呪術師呪術中!
椿 恋次郎
第0話 始まりの出会い
気がつけば薄暗い空間に
ぼんやりとした視界、ひんやりとした様な
何時までも居たい様な、何時までも居てはいけない様な、そんな淡い胸のざわめきが意識を明滅させる。
もしかしたら胎内とは、こんな世界なのかも知れない。
そんな益体もない思いで世界を眺めてると、薄闇が集まり、人型を
「あら?珍しいわね、こんな処に迷い込むなんて」
鈴を転がすと言うには少々陰にこもった、だが不思議と心地よく染み入る声は女性のものだろう。
「ふふ、随分と詩的な表現をするのね」
声に出していたのか?…いや、そもそも声に出すと言う行為はどの様なものだっただろうか?
「貴方はね、魂の状態なの。そしてここは私の世界だから…魂が念じた事は筒抜けね」
嗚呼、魂なのか、道理で貴女の言葉が魂に染み入る様にスルリと入ってくるのか。
「ふふふ、本当に面白い表現をするのね」
貴女の声も貴女の気配も、貴女の世界はすごく…ものすごく心地が良い…
「そうね、貴方の魂の在り方は私の世界と相性が良いみたいね…良すぎて世界に溶け込みはじめてるわ」
溶ける…そうか…良いのだろうか?私の様な異物が貴女の世界に溶け込んでしまっても…
「歓迎したいところなんだけど、それは少し勿体無いわね。せっかくここまで辿り着いた珍しい魂ですもの、もう一度肉体の世界に降りてみて魂の在り方を変えて来なさいよ」
…肉体?…魂の在り方?
「少し記憶が溶け出して世界と混ざってしまってるわね…けど、これくらいなら修復は可能ね…ほら、どうかしら?」
うを!?何だこりゃ!?薄ぼんやりしてた世界がクッキリと見える?
「ふふ、貴方はそんな話し方だったのね」
わぁ…
「あら?鋭いわね…そうね、だいたい女神みたいな存在ね」
しまった!思考がダダ漏れだったんだ…
「ふふ、ありがと」
流石女神、美しいとか言われ慣れてるのか余裕の対応だ…いや、神だから動じないのかな?
「多分、今説明しても其のあたりの事は理解出来ないわよ?…いいえ、“理解に要する時間が足りない”が正解かしら」
時間が?
「そう、今の貴方は私の世界から切り離した状態なの。だから長くは此処には居られないの」
そうなんですか…こんなにも素晴らしい世界なのに…
「ふふ、私の世界を褒めてくれてありがとう。けれどね、さっきの状態だと世界に溶け込んで消えて無くなってたのよ?」
それも悪くない様な気もしますが…
「貴方みたいな魂は珍しいの、世界に溶かすよりも少しだけ魂の在り方を変えれば私の世界に在り続ける事が出来るわ。貴方が望めば、ね」
…どうすれば変えられますか?
「良い質問ね、もう一度肉体の世界を巡り魂の在り方について知見を深めなさい」
魂の在り方、ですか。
「私も貴方を気に入ってしまったわ、少しだけズルをしてあげるわ。もう既に貴方の魂は少しだけ私の世界と溶けて混ざり合ってしまったの、混ざった世界の一部を知識として認識出来る様にしてあげる。貴方の前世で言うチートね」
混ざった知識…これかな?
「ふふ、なるほどね。貴方の場合は知識が本として具現化するのね」
女神の…薄い本?
「…何かしら?その呼び方には抵抗を感じるわね…魂の在り方について知見が深まれば知識が増えて本は厚くなるはずよ」
女神の…アツい本…
「ふふふ、本当に面白いわね。名残り惜しいけどそろそろ時間ね、また逢いましょう」
…………
「行ってしまったわね…ふふ、もう一つだけズルをしたわ。貴方の魂の一部…記憶の欠片を預かったわ、引き合う記憶は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます