ルーザーズパニック2

 巨大レッサーパンダのラキくんの召喚に無事成功しました。

 そしてそれからどうしようとなったのですが、すでに午後でこのままエーテル結晶の採掘という時分でもありませんので外に出ようと思いましたが、問題はラキくんです。

 ラキくんは最初に出会った時よりも縮んでいるものの全長が2メートルはあります。なのでこのまま外に連れ出すことは難しいと思ったので召喚を一旦解除しようとしたのですが、そう考えた私の前でなんとラキくんが小さくなったのです。


「キュル」

「はい。別に重くもないですし問題ないですよラキくん」

「キュルルルー」


 大きさは通常のレッサーパンダサイズですが、その姿は幼さが伴っています。感覚でしか分かりませんが、ラキくんから伝わる意思を言語化すると魔力消費量を抑えるために幼体の姿になった……という感じでしょうか。召喚獣というのはそうした融通も利くのですね。不思議なものです。

 そしてこれなら問題ないでしょ? と首を傾げるラキくんの顔に私も頷かざるを得ませんでした。どうやらラキくんは召喚解除をされたくないようですね。自由に体を動かしたいようです。

 そんなラキくんはそのまま私の背まで登って張り付いてきました。召喚主と召喚獣の関係だからか重さはほとんどありません。

 ダンジョンを出る際にはちょっとした騒ぎになりましたが、それというのもラキくんの愛らしさのせいです。この歳で女子高生からキャーキャー言われることになるとは思ってもみませんでしたよ。

 それからゲートを出て出口で動画を提出するとAI解析でラキくんはテイム扱いとなったようで、帰りに職員の方から探索協会マーク入りの首輪と従魔乗ってますの車用シールを渡されました。首輪はダンジョン産の技術を利用したもので、フリーサイズで巨大化しても伸びるとのこと。初回は無料だそうで、二体目以降や破損した場合には購入が必要になるそうです。

 動画を解析したのなら召喚獣であることは分かったと思うのですが、特に触れられませんでした。何かしらの禁則事項が存在しているのかもしれません。基本的にこの手のAIから個人情報の流出はなく、情報が漏れる心配はないという話なのですが、こればかりは信じるしかありませんね。

 ともあれ、特に問題もなく吉川ゲートを出た私は愛車の置かれている駐車場に到着しました。おっと、従魔乗ってますのシールを貼っておかないといけませんね。

 そして私はラキくんを乗せて車を走らせ始めました。


「キュル? キュルルル!?」


 後部座席に乗っているラキくんが目まぐるしく周りを観察しています。初めて見る世界に興奮が隠せないようです。そんなラキくんを横目に、私は運転に集中しながら次の探索について考えてみます。

 まず、現在私が運べるエーテル結晶の数は約四十個ほど。

 換金額はコア内のエーテルの量によって前後しますが大体五万円くらい。ラキくんが運搬を手伝ってくれれば合わせて四倍以上は持ち運べるでしょうから、一回の探索でも頑張れば二、三十万円以上はいくはず……なのですが、私はずっとこれを続けていくつもりはありません。

 何しろ、ラキくんは最初会った時に比べて弱体化こそしてますが、あの巨体での攻撃は普通に前衛として優秀でしょうし、新たに購入したサーチドローンが使えるのは前回の探索でも証明されています。加えて私の砲撃があれば、ある程度のダンジョンでも対処は可能でしょう。最高の探索者を目指す私にとってはここで足踏みし続ける理由がないのです。

 もっとも吉川ゲート内の遺跡にあったもうひとつのパイプの先も気になりますし、ひとまずそこを調べ終えたら、もう少し儲けの多いダンジョンの物色も進める予定です。

 やりたいことが増えてくると、モチベーションも上がってきますね。




———————————




【次回予告】

 ソレから逃れることはできない。

 ソレから背を向けることはできない。

 ソレは死を与えるもの。生を奪うもの。

 そして悲しき獣の咆哮が地の底に木霊した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る