呪術師放浪中

第1話 呪術師と異世界


 呪術、それは忌み嫌われし魔術。

 

 何かを代償に、人外の存在に行為の代行を願う魔術。

 のろいや呪殺など禍々まがまがしくいたましい忌むべき呪法を扱う魔術。

 

古文書によれば「ジュジュツトハ、アマタノツナガリカラ、コイネガウスベデアリ、キンジュツニサエイタル」と解読されている。

 手段を選ばず手繰り寄せられる全ての縁から荒ぶる神や禍神まがかみ、果ては悪魔や妖魔など力持つ者に呼び掛け乞い願い非望ひぼうを叶えんとする禁じられた魔術。

 

 故に人の身で触れるは忌避すべき邪法である。




 以上が世間での一般的な呪術の評判だったりする。

 そして非常に残念な事なのだが、その忌み嫌われている呪術が俺のチート能力なんすよ。

 

 正確には呪術書を呼び出す能力がチート能力に当たる、そして呪術に関する適性もチート能力かも知れない。

 具体的には魔力を込めると呪術書が具現化するんよ、込める魔力の質とか量とかで読める内容が詳しくなるっぽい。

 

 今の魔力では悲しい哉、具現化出来る呪術書は薄く頼りない……これからの成長に期待しよう。

 そんで呪術について知りたい事を思い浮かべて更に魔力を込めると関連するページが開く、こう手を触れずに宙に浮きながらパラパラとページが捲れるんだけどファンタジーっぽくてアガる。

 

 色々細かい事を説明しだすとキリが無いから簡単にコイツを見てもらおう。



 

 📖<セツメイシヨウ!!


 呪術とは


 簡単に言うと体系化する前の原始的な魔法です。

 特に決まった呪文とかは無いです、純粋な祈りとか願いとかが起源なんで気分が乗りやすいフレーズとか使えばいいと思うよ?

 

 そもそもが雨乞いとか恋のオマジナイとかから発展したものなんで効果は体系化された魔術と比べればマイルドですね。

 

 それでも魔力とか代償とかコスト掛ければ結構大概な事もできちゃいますけどね、用法・用量に注意してお使い下さい。


 📕<イジョウ



 と、まぁこんな感じ。

 世間の評判と随分違ってるよな?一応それには理由があるんだけどソレは後々語っていこう。

 

 文体がアレなのは呪術書を具現化してる魔力の持ち主、つまり俺が原因っぽい。

 まぁ知りたい事が知れれば事足りるので充分だと思ってるし、逆に古めかしい言い回しとか仰々しい単語とかで書かれても読みにくいだけだからな。

 

 実は超絶チートで呪術以外の事も調べらるんじゃね?ってチラリと思ったけど上手くいくイメージが沸かない。

 いや、もしかしたら神的な何かに脳内とか意識にリミッター的な制限を掛けられてて出来る気がしないだけかもしれない!って念の為にやってみたけど駄目でした。

 

 どうやらアカシックレコード的なモノにアクセスしてるんじゃなくて俺の魂的なモノにアクセスしてるっぽいんよね。

 そんなら最初から十全に知識として持ってないのおかしくない?とも思ったけども、人間は案外自分の事が分かってないってこう言う事なのかも知れないと納得してしまった。


 だって俺、記憶喪失なんですよ。


 気付けば見知らぬ森の中、麻の様な簡素な服で着の身着のまま名前も経歴も分からない、ただ自分が呪術を使えて呪術書を呼び出せる事はハッキリと分かる。

 ついでに文化的で文明の発達した世界で暮らしていた記憶もある、けど具体的に何をして生計を立ててたとか家族や友人の顔や名前の記憶とかがスッポリ落ちている。

 

 ただ、今の状況が異世界転移とか異世界転生だって事だけは妙な確信がある。

 チートが使える身体に作り変えられてるっぽいから転生なのかな?

 

 そして残念な事にサバイバル的な知識に精通している訳では無かった様だ。

 あるのは生水はそのまま飲まない方がいい、とかキノコは素人が手を出しちゃイカンくらいの一般人的知識程度だ。

 

 頼れるものは我が身一つと何よりチート、まずは可能な限り熟読しよう。


  

 一縷いちるの望みはあるんだ、「体系化する前の原始的な魔法」ならば様々な可能性を秘めている筈だ!……きっと、多分、メイビー、プリーズ……



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る