて、魔の森中層奥にあるダンジョンアタックが推奨される。

 

 と言うか引率無しのD級以下のダンジョンアタックは自殺志願者扱いだそう、何なら知り合いから物理的に止められるまであるそうだ。

 

 B級以上になってくると一流扱いで魔の森深層だったりダンジョン中層以降だったり活躍のステージが分かれていくそうだ。

 A級とかは貴族にも顔が利くトップクラスらしい。

 S級は英雄扱いらしい、多大な功績を残した人が死後に認定される事もあるとか何とか。


 正直あんまり興味が無かったんだけど受付嬢が立板に水で語ってくれた。

 そんな事よりもお勧めの宿屋、飯屋、武器屋、防具屋、道具屋を教えて欲しい。

 特に宿屋と飯屋の相場次第で今後の方針が大きく変わるんだ。

 早いとこ切り上げて退散したい、人が増えてきて感情のウネリが気持ち悪いんだよね。


 宿は個室で一泊五千マールから、まともな食事は一食千マールからが相場っぽい。

 但し肉体労働で身体がカロリーを求めるならば二千マールくらいは覚悟した方が良さげ。

 朝昼を千ずつに抑えて晩に二千と酒の一杯も付ければ1日一万マールってところか……10ゴブでトントンなら最初の読み通りか。

 プラマイゼロなら貯金も出来ないから、どっかで切り詰めるかもっと稼ぐかだな。

 宿なら大部屋雑魚寝とかでお安くなるだろうし、飯だって味に拘らなければ安く済む筈だ。


 俺の場合、最悪森に帰れば費用はゼロまで抑えられる。

 だが如何せん装備や道具に関しては、それなりの物を揃えたい。

 どうもゴブリンシリーズは品質に難アリの様なんだよな。


 そんじゃ武器屋とかを教えてもらおうって時に査定が終わったらしい。

 査定額は一羽三万マールで通常買い取り額の上限との事。

 十五万もあれば当座の心配はしなくても良さげだな。

 

 それにまだ在庫はあるのだ、魔の森では悠長に解体してる暇も無かったので血抜きしか出来てない獲物もある。

 確か狩人ハンターギルドでも買い取りしてた筈だから、そちらだと幾らになるか持ち込んでみよう。

 

 そんな算段をつけながら預かり証と引き換えに銀貨の枚数を確認する、どうやら一万マールが銀貨一枚らしい。

 さっさと闇の世界に仕舞って店を紹介してもらわねば、と座り直そうとした時。


「満額なんてスゴいですね、滅多に無いんですよ?」


 なんか受付嬢が食いついてきた。


「まぁ、偶々ね。それより武器屋とか教えて貰えないですか?ご覧の通りの山暮らしで色々新調したいんですよ」


「いいですよ、今は何を使ってるんですか?見せて頂いてもよろしいですか?」


 別に何だってよかろう……それとも武器種毎に専門店でもあるんかね?


「今はコレなんだけど壊れかけてましてね、出来れば槍が欲しいんですけど他にも色々見てみたいんですよ」


 闇の世界から三代目ゴブリンバット改を取り出す。


「あー!やっぱり収納魔法なんですね!パーティーでの需要も高くて人気なんですよ」


 いや、そっちかよ……そんで折角出したバットに見向きもしないのかよ。

 あぁ、何だか嫌な予感がしてきた。


「はぁ、まぁ便利ですね……それよりヒビが入っちゃいましてね、焚き付けにでもするつもりなんですよ。それで武器屋さんとか教えて頂けないですか?」


 話を戻そうとするも、やれ今なら初心者講習に力を入れてるだとか冒険者登録して口座開設すると便利だとか聞いてもいない事をピーチクパーチク囀りだした。

 勧誘ノルマでもあるのかね?


 いい加減埒が明きそうも無いので切り上げて退散しようとしたが……遅かった。




 視界の端から拳が降ってきた。



 

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