クモクモバンバン2
「それ、どうやってるんですかー?」
「スキルですねー」
「そうなんですか。いいですねー」
私がエーテル結晶を採っていると足元を何人かの探索者が通り過ぎ、また声をかけてくる人も時々いました。
現在の私は空中に固定したゲートに一本足の台を挿して座り、もうひとつの板も並べて少しずつ移動しながらエーテル結晶を一本一本丁寧に収穫しています。
具体的に言うとトングで水晶を固定して鉈で根本を折って回収している感じですね。石散弾だと割れて売れなくなったエーテル結晶が結構ありましたが、これなら綺麗に回収できます。
一時間半ですでにバックパックには四十個のエーテル結晶が入っています。一応採るエーテル結晶も選別していて、魔力の内蔵量が多そうなのを選んでますので前回よりも量・質ともに良いはずです。
とはいえ、バックパックも重くなってきたのでそろそろ帰ろうかと思うのですが……
「う、うわぁあああ」
おや、洞窟の奥から悲鳴が聞こえてきました。
あれは先ほど声をかけてきた探索者さんたちですね。全員無事のようですが、何かから逃げているようです。
どうやら上にいる私のことは気付いていない模様。さっきとは場所も変わってますしね。必死な顔をして入口の方へと走っていきました。
その後、すぐに四匹のコボルトの群れが来たのですが、そちらも私には気づいておらず、先ほどの探索者さんを追って通り過ぎようとしています。つまりはチャンスです。
このまま追っていって先ほどの探索者さんが殺されても後味は悪いですので始末してしまいましょう。
「グッ、ウォン!?」
走っているコボルトに狙いを定めるのは難しいので石散弾のシャワーを浴びせます。ナマモノにはなるべく使わないようにする。そんなことを遠い昔に言った気もしましたが、もう忘れました。距離をとって直視しなければ良いだけのことです。
うん。二体は頭が吹き飛んで死んだようですね。そして残り一体は右肩がグズグズになったもののまだ生きています。とはいえ、もう虫の息です。
私は最後の一体に水弾を撃ちましたが、どうやら仕留めるには至らず、当たったコボルトが吹き飛んで壁に激突しました。
まあ今私がいる場所は地上から20メートルくらいはありますからね。
ある程度距離を詰めないと水弾で倒し切るのは難しいということでしょう。これなら弾は石オンリーで良さそうです。
最後は石銃弾で倒しました。
そして採掘もここで終わりにしてエーテル結晶四十個とコボルトの魔石三個(一個は砕けてました)を持って本日は業務終了、結果は約五万円の成果です。
二時間程度の労働でこれなら初心者探索者としてはかなり優秀と言えるんじゃないでしょうか。
日給換算でもう前職の稼ぎを越えています。
ちなみに逃げていった探索者パーティは出口でぐったりしていましたが無事のようでした。良かったですね。
———————————
【次回予告】
己の最後を意識した時、善十郎の本能はソレを拒んだ。
力は得た。財も得た。であれば次に欲するは死と隣り合わせの生への渇望。自らの飢えを凌ぐため、善十郎は知者の元へと足を運ぶ。そこに答えがあると信じて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます