第9話 呪術師とキンジュツ
異世界生活7日目、独り言が増えてきた様な気がする。
三日前くらいに気付いたんだけど闇の世界に放り込んでた道具がやたらと魔力を通しやすくなっていた。
最初は物体に魔力を通すって技術を早くも会得してしまったのかと糠喜びしたもんだ。
けれど俺は呪術系闇術の才能はあっても魔術全般とか魔力操作とかの才能まであったワケじゃないのよ。
闇の世界に放り込んで日が浅い物には相変わらずだったんよね……ま、贅沢は言いませんがな。
ちょっと悔しかったので闇の世界に流す魔力を多めにする事にした……
我が秘匿されし武具道具達よ闇に染まるのだ!
お陰様で食生活は豊かなものにランクアップしております。
肉が食えるってだけで全然違いまっせ♪とか浮かれてしまう俺も男の子だったって事だ。
そして自らの手で殺めた命を戴く意味を見つめ直すと「いただきます」に込める想いも変わってくる。
しかし解体は手探りだった為に結構手こずった。
前世の俺に“魚が3枚におろせれば鳥も鹿も猪も似たようなモンだよ”とか吹き込んだ人には適当な事言うなと文句を言いたい。
確かに“内臓に刃を入れた取り返しのつかない状態”とかは回避できたし臓物見ても“こんなもんか”で済んだけどさ……共通する処もあるっちゃあるけどさ、やっぱり全然別物だと思うんですよね。
で、只今絶賛マイブーム中と言うか研究中と言うか修行中なのはお肉の熟成だ。
鳥腿肉に手をかざし、胸中で唱えるは「モエモエキュンキュン……」では無く「
腐敗と発酵は紙一重、と言うか基本的に同じ現象なのだ。
微生物の作用で人間に有用ならば発酵、有害ならば腐敗と呼ばれるのだ。
そして古文書によると「ジュジュツトハ、アマタノツナガリカラ、コイネガウスベデアリ、キンジュツニサエイタル」のだ。
そう、人外の存在にさえ代償を
この手のジックリと腰を据えた施術は儀式魔術の原型と言われ、呪術の場合は特に様々な存在を呼び寄せる。
浮遊霊だったり精霊だったり妖精だったり原始の呼び掛けに興味を持った存在が込めた魔力に引き寄せられてやってくるのはザラだ。
今も視界の隅で最近よく見かける手のひらサイズのマイコニドがヒョコヒョコと楽しそうに揺れながら指の無い手をハート型にして食材に何かを送っている。
呼び寄せられたモノ達は一頻り施術が終わる頃には術に込めた魔力を吸い取って各々消えてゆく。
マズそうなのが居た場合は念入りに御祓いして縁を切るのだが大抵は無害な連中なので呪術的な礼をして施術を終わらせる。
込める想いは「協力への感謝。そして良き行いには良い因果が、相応の報いが訪れます様に」と。
常連のマイコニドなんかはトリプルアクセルみたいにクルクル回り、跳んでる最中に光の粒になりながら消えていくのだから目にも楽しい。
気まぐれな妖精がウインクとか投げキッスで消えていく茶目っ気を見せたりと呪術も中々捨てたもんじゃない。
そして取り残された鳥腿肉を念の為軽く御祓いしてから晩飯で頂くワケなのだが……
美味し!!
ヤベー!マジで語彙力無くなるわー!呪術最強すぎるっしょ!
今後の食生活は勝ち組っすサーセンwww宣言させて貰おう。
燻製とかも楽しみダナー、取り敢えず手持ちの札なら竹チップが安牌よなぁ♪
そういや川魚も獲れる様になったんですよ、割って節抜いた竹を互い違いにした網の様な板で逃げ道塞いだ追い込み漁?なんかそんな感じ。
魚も菌術で熟成させちゃおうかな♪それとも一夜干しや天日干しのがいいかな♪一通り試してしまおう♪そんでもって燻製にしてしまおう♪
食べれる野草のバリエーションも大分増えましたよ♪ノビルっぽいのとかセリっぽいのとか何だかサバイバル動画で見たことがある様なラインナップだ。
そして異彩を放つのがパッと見トウモロコシみたいな植物、剥いてみると芯は細くて白い実が瑞々しい感じでロール状に付いてる。
よく見てみると細かい実がミッチリ詰まってるのだが、そのまま齧ってみるとシャクシャクと食感が楽しい。
味は薄く、塩漬けにすれば漬物っぽくなる。
そしてそのまんま竹筒に入れて蒸し焼きにすると実が解れてもっちりとした食感で甘みが出てくる、まるで米だ。
乾燥させて砕くと粉末に崩れて小麦粉の様になる。
ありがとう!
麦米の実(仮称)と名付けよう。
甘味も解決済みですぜ?甘い薫りのする樹木に、やたらと硬い果皮の実が
ありがとう!(略)糖蜜樹の実(仮称)と名付けます!……ネーミングセンスにツッコミは勘弁な。
こんなのは分かりやすければ、それで良いのだ。
俺の呪術師的食文化の発展は留まる事を知らない、呪術チートは最強だね。
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