コボルトミンチ8

 ミンチはね。キツいですね。臭いも酷い。

 コボルトから手に入る唯一の収入源である、魔獣のコア『魔石』も粉々です。これでは殺し損です。私の胃袋の中身も出てしまったのでむしろマイナスと言えるのかもしれません。

 今日のランチはすべて酸っぱいモンジャになってダンジョンのご飯に変わりました。

 ノーミンチ。ノーミート。次はもっと綺麗に殺せるように頑張りましょう。

 その後、帰りにも二体の群れと三体の群れに襲われましたが、その際は石散弾は止めて、中くらいの石を入れた石銃弾(私命名です)で撃ったら体に穴が開く程度に留まったので、まあこれぐらいならって感じで仕留められました。最初がスプラッタ過ぎただけで耐性がつけばとなんとかなりそうです。

 ちなみにレベルはさらにふたつ上がりまして今4となり、収納空間も四つ作れるようになりました。このままレベルと共に作れる数が増えていく感じなのでしょうか。

 そしてゲートの外に出ると最初に説教をいただきました職員の方に出くわしました。

 危険なのでもうやらないようにと改めて言われました。最悪、外のガトリングガンがスタンピードやテロと勘違いして撃ってくることもあるそうです。なるほど。私がミンチになる未来もあったということですか。怖いですね。

 あ、それでも収納ゲートを盾にして防げれば死なないかもしれません。試してみたくはありますが、多分試したら逮捕でしょう。探索者の犯罪は覚醒施術を受けていない一般人のものよりも厳しく取り締まられますので注意しないといけません。探索者という名の改造人間である私は、もはや一種の兵器のようなものなのですから。

 それでは続けて換金のお時間です。

 ゲートのある門を出て出口方面の通路を抜けて行きますと、そこそこ広い個室に案内されました。

 そこには査定台と呼ばれる装置がありまして、ダンジョン内で手に入れたものを乗せると機械がスキャンして素材を判定し、査定AIが換金額を算出してくれるのです。

 ユニシロの自動レジみたいなものでしょうか。技術の進歩は恐ろしいですね。

 またシーカーデバイスの情報も同時にアップロードされます。映像などを含む記録された情報を高速でAIが判定して査定の判断や違法行為がないかの確認も行うとのこと。ダンジョン内の犯罪が少ない理由のひとつですね。言い争いがあってもAIがジャッジしますし、文章に起こして裁判の資料として利用することもできるのだそうですよ。

 そして今回私が手に入れたのは二十のエーテル結晶とコボルトの魔石五つです。

 コボルトから取れる素材はコアである魔石だけです。コボルトなんだから言い伝えの通りにコバルトとかドロップしてくれれば……なんて思ってしまいますが、魔獣の名前は発見者がつけているだけで、伝承などの存在とは全く関係ないのだとか。


『査定完了しました。大貫様からお預かりした品の換金額ですが、エーテル結晶内のエーテル総量で18700円、魔石はおひとつ1500円ですので、合計で26200円のお渡しとなります。こちらでよろしいでしょうか?』


 これが三時間程度の労働で得たものと考えるならば、かなりよろしいのではないでしょうか。


「問題ありませんので、振り込みでお願いします」


 ふふふ、最初の探索で二万円半も稼いでしまいました。

 帰りに焼き肉でも……は、止めておきましょうか。肉は今日の記憶が薄まってから食べることといたしましょう。

 ともあれ、ひとまずは探索者として生計を立てていく目処はついた気がしますね。ただ魔獣と戦うのは精神的に疲れます。生き物を殺すっていうのはその後の処理も含めて想像以上にキツいです。

 しかし、ここをクリアできないと探索者を続けていけないのも事実。であれば乗り越えてみせましょう。

 私は最高の探索者となるのです。こんなところで止まってはいられません。




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【次回予告】

 地獄から帰還した男は、試練を乗り越え、肉を喰らう。

 そして悲劇は繰り返さぬと誓った男には、とある秘策が存在していた。

 人と獣を分けるのが知性の有無であるというのであれば、大貫善十郎はまごうことなき人であった。否、人の皮を被った修羅であろう。つまりは新たな地獄の幕開けである。

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