第2話 呪術師と適性


 結果から言うと俺のチートは素晴らしいの一言だった。


 まず一番助かったのはファジーな検索機能だ。

『チュートリアル』『最初に覚える事』『呪術の基本』『今呪術で出来る事』等の言葉ワードを想いながら魔力に込めると該当ページを開いてくれるのである。

 これらのページを斜め読みで飲み込みながら軽く実践していくと……馴染む、実によく馴染む。

 

 そして次に助かったのはパラパラと斜め読みしてもガッツリ知識として記憶に定着してくれる事だ。

 野生動物やら魔物やら何が彷徨うろついてるのか知れない異世界の森の中、スポンジが水を吸うが如く記憶に刻み込まれるのはすげぇ助かった。

 

 そんなら魔力込めるだけで脳内インストールしてくれよ、とも一瞬思ったけど恐らく儀式的な意味合いとか一度自分の外に出して取り入れる事で改めて噛み砕けるものなのだろうと考え直した。

 

 記憶にある前世でも考えを言葉として発して自分の耳で聞く、文章に書き記して自分の目で見て読んで初めて考えが纏まるなんて事はあるあるだった。

 考えてるだけで纏まる前あるいは纏まったと思い込んだ考えをいざ人前で話そうとしても組み立てがあやふやで支離滅裂な雑談で終わる事なんてザラだからね。


 総括すると、どうやら俺の適性はカナーリ尖ってるらしい。

 何やら呪術系闇術、呪術ベースでそっから派生した闇系統に特化しているんだ。

 世間一般に言う闇魔術ってのは更に効率的に特化・洗練された魔術で、闇術ってのはその前身に当たるらしい。

 

 ベースとなる呪術で出来る事なんだけど、ぶっちゃけ効果が強いモノは軒並み代償コストが高い。

 呪殺とか致死の呪毒とかは平気で寿命とか魂とかを代償として求めてくるし、離れた相手を名前とかでパスを繋いでのろうのも腕一本とか内臓一個とか代償として求めてくる。

 しかも適切な対応されると呪詛が返ってくるんだからたまったもんじゃない。

 

 とてもじゃないが普通の神経してれば使おうとか思わないけど、追い詰められた人間とか自爆テロとかしちゃうタイプの人間には魅力的な術に映るのかもしれない……そりゃあ世間様から忌み嫌われるよな。

 

 コストが魔力だけで済むものは「鈍化スロー」「痛みペイン」「睡眠スリープ」「腐敗コラプション」くらいなもんだな、それも基本的に接触しないと発動しない。

 後は呪術師としての基本能力として「呪眼」と「厄祓い」が出来る。

 

 そして闇術は派生だからか分からないけど魔力コストだけで発動する。

 種類は「闇の腕」「纏う闇」「放つ闇」「闇の残滓」「闇の世界」なんだけど説明は使用時に随時呪術書から抜粋していこう。




 はてさて右も左も分からぬ森の中、持ち物無しのハードモードのようで。

 そして意識しなくても感じるのは森の中に張り詰める警戒心だ。

 これは呪眼の能力の一端らしい。

 

 順を追って説明すると、呪術の仕組みは重い想いが力を引き寄せ現実化させる事が基本となる。

 その際に力ある人外の助けを得て実現させるなんて事も良くある事で、どうやら其の辺が不気味がられる要因の一つっぽい。

 

 けれど他の魔術も大なり小なり同じ様な事してんだけどね、呪術だけが殊更忌み嫌われてるイメージ。

 ま、それはさておき感情とか強い想い、ひいてはそれらが転化した魔力を視たり感じたり出来るのが呪眼の能力なのだ。

 

 集中して感情や魔力を発する元を辿ると生命の息吹とも言える気配を探る事が出来る。

 人の手が入って無さげな森の中、野生動物や魔物の生存競争の場なワケで生あるものは常に警戒し続けるのがマストなルールの様ですな。

 こちとらヒヨワな人間様だ、知恵と呪術で生き残らねばと言うことで闇術「纏う闇」を発動だ。




 📖<ツカイコナシタマエ

 

 まとう闇

 

 闇の衣、まつわる闇とも呼ばれる闇術。

 魔力で編まれた闇を纏う事で身を隠す。

 

 暗い闇は光を喰らい、気配を喰らい、術者の影を薄くする。

 暗い闇は雨風を喰らい、熟練すれば刀剣あるいは魔法の一撃すら喰らい、術者を守る。

 

 📕<ケントウヲイノル




 隠密効果のある術で僅かばかりの防御力も備えている。

 効果範囲を広げると1人用テントくらいの大きさに展開できる、野営が捗りそうだ。

 将来的には強力な防御手段になりそうだし何より余計な戦闘を回避できそうなのがデカい、コストも軽いし常時展開しておこう。


 そして体系化される前の、派生した術の特徴として「くらい」と「らい」みたいに音を重ねて術の強度を高めてるらしい。


 さて手ぶらってのも不安が募る、武器になりそうな物を探していこう。

 まずは石、投石は原始の闘法であり二足歩行が最初に手にした武器だ。

 

 可動域の広がった肩甲骨が可能にした“物を投げる”という行為は四足歩行と相対する上で数少ないアドバンテージなのだ、馬鹿にしたもんじゃないですよ。

 本当は紐とかあれば投石紐なんか作りたいんだけども丈夫な紐は現時点では贅沢品だ、何とかして調達したいですなぁ。

 

 後は目に付く手頃な倒木を拾っていく、古来より長い棒で叩くのは闘いの基本であり奥義なのだ。

 そして御紹介しよう、闇術「闇の世界」だ。




 📖<ヤミノセカイヘヨウコソ

 

 闇の世界


 闇隠し、闇の袋とも呼ばれる闇術。

 闇の空間を作り出し所持品を隠す。

 

 心の闇は秘する闇、人目はばかり隠す秘匿は闇の中こそ相応しい。

 

 📕<ヤミノナカハオチツクゼ




 はい、要するにアイテムボックスです。

 容量は9立米くらいかな?何となく感覚的にそんなもんだと把握できる。

 

 時間経過はありで生き物も入るみたいね、但し入るには同意が必要っぽいから誘拐とかには使えない……意識を奪えばワンチャンいけるか?要検証ですな。

 そんな益体もない事を考えながらポイポイと使えそうな物を放り込んでいく。


 次は水が欲しい、川とか無いかな。

 湧き水ならそのまま飲めるんだっけか?

 

 何にしろ動物だって水場で渇きを癒やすのは間違いない。

 呪眼に魔力を注ぎ“潤い”の感情を探る……ふむ、何となくあっちにありそうな気がする。

 呪術便利ダナー。


  

 しかし闇術の説明だけゲームのフレーバーテキストっぽいのは何故なんだろうか。



 

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