バーサスレッサーパンダ2

 ダンジョンタウン。それは探索者のための商品を取り扱う総合ショッピングモールです。危険物も多いし、暴れられても対処しやすいように一箇所にまとめられた……という現実的な理由もあるそうですが、探索者としては一箇所で必要なものが買い揃えられるので非常に便利な施設であると言えるでしょう。

 私の探索者ビギナーズキットもここで購入したものです。色々と目移りしてしまいますが今回は購入するものが決まっています。そんなわけで寄り道はせずに目的の迷宮機巧屋というお店に入りました。


「いらっしゃいませー」


 入ってすぐ店員さんに挨拶をもらった私が足を運ぶのはサーチドローンコーナー……ではなく、一通りの冷やかしです。

 ダンジョン内で動く機械は基本的に魔力対策のためのシールド処理をしないといけないのでお高いのですが、命がかかっていますので有益なものがあれば購入したいのですよね。

 例えばこの首のない馬か牛みたいなロボットとか。ダンジョンのような段差や凹凸のある場所でも転ばずに追従してくれて、30キログラムまでの荷物が乗せられる優れものです。値段は200万円。昔は1000万円を超えてたそうなのでこれでもずいぶんとお安くはなったのでしょう。

 そこから少し進んだ先に陳列されているのは私が購入しようとしているサーチドローンのセンサーカメラだけのヴァージョンです。360度対応の複合センサーでヘルメットの上に付けて使うものなのだとか。最初はサーチドローンとどちらを買おうかと悩みましたが、重量も多少ありますし、動きが鈍りそうなので諦めました。首が疲れそうですし。

 ステータスがオールFではなく、もっとパワーがあれば違ったのでしょうけれどもね。


「お客さま、商品をお探しでしょうか?」


 そして冷やかしもそろそろというところで店員さんが声をかけてきてくれました。ちょうど良いタイミングです。


「はい。実はサーチドローンを購入したいと思っていまして。こちらのヘルメットにつけるタイプも良いのですが、距離をとって俯瞰してみてくれる方が便利かなぁと」

「そうですね。ヘルメット付きはお客さまの目線に近い範囲でしか見れませんから、ドローンの方が全体を捉えやすいものだと伺っております」

「なるほど。私は今、ソロで探索をしておりますので魔獣の接近が怖いのですよね。なので、なるべく精度の高いものが欲しいのですが」

「ソロ探索者ですか。であれば……そうですね。選択肢自体はそう多くはありませんよ。現状で性能を求めるならDQIかパラッパーのハイエンド機がお薦めになります」

「どちらも聞いたことがあるメーカーですね。予算は百万円内なのですが、問題ありませんか?」

「はい。ご予算内で十分に収まりますよ。それではこちらのカタログからご説明いたしますね」


 それから店員さんの説明に合わせて私が要望を伝えながら選び、最終的にパラッパーのリポップ2アームドという機種を購入することになりました。

 頑丈さが売りで、マナジュエルアタッチメント付きバッテリーでマナジュエル三つなら交代で使えば、メンテナンスは必要ですがバッテリー切れを起こすことなく永続利用可能とのことです。

 在庫もあるとのことですので、このまま車で持ち帰ってしまいましょう。これで次の探索の楽しみがまたひとつ増えました。早くダンジョンに向かいたいですね。




———————————




【次回予告】

 男は再び地獄に舞い戻った。

 魔は遺跡にまで辿り着き、獲物を喰らわんと善十郎を待ち構える。

 そして再び辿り着いた彼の地にて、善十郎は運命と邂逅する。それは赤き悪魔。主引き裂きし凶獣。そう、彼奴の名は……

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