クモクモバンバン3
前回のコボルト戦後、実はレベルが上がっておりました。
レベル5になったのです。そして今回も生成できる収納空間がひとつ増えたのですが、この収納空間がどうやら時間遅延の機能がついているようなのです。
時間遅延は収納スキル持ちが成長すると得られる収納空間の機能のひとつですが、どうやらランクFの収納スキルでも得られるもののようですね。ちなみに時間遅延付きの収納空間はひとつしか作れません。他の四つは通常の収納空間のようです。
もっとも残念ながらこの能力の使い道は今のところ思いつきません。生活する上ではそこそこ使えそうな気もするのですが、ダンジョンでの活用となると難しいです。とりあえずは熱々のコーヒーでも入れて魔法瓶代わりにでもしようかなとは思っていますが。
場合によっては熱々のソレを射出すれば、それなりにダメージがあるかもしれません。まあコーヒー程度では大したダメージにはならないかもしれませんが、熱した油とか溶岩とかなら効果もあるかもしれませんね。
ともあれ、今私が悩んでいるのは時間遅延機能の使い道ではなく、今後の活動をどうするかということです。
当初ランクF収納スキルにステータスオールFという公式に最弱であることを告げられた私ですので、最高の探索者を目指すどころか探索者を続けていくこと自体が無理なのでは……とも思っていたのですが、いざやってみると一度の探索で五万円は稼げることが判明いたしました。天井のエーテル結晶は基本的には採る人間も少ないのでエーテルの価値が暴落でもしない限りは収入が減ることはないでしょう。
けれども逆に考えれば、それ以上の稼ぎが難しいというのも分かりました。
問題なのは私が持ち運べる量が限られているということです。持ち運べる量が限られている以上、これ以上の儲けは厳しいのですね。
まあ一ヶ月二十日でも月100万円は稼げるわけで前職の月収は越えておりますがね。というか一日二時間で計算していますが、午前と午後の二回行くことにすれば200万円です。つまり週休二日の一日四時間労働で年間2400万円の計算です。アレ、これってもう勝ち組なのでは?
…………
……
いけません。人生アガリになるところでした。
初志貫徹。私は最高の探索者を目指すのです。
けれどこれ以上を望むなら回収素材の単価を上げるか、仲間を増やして回収効率をあげるかという話になります。
ただ仲間を集めることは私には難しそうですし、ここはひとつあの方に相談に乗ってもらおうかと思います。
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「ということなのですけれども、どうですかね沢木さん」
「いや、どうって……大貫さん、上手くいってたんですね。え、本当に?」
現在私がいるのは埼玉県の探索協会支部です。
私の目の前には私の担当である沢木さんがいます。今回、私は彼女に今後についての相談をしに来たのです。
はい。私に探索者が向いていないと言ってくれた方ですね。まあ私の表向きの情報だけを見ればその返答も当然ではあるのでそれは良いのです。
探索協会はライセンスを得た探索者に対して担当者をつけてくれて、こういう悩み相談なども請け負ってくれるのですね。
だから私にも何か良いアドバイスをいただけると嬉しいのですが。
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【次回予告】
知者は謳う。望みはすでに叶っていると。
けれども安寧の道に男は背を向け、拒絶した。男は救いなど欲していない。男が望むは修羅の道。地獄に向かう片道切符。
そして混迷の知者は男の望みに何を見出すのか。運命の扉が今、開かれる。
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