ルーザーズパニック4

 朝早くから始めた今回のダンジョン探索での成果ですが、エーテル結晶が九十個ほど集まり、コボルトの魔石も十二個ほどという結果となりましたのでお昼には帰還いたしました。時間をかければもっと詰め込めるでしょうが、無理をする必要もありませんしね。

 手に入れたモノは全部ラキくんの背負い袋に入れさせていただきましたので、私は手ぶらな状態で移動できましたし、サーチドローンもバッチリ機能していましたので奇襲を受けることもありませんでした。実に良い感じで探索者ライフを送れております。

 ちなみにエーテルはラキくんのご飯にもなりますので売却したのは八十個で、残りはお持ち帰りです。それでも稼ぎは十三万円になりました。少し奥に進んだ先にある天井のエーテル結晶はエーテルの蓄積量も多いようで、買取額も上がっているようです。これが五時間程度の労働で得られるとは、探索者ライフとは実に素晴らしいものですね。

 それとレベルも1上がって10になりました。ラキくんが討伐してもレベルは上がるようです。

 レベルが10になっても最低ランクステータスの私自身の性能は一般人と大差ありませんが、ストックできる収納空間がまたひとつ増えました。しかも新しい収納空間は入れたものが詳細に解析できるようなのです。当然入れられるサイズは限られていますし、若干癖のある能力なのですが、上手く扱えばより効率的に稼げるようになりそうな予感があります。


「美味しいですか?」

「キュル、キュルル!」


 車の中で小さくなったラキくんがエーテル結晶の端っこを砕いて中からエーテルをペロペロと舐めています。

 探索協会からもらった召喚獣飼育マニュアルによれば召喚獣は召喚主からの魔力供給だけでも活動可能なのだそうですが、外部供給することで私の魔力消費を軽減してくれるそうですし、魔獣にとってエーテルはご馳走で、それは召喚獣でも同様なのだとか。まあ頑張ったラキくんへのご褒美と考えれば、あげない理由はありませんよね。

 そして、そんなラキくんの様子を微笑ましく感じながら私が向かっているのはオーナーに睨まれてとてもとても居心地の悪い自宅マンション……ではなく、探索者用のホテル『川越メイズホテル』となります。

 このホテルには月額二十万円以上で食事や各種施設も利用できる長期滞在プランがあります。

 探索者で成功している方々の収入を考えれば大変リーズナブルなのですが、このプランで泊まれるのは探索者やその関係者のみとなっております。

 種を明かせば近隣に川越ゲートというランクAダンジョンへの入り口がありまして、何かあった時のための用心棒代込みなのでお安いというわけのようですね。

 本来であればレベル20以上で実績もある探索者でないと宿泊はできないのですが、私は探索協会から特例で許可を出していただきました。

 理由は言わずもがな召喚獣のラキくんの存在です。普通のマンションではセキュリティが心許ないそうで、また出会った当初のラキくんのレベルは推定50であるため、それを倒した私も見合った実力を持っているだろうと判断されたということでもあります。

 ウチのマンションはペット禁止でしたし、正直助かりました。沢木さんには感謝ですね。

 そして、吉川ゲートを出てから一時間ほどで川越メイズホテルにたどり着きました。元々はダンジョンの被害に遭った高級ホテルを改築したものなのだそうですが、想像以上に大きくて立派なホテルです。

 小市民の私としましては気遅れしてしまいそうですが、郷に入っては郷に従えとも申します。探索者として上を目指す以上は慣れていかねばならぬことなのでしょう。そして車を駐車場に止めてホテルの入り口にまでやってきたのですが……


「フー」


 ラキくんがなにやら興奮しています。流れてくる感情は闘争心? もしかするとホテル内にいる高レベルな探索者の気配を感じ取っているのでしょうか?




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【次回予告】

 犬も食わぬ争いの場に足を踏み入れた善十郎。

 すべては偶然の悪戯か、悪意ある必然か。

 そして善十郎が出会った謎の女が語る新たな世界へのいざないとは?

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