クモクモバンバン1
乗り越えました。
探索初日の翌日の朝は肉巻きおにぎり、昼は士口野屋の牛丼玉入り、夜はカルビとご飯に牛モツラーメンと段階を踏まえて肉料理に挑みましたが拒否反応もなく、無事乗り越えられたようです。お肉はとても美味しいです。私は案外探索者に向いているのかもしれません。
とはいえ、今後石散弾でナマモノを撃つのはなるべく止めておきましょう。今は四回も撃てるのですから石銃弾や空気弾で対処していきたいと思います。
また今回は水を入れた収納空間も用意しました。
魔獣を倒す際に空気弾ならあまり傷つけずに倒せるのではないか……とも思ったのですが、空気弾は接近しないと威力がかなり減衰されるのですよね。だから水を弾丸にすれば離れた距離からでも傷つきずに倒せるのではないかと考えたのです。
それとこんなものも用意してみました。直径8センチメートル以下の短い木の棒をDIYして取り付けた板をふたつです。以前自転車のサドルを収納ゲートに挿して空中に固定できていたことを思い出して作ったものです。
先日の反省を踏まえて、今回はもっとスマートにエーテル結晶を手に入る予定なのですよね。それでは二日ぶりの吉川ゲートからダンジョンに入りましょう。
『それでは安全安心を旨に、素晴らしい探索者生活をお楽しみください』
入りました。
今回は一昨日よりは入り口に近い場所での採掘と致しましょう。前回は不意をつかれて接近を許してしまいました。集中力を切らすのはとても怖いことです。私はソロですし、不意を突かれぬように対策をしないといけません。
その一番の手段は仲間を作ることなのですが、パーティマッチングアプリで募集をしても担当の方から言われた通り、私のステータスとスキルではまともな方とマッチングすることはないでしょう。収納の砲撃も説明が難しいですし、何より年齢がネックです。低レベル帯の探索者は基本若者なのです。齢三十を越えた中年なんて誰も選んではくれません。
エーテルで動くサーチドローンなんてのもありますがアレも一台最低50万円はします。ダンジョン内で機械の類を使う場合には特殊な処理が必要なのでその分値段も上がるのです。お金で解決できるのであればこのサーチドローンという選択はありですし、視野に入れてもいますが、今すぐに手は出ません。
そのほかにはテイムという手段もありますね。魔獣を手懐けるて仲間にするのです。スキルと紐付けされるものらしく、スキルをひとつ持っている私は理論上魔獣を一体テイムできるはずです。ランクFだからどの程度の魔獣がテイムできるのかは分かりませんけどね。
ともあれ、今は皮算用をしている場合ではなく、収穫の時です。
ひとまず奥へ奥へと進んでいくと、ある程度開けていて、天井付近にエーテル結晶がいくつも生えているエリアに辿り着きました。
このエーテル結晶というのはそこそこの頻度で発生するので、水晶窟内を数時間探索していればひとり五、六個は手に入るそうです。
とはいえ手の届かないような天井に生えてるものまでは普通の探索者では対応できないので綺麗に残されています。私の狙いはそういう誰も採れない高いところにあるエーテル結晶です。前回は石散弾で落としましたが欠けて中身がこぼれていたものも多かったですし、音でコボルトを呼び寄せてもいたようなので、今回は直接登って手に入れてみようと思います。
つまりは収納ゲートを足がかりに天井付近まで登って、収納ゲートを空中に固定した後、持ってきた足つき板を挿してそこに座り、エーテル結晶を抜いて収穫していく……という感じですね。
どうです? こうすれば私のようなおじさんでも楽々取れるんですよ。
ね、簡単でしょ?
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【次回予告】
男にとって地獄とはもはや平和と同義になった。己が糧とすべく、善十郎は殺意すらないままに命を刈り取る。それが今の彼の日常なのだと知らしめるかのように。
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