第7話 呪術師と開眼
何かと不便なので紐作りに挑戦。
道々採取していた植物の真っ直ぐな茎から葉を切り落として水に漬ける、しばらくしたら茎から皮を剥く。
剥いた皮を作りたい紐の太さくらいの束にして端っこを結んで二房に取り分ける。
それぞれの房を同じ方向に捻り、捻ったのと逆方向に縒り合わせていく。
細くなってきたら両方の房に皮を継ぎ足して長くしていく。
紐作りをザックリと説明すると大体こんな感じだ。
用途に合わせて色んな太さのを作りたいけど時間も材料も足りないから、一番使い勝手が良い直径1センチくらいのを取り敢えず1メートル作ってみる。
懸垂が出来るくらいの枝に引っ掛けて体重を掛けてみて切れなければ合格だろう。
これで切れるようなら材料選びに致命的な問題があるとしか言えない。
問題が無ければ残りの材料で作れるだけ長く作っておく事にする。
試作品の1メートルは両端に拳で握り込める程度の石をシッカリと結ぶ、簡易的なボーラだ。
本格的なのは三又のヤツになるんだけど作るのに手間が掛かりすぎるので余裕が出てきてからだね。
出来上がった紐を編み上げる、
それが適当な大きさの石を包める程度の受け部分になる様に形を調整しつつ、全体の中央になる様に仕上げる。
お手製の投石紐だ。
手元から30〜45cm程度の長さが振り回しやすいのだが勢いが乗らない……いや、乗るには乗るのだが野生動物を狩ったり命を掛けたやりとりをするには少々威力に不安が残る。
全長2m、つまり手元から中央まで1m程度の長さが欲しい。
それでも練習は必要だし、それ以上の長さはちょっと扱い切れる自信がない。
贅沢を言えば竹から弓も作りたい、確か歴史上最強の和弓は竹と木材の複合弓で殆ど竹で出来ていたらしい。
だけどなぁ……たしか竹を張り合わせるニカワとか接着剤的なのが必要だったから素人には無理ゲー過ぎるので断念だ。
竹と言えば塩花は多肉性植物で竹筒に入れて蒸し焼きにして美味しく頂きました。
勿論念入りに御祓いしてから調理させていただきましたけどね。
食材に関しては、近くに他の生き物が居なくて集中すれば呪眼で何となく毒性植物が分かる様な気がするんだ。
そもそも動物でも植物でも毒性を持つものは生存戦略として毒を持つ様に進化したとか聞いた事がある。
他の生物に追いやられた過酷な土地で生き残る為に土地特有の毒物を分解出来る様に進化した、とか次世代を担う種子を作り出すまでには捕食されない様に毒を分泌する様になったとか。
そんな風に生き物として身体を作り変えるほどの進化には並々ならぬ何かがあったのは想像に難くない、その様な神秘は正に原始たる魔法と通ずるモノ……あるいは魔法そのものと言っても差し支えがない。
その神秘の残滓が奇跡の残り香として他の生き物とは違う、独特の雰囲気を纏ったとしても不思議ではないのだ。
実際にヤバそうな植物とそうでない植物では呪眼での視え方が微妙に違うのだ。
実の処どうなんでしょ?教えて呪術書先生!
📖<オシエテシンゼヨウ!
思い出すがよい、呪術とは望む何かを引き寄せるに足る代償を捧げる行為だと。
言霊を重ね、代償が充分ならば世界は応えてくれよう。
望むならば、まずは捧げよ。
📕<ショウジンシロヨー
また普段とも闇術の時とも違う文体だなぁ……俺の魂の違うチャンネルにアクセスしたんだろうか。
捧げられる物なんて……魔力か、そんでもって言霊……言霊ねぇ。
「その身に、その実に、毒を宿した奇跡の軌跡を我が目に映せ」
掛けた言霊に魔力を込めて呪眼に流すと何らかの手応えがあった。
試しに触ったらカブれた植物をジックリと呪眼で観察するとうっすらと、本当に集中してないと分からないくらいうっすらとだけど毒々しいオーラが今までよりハッキリと視えた。
ヤバい、俺って視える人になっちゃった?
ってそもそも呪眼で色々視えてたわ。
多分言霊の掛け方のセンスがイマイチだったからこの程度の視え方なんだろうなぁ。
けれど視えないより視えた方が断然いいよね、こんな風にこれからも呪術を鍛えていこう。
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