バーサスレッサーパンダ3

 購入したサーチドローンを一日室内で使ってみましたが、移動中の邪魔にならず、天井と壁に当たることもなく、近所の猫がベランダに近づいた際にも正常に反応したので問題なく使用できそうです。

 そんなわけで、今日もダンジョン探索のお時間です。


『それでは安全安心を旨に、素晴らしい探索者生活をお楽しみください』


 いつも通りに吉川ゲートを通って水晶窟へ入りまして、その奥にある遺跡までさっさと進んでいきます。

 今回はもう稼ぐ目処がついているので道中のエーテル結晶も、倒したコボルトの魔石も素通りして一時間ほどで遺跡に到着です。

 そして遺跡に入る前に早速サーチドローンが反応しました。一緒に購入した眼鏡型デバイスに情報が表示され、入り口上部にマナタラントが待機していることが情報として表示されます。あのまま入ったら上から飛びかかったマナタラントにガブリとやられていたかもしれません。サーチドローンを買っておいて良かったですね。

 しかし先日は遺跡にマナタラントはおりませんでしたので、やはりパイプを経由してここまで来たということでしょうか。

 ともあれ、空気弾だと倒せるか微妙な高さにいますし、まだこちらには気づいていないようですので石銃弾でサクッと処理をしまして魔石を回収して遺跡内部へと入ります。

 このマナタラントの魔石は小さな胸部内にあるので採りやすくて良いですね。体内の毒袋も売却できるらしいのですが、毒物を触るのは怖いのでそちらには手を付けていません。ちなみにその毒、農薬の材料に使うそうです。毒というのも使いようですね。

 それから広間にたどり着くまでにマナタラントを二匹、追加で仕留めました。マナタラントの魔石はひとつ2500円で換金してくれますので7500円の収入となります。

 他にも何匹かのマナタラントを広間内で確認しましたが距離がありますし、近づいてこないのでそちらは警戒するだけに留めておきます。


「ギィッ」


 パイプの中に入って待ち構えていた個体も処理。ここまでの四体分の魔石で10000円の儲けです。ウハウハです。

 魔石は加工すればエーテル結晶と同じようにエーテルを抽出できますし、機械の製造でもレア鉱石の代用になるものがあるなどと需要は高く、現代社会においては常に消費され続けているため、供給し続けても腐りません。

 これを拒否し続けた前職が時代の流れに乗れなかったのも仕方のないことだったのかもしれませんね。

 それでここから先の予定ですが、前回破壊してできたパイプの横穴から魔力結晶の生えていた場所にまた向かおうと思います。

 先日は蜘蛛の多さから撤退しましたが、今回は全滅させる勢いでやらせてもらう所存です。そのために石と小石もバックパックに大量に持ち込んでおります。石は邪魔なら捨てれば良いし、必要なら拾えば良いので扱いが楽ですね。


 そのまま先へと進んだ私ですが、道中のマナタラントはまばらという感じでした。そもそもマナタラントは魔力結晶の多い場所に生息しているので、魔力結晶のない遺跡の方へと移動する個体は少ないのでしょう。私が崩した横穴のところまでに三体倒しましたが、どれも単体でした。

 そして横穴から外に出ようとした私にサーチドローンが警告を発してきました。

 ふむ、眼鏡型デバイスにドローンカメラで捉えた映像が映し出されます。これ本当に便利ですね。買って良かった。


「キュルルル」


 妙に可愛い唸り声がここにまで届いてきていますが、パイプの外にはマナタラントの……残骸らしいものが散らばった地面と、巨大なレッサーパンダがいました。


 ふむ……レッサーパンダ? 何故?




———————————




【次回予告】

 巨躯にして小さきと謳われる名を持つ魔獣。

 矛盾を抱えたソレは善十郎を容易く屠るほどの膂力を持ちて、襲いかかる。

 迎え打つ善十郎に勝ちの目は果たしてあるのか。

 そして戦いが始まる。

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