第8話 呪術師と狩猟
野菜生活3日目、動物性タンパク質に飢える。
毒性植物の見分けが出来るようになり、食の安全と言う意味では飛躍的な進歩を遂げた。
衛生面でも自分自身や衣類に御祓いをするとパラパラと汚れが落ちてくれて意外とサッパリしてくれる。
汗でベタつく感じもしないしニオイもしない……自分の体臭って自分では分かりづらいんだっけか?それでも汗臭さとか感じないんだよね。
きっと
森の中は様々な動植物の気配を感じるけど、ノコノコと目の前に出てくるのはゴブリンくらいのものだ。
相変わらず独特で不愉快な感情を撒き散らしてるので遠くから察知して投石紐の的にしている。
負の感情を振りまかれると他の感情が視づらくなるから邪魔なのよね。
身体強化も相まって中々の命中精度を誇っているのだ。
まだ二組4匹しか相手してないけどな。
お陰でナイフ2、バット1、槍1が戦果に加わりましたよ。
槍はいいぞ、なんてったって距離が取れる。
竹槍も悪くは無かったんだけど耐久性に難があったし何より中空だから魔力を通す練習にならないのよね。
大体身長より気持ち長い位だから短槍の部類になるのかな、それでも頼もしいので練習項目に加えておきまっしょい。
それはさておき昔の人は偉いよな、どうやって投石紐で狩りをしてたんだろう……作ったはいいけど狩りでは出番が無いぜ。
野生動物の勘とか鋭すぎて闇を纏って気配に近づいても即行逃げるんだぜ?
逃げない野生動物とかは多分戦闘力高目の強者でハードル高過ぎるし、逃げる野生動物は多分良く訓練された野生動物なんだろう。
ホント弱肉強食の世界はハードだぜ!フゥハハハーハァー!
それに正直、熊とか出て来られても勝てる気がしないからヤバげな気配には近づかない様にしている。
ゴブリン狩りまくってレベル上げるしか無いのかねぇ。
止まってる鳥とか坂を下ってる兎とか難易度低めのチュートリアルを希望します!
取り敢えずお手本を探そう、何事も形から入るのが素人の正攻法なのだ。
探る感情は飢えと殺意、そして本能的な狩猟欲求……そう、野生の捕食者による狩りを見物させてもらおうって寸法だ。
――――――――
うん、アレは無理だ。
影の如く気配を消して獲物に近づき一気にガブッてのをイメージしてたが全然違った。
いや、探せばそう言う狩りをしている肉食動物もいるんだろうけど少なくとも今日見つけた何体かは揃って長期戦だったよん。
気配消すのは本当に最初の一当てまでで後は
まず逃げる野生動物に対して長距離を執念深く追い回してプレッシャー掛けて体力削るとか無理ゲーっすよ。
それが出来るだけの体力があるから野生動物の捕食者たり得るんだろうけどね。
けれど1つだけ参考になったのが、意外にも捕食動物ってそんなに気配を消してなかった事だ。
よくよく考えてみれば俺の場合は気づかれたくないが為に、気合い入れた魔力マシマシの闇術で綺麗サッパリ気配だけは消してるにも関わらず足音なり生き物が動く形跡だけは残してる状態だった。
野生動物にしてみれば不自然すぎて、さぞ気持ち悪かった事だろう。
道理で速攻逃げられてたワケだ……
気配を完全に消すのでは無く周辺に溶け込む様に抑える、そう言えばマタギの技法にある木化けとやらがコレに当たるのだろうか。
試しに警戒心の強い気配に近づいてみたが視認できる処まではイケた。
木の芽食ってた小動物だったけど投石紐を振り回した時点で反応されて逃げられてしまったよん。
なんだか精神的にすごく疲れたので早く寝たら夜中の変な時間に目が覚めた。
1人用テントくらいの大きさに広げた闇は快適な温度で過ごしやすいのだが、妙に目が冴えるので深夜の散歩と洒落込む。
闇適性ブッパな俺の呪眼は夜目が効くなんてレベルじゃなく良く視える。
フハハハハッ!我こそが夜の闇を
纏う闇をマントっぽくしてポーズを取ってみたけど
俺は反省と自重がデキる大人なのだ。
夜の森は一部の夜行性動物が活動してる以外は静かなもんだ、きっとまだ見ぬ俺の動物性タンパク質も何処かで眠りに就いてるに違いない……
ん?と言う事は……
夜の森を彷徨い、木の上に安息と休眠の感情を探る。
捉えた気配を狙って「追う闇」に「
念入りに魔力マシマシの強力な睡眠弾だ。
これで通常睡眠しててレジスト不可の状態に呪術による睡眠で上書きされ続ける筈だ。
エッチラオッチラと木登りしてみると何と言う事でしょう、丸々と肥えた野鳥が眠っています。
昼の苦労って何だったんだろうな。
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