ルーザーズパニック3

 ラキくんと共に吉川ゲートを出た私は探索者御用達のショッピングモール『ダンジョンタウン』へと向かうことにしました。色々と考えた末、今後のダンジョン探索をする際に必要なものが増えてきたためです。

 ラキくんは召喚獣だからでしょうか。私と意思疎通が可能で、力仕事を請け負ってくれることを了承してくれました。それはつまり、ステータスオールFでフィジカル面での成長が見込めない私では諦めていたことをラキくんにやってもらえるということです。これは非常に大きいです。

 そしてダンジョンタウンにたどり着いた私が購入したのはラキくん用の伸縮性の高い背負い袋、それに魔石抽出器と万能ロープです。

 最初、ラキくんに背負ってもらうのは大きなリュックサックを想定していたのですが、普通のレッサーパンダサイズの時には持ち運びが難しいので、普段は私の収納空間にも入れられるくらい小さくなるタイプを選びました。ダンジョン素材製なので少々お値段はかかりましたが必要経費と割り切ります。

 魔石抽出器は文字通りの代物で、大きな筒の先に花のように広がった刃先があって、死んだ魔獣にザックリと突き刺してグリッと回して力技で魔石を取り出す道具です。結構な力が必要なので私は自分で使うのを諦めていたのですが、ラキくんなら問題なく扱えます。

 最後に万能ロープです。高所に荷物を引き上げたり、大きなモノを持ち運ぶ際にラキくんに縛り付けて運んでもらったりするためのものです。探索にはロープは付き物。私ひとりでは嵩張って持って行けませんでしたが、次からはラキくんが一緒です。ありがたいことですね。

 ラキくん用の武器の購入も考えましたが、下手な武器を持たせるより爪の方が強いですし、今回は見送りました。実際に魔獣と戦ってみて必要があれば検討するつもりです。


『それでは安全安心を旨に、素晴らしい探索者生活をお楽しみください』


 そんなわけでラキくんを召喚した翌日、いつもの吉川ゲートにやってきました。今日はラキくんの試運転も兼ねてそこそこ潜ってエーテル結晶を集めまくります。


「キュァアアア」


 ラキくんも喜んでますね。周囲の人に写真を撮られてますが大丈夫でしょうか。まあ従魔用の首輪も付けてますし大丈夫でしょう。失敗を恐れていては何も始まりません。

 ちなみに現在のラキくんは、元の姿に戻り、背には背負い袋、魔石抽出器とロープを大型従魔用革ベルトにつけている格好です。あとはヘッドライト付きヘルメットを被っていればそれっぽいのですがダンジョン内は明るいですし、ラキくんにヘルメットが必要とも思えません。それではいざ探索へ。


「ワ、ワォォオオン!?」


 移動から三十分ほど進んだ先でコボルト三匹の群れを発見しました。

 吉川ゲートのダンジョンは初心者御用達ですので魔獣との遭遇率は低いのです。そして出会ったコボルトたちですが、唸り声を上げていますが、あからさまに腰がひけてます。三十半ばのおじさんは怖くなくとも2メートルある格上魔獣は恐ろしいのでしょう。ともあれ……


「ではラキくん、やっちゃってください」

「ガッ!」


 私の掛け声と共に両手を上げながらラキくんが走り出します。するとコボルトたちが一斉に逃げ出しました。しかしラキくんが回り込んだ。コボルトたちは逃げられない。ラキくんの攻撃。コボルトAが死んだ。コボルトBも死んだ。コボルトCが逃げ出した。しかしラキくんが回り込んだ。コボルトCは逃げられない。ラキくんの攻撃。コボルトCが死んだ……以上となります。

 さすがラキくん、お強いですね。後、コボルトはラキくんを見ると逃げるんですね。

 そして楽に魔石を獲れる魔石抽出器は便利です。買って良かった。




———————————




【次回予告】

 善十郎は新たなる力を得た。

 それは手段を誤れば世界をも滅ぼし得る禁忌の力。希望と絶望を分けうる終焉の箱パンドラボックス。それはただ男の知性の有無だけが封印となり得るのだと。

 そして地上に戻りし彼らが向かうは戦士を城壁とした人類の砦。そこで待ち受けるは未来の友か? 或いは敵か?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る