バーサスレッサーパンダ4
レッサーパンダ。中国語名で小熊貓。
元々パンダの名は彼らのものだったと聞いています。であるにも関わらず、ジャイアントパンダが登場したことで大小で分けられて、レッサー(小さな)を付けられてしまった悲劇の動物が彼らとのことです。当人たちはどうとも思ってはいないでしょうが。
昨今ではその小ささと威嚇ポーズの愛らしさから人気もうなぎのぼりなのだとか。私もかわいいとは思いますよ。ええ、その大きさがジャイアントパンダと同じどころかふた回り以上大きいのでなければ。
2メートル半はあるでしょうか。それに外見こそレッサーパンダですが、ひと目見てこれは無理だと思いました。生物としての格の違いをはっきりと感じたのです。
それに周囲の魔力結晶が食い荒らされているのは眼鏡型デバイスで確認できました。これでは収穫できるものもありません。まだ見つけていなかったマナジュエルも恐らくは全滅でしょう。
となれば、私がここにいる意味もありませんね。逃げの一択です。先日の「私だけの稼ぎどころです。しばらくは手放しません」などと口にしていたおじさんは死にました。命を大事にするおじさんだけがここにいます。
あんな怪物がそばにいるのなんて怖過ぎますし、探索協会にサクッとこのことを報告して別の場所で稼ぐことにいたしましょうか。
ハハハ、おやおや。巨大レッサーパンダがこちらに向かって威嚇ポーズを取っていますよ。おやおやおやおや。
困りました。勘弁していただけませんかね。人間というのは殺されてしまえば死んでしまう生き物です。だから命は大切で、かけがえのないものなのですよね。おや、いけません。走り出しました。逃げるにしても帰り道はパイプの一本道ですし、あの速度は到底逃げ切れません。であれば先制攻撃するしかありませんか。
「ゲートフルオープン」
私はパイプの外に飛び出して迎撃準備に入ります。より認識を鮮明にするために声を出して計九個の収納ゲートを正面に展開しました。
「ゥガッ」
「良しッ」
鈍い音がして巨大レッサーパンダが収納ゲートにぶつかって弾き飛ばされます。硬さに定評のある私の収納ゲートですが、巨大レッサーパンダのタックルを止めることもできるようです。まあ止めるだけじゃあないんですけどね。
「全解除ッ です!」
「キュァアアアッ」
可愛い声で鳴きながら倒れていきますが、戦いは非情なのです。石砲弾も、石散弾も、空気弾も、水弾も全ブッパです。さらに時間遅延効果によって動きが遅くなっている巨大レッサーパンダに対して私は接近して槍を突き刺し……おや、刺さらない。タイヤに刃物を刺したけどまったく通らないような、そんな感触です。よく見れば石散弾も空気弾もほとんどダメージが入ってなさそうです。石砲弾は利いていそうですが致命傷にほほど遠い。これは相当厳しいですね。
ともあれ今はまだ時間遅延中です。巨大レッサーパンダがノロノロと動いている間に即座に収納空間を再構築します……が、できた収納空間は八つだけでした。時間遅延付きの収納空間はまだ造れません。あ、時間遅延効果が切れました。巨大レッサーパンダの動きも元に戻ります。
さて、これからどうしましょうか。
———————————
【次回予告】
そこにあるのは檻である。
獣よ。其方より奪うべきは自由。
故に檻。檻の中こそ獣には相応しい。
そして人に仇なす獣の末路とは……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます