第4話 呪術師と闇術の実践


 📖<オイツメルゼ!!

 

 追う闇


 放つ闇、闇の弾とも呼ばれる闇の塊を放つ闇術。

 のろいで紡がれた闇の弾速はのろいが、込められた魔力が続く限り対象を追い続ける。


 放たれた闇が対象を捕らえた時、込められたのろいが降りかかる。

 極まったくらい闇は生命も魔力もことごとく喰らい尽くす。

 

 📕<ゴブウンヲ!!



 

 やった!遠隔魔法だ!これで勝つる!

 どうやら闇術はデフォルトでドレイン効果が付いてるらしい、お得だね。

 

 ちなみに弾速は歩く位の早さ、そして接触してないのでドレインした体力や魔力は吸収出来ない模様。

 それでも距離を置いてダメージを与えられるのは魔術師系統の優位性アドバンテージだ。


「これで終わりです!」


 放たれるバスケットボール大の闇がゴブリンに迫る。

 遅い弾速も恐怖心を煽るいい演出になってるのでは無いでしょうか♪

 

 どうやら複数展開も出来るっぽい、逃げ道を塞ぐ様に2発目3発目と追加していく……追い詰めろ!我が呪弾よ!


 まだ痛むであろう腹を押さえて逃げ惑っていたゴブリンだが、被弾を覚悟し突っ込んで来やがった。

 いいだろう迎え撃ってやる、更に闇弾を追加おかわりしてやる。

 

 迎撃の闇弾に思わず足を止め四方から迫りくる闇弾に身を固めて耐えるゴブリン、ダメージは確かに通った。




 が、思った程のダメージじゃ無かったらしくウギャウギャ言いながらショートソードを掲げて駆け寄ってくる。


 ヤダ、俺って結構弱いかも?

 

 あ、ちょ、マジ刃物はヤバいって!掲げて走っていいのは「勝訴」って書いた紙だけよ!ショートソードショーソって意味が違うからねー!


 脇腹のダメージ分だけこちらに分があったので走って何とか距離を取り直す。

 投石するには心許ないけど呪術ならちょっとした集中で放てる。

 

 追う闇単品で駄目ならセットで提供してやんよ。

 込める呪術は「鈍化スロー」と「痛みペイン」、2種類の闇弾を釣瓶打ちじゃい!

 多分「睡眠スリープ」はペインで無効になるだろうし「腐敗コラプション」は即効ってわけじゃあないだろうから今回は見送りだ。


 ペイン弾は命中する度に苦しそうな声をあげているが直接的なダメージには繋がってない様だ、だが間違いなく精神力は削られてる事だろう。

 そして低い姿勢からダッシュして躱そうとしたスロー弾が足に連続被弾した時に興味深い効果が見て取れた、足がもつれて転倒したのだ。


 ダメージはドレイン分があるにしても今までの被弾では耐えられたのに足がもつれたのだ、つまりスローは被弾部位にのみ効果が発生したのではないか……これはもしやひょっとするとかなりエゲツナイ初見殺しになるかも?

 

 いや、もっとエグい事思いついちゃったよん。


 部位狙いに切り替えたスロー弾を頭部に集中させる、数発は庇えた手の動きが鈍化し掻い潜った弾が顔面に命中した時に効果が顕著に出た。

 試しにゴブリンの背後に大きく回り込むも視線の動きが鈍く……いや、視線どころか体全体の動きが遅くなった。


 これ脳にスローが掛かっちゃってるわ。


 色々思うところもあるが、復活される前にトドメを刺す。

 3匹とも殺すと色んな想いが纏わりついてくるのが視える、こういうのが積もり積もったり或いは強すぎたりすると厄とやらに転化してしまうらしい。

 

 魔力を込めて「厄祓い」する事で縁を断ち切る、迷わず成仏してくれよ。



 

 やれやれ、死闘の末の戦果は竹槍1、ゴブリンバット1、そしてショートソードだと思ってたけどマチェーテっぽい刃物が1、そしてナイフを1本見つけた。

 ナイフは武器ってより解体とか加工に使うサイズだなコリャ。


 竹林に戻り使えそうな竹を伐採、そしてタケノコ1本確保。

 ゴブリンとの合戦場は験が悪いので一先ず上流に向かってみる。




 タケノコを流水に晒してアク抜きしとく、適当な石に座り込んで気を落ち着かせる。

 ちょっと落ち着いて考え直さないと色々ヤバいよね、腹にダメージ負ったゴブリン相手で苦戦したのだ。

 少なくとも距離を置いた魔法戦みたいな戦い方では生き残れるビジョンが湧かない。


 取り敢えず生き残る為に今日やる事を整理しよう。


 1つ、飲料水の確保。

 こいつは竹で水筒作って汲んできて御祓いしてしまおう。


 2つ、食料の確保。

 タケノコを切り分けたいのだがナイフに衛生面で不安が残る、河原の石で綺麗に研ぎ上げてしまおう。


 3つ、寝床の確保。

 取り敢えず竹を並べれば、ある程度平らな面が確保できる。

 あとは何か枯れ草でも乗っけとけば寝れるかな?地面の上よりナンボかマシでしょ。


 4つ、火の確保。

 乾いた竹があれば切り込みを入れてノコギリ式で発火できる筈だ、多分火溝式より素材の吟味が容易だったからイケると思う。

 キリモミ式は難易度高くて上級者向け過ぎるからなぁ。

 呪術師って火術にも適性あるのが普通なんだけど、俺はどうやら絶望的に火術の才能が無いらしい。

 その分、闇術に振り切ってる筈なんだけど使いこなせてないよな……あんだけ適当に乱発して魔力が減った気しないってのは確かに適性アリなんだろうな。


 5つ、呪術書の熟読。

 呪術書は取り急ぎ最低限必要な事は教えてくれた、だってそう望んだのは俺だからね。

 だけど呪術で生き延びるには工夫や応用が必須なんだと思う、そもそも単純にドカーンと派手で強力な魔法じゃなくって原始的でマイルドな効果が呪術っすよって教えてくれてたんだから。

 

 闇術に才能があるってんで調子に乗ってたんだろうな……しかし呪術書は問い掛けに必ず応えてくれるんだ、慢心せずに真摯に向き合わなきゃな。



 

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