第3話 呪術師と秘剣
水場を求めて彷徨ってると竹林を見つけた。
ナイス!竹があるだけでサバイバルの難易度がググンと下がる。
勿論各種加工には何らかの刃物的な道具がマストなんだが竹があるだけで精神的な余裕が出てくる。
注意深く見てみるとタケノコの先っぽも見つけたので食料問題にも明るい兆しだ……食べれるよな?異世界タケノコ。
前世ではキノコ派だった記憶があるので竹林に向かって軽く呪術的御祓い「厄払い」をしておく。
厄とはヨロシクない感情やヨロシクない存在と繋がれた
紡がれた厄を
ついでに枯れて倒れてた竹も確保しておこう。
竹林から暫く移動した先には川があった。
ゴロゴロと石が沢山転がってる河原で、清流と呼んで差し支えのない様な澄んだ流水なのだが如何せん飲めるかどうかの判断が難しい。
動物の足跡が多数認められるので水場となってるのは間違いなさそうだ。
汲み上げて呪術で厄祓いすればイケそうな気がするんだよね。
浄化魔法のルーツっぽいし、流石に泥水を真水にってワケにはいかないだろうけど野生動物が飲用してるくらいのを綺麗にするくらいならイケそうな感触。
更に魔術的に洗練されたら
水を汲むには、その辺の石を叩き割った石器を使って竹筒でも作ればなんとかなるかな?
そんな風に深い呪術的考察に耽っていたら、ちょっとよく分からない気配が近づいてきた。
警戒でもない、飢えでもない……強いて言うなら焦燥?不満?それらの感情を弱火でコトコト煮詰めた様な慢性的な感情の
残念ながら見晴らしの良い河原なので直ぐに身を隠す事は出来ない。
流す魔力を強めて「纏う闇」による気配の希薄化を強める。
気配は茂みを割り緑色の小型二足歩行として姿を現した、典型的なゴブリンだ。
数は3匹で川に口をつけてガブガブと水を飲んでいる。
いきなり3匹とか勝てるわけないだるぉ?って事で素直に退散を選択、三十六計なんとやらだ。
だがしかし、焦りにより足場の悪さを忘れてた。
足元の石が転がり音を立てる……ゴブリンは耳ざとくこちらを注視する。
濁った瞳から発する感情は、警戒から敵意そして明確な殺意へと変化する。
あちらさんから見ればこちらは人型の闇だ、しかも気配は希薄という怪しい限りだ。
せめて肩から上のフォルムだけでも人っぽく無ければワンチャンごまかせたかも知れない、人は何時だって失敗してから気付くのだ。
ウギャウギャ言いながら駆け寄ってくる3匹。
獲物はバットみたいな棍棒が1、ショートソードが1、そして竹槍が1だ。
こうなったら徹底抗戦だ、距離がある内に振りかぶって投石だ。
スリークォーターから放たれる豪速球(あくまで個人的なイメージです)は寸分違わず竹槍の顔面に命中する、頼むリアルデッドボールであってくれ。
2球目は外角高目にスッポ抜け、3球目はショートソードの内角低め土手っ腹にシュート。
蹲るショートソードにトドメを刺したいが、ここで投球チャンスは終了。
拾ってた木の枝に持ち替え、距離を詰めてきたバットゴブリンとの五分五分の勝負の始まりだ!
背の低い相手とのチャンバラは意外とやりづらい、出どころが低い上に向こうの狙いが下半身に集中するのだ……コイツ、文字通り
それにショートソードが何時復活するかも気が気じゃない。
こうなったら破れかぶれじゃい!市営体育館で培った素人流スポーツチャンバラの
右足を大きく引いた俺に釣られ前に踏み込んできたゴブリン、迎え撃つはニチアサヒーロー流左
切っ先は真下から跳ね上がり勢いのまま円を描いて再度下から掬い上げる……真下からの剣撃は近間だと死角となり最短距離で金的を擦り上げる邪剣だ。
しかも隙を生ぜぬ二段打ちは左右どちらの
「我に禁じ手を使わせるとは、誠あっぱれな益荒男よ」
木の枝を血振りの仕草で振るい残心を解く……ってヤバっ!ショートソードが立ち上がってる!刃物はヤバいって!
だが直ぐに突っ込んでこないで脇腹を押さえながらジリジリ距離を詰めてくる……よし、考える余裕があるって事だな。
まずは落ち着いてヒッヒッフー……現状把握だ、相手のダメージは打撲でゆっくりと距離を詰めて来ている……って、それに付き合ってたら回復されちゃうってば!
投石するには先程の会心の秘剣で手が痺れてて覚束ない……バットで切り合うのもチョー怖いんですケド〜。
そうだ、呪術があるじゃん。
いざ、我が闇術の深淵に刮目するが良い!
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