コボルトミンチ7
レベルが上がったことを知らせる音はシーカーデバイスから響いてきました。
このレベルが上がるというのは、そのままの意味ですね。ゲームのように魔獣を倒して一定以上の経験値を得ると探索者はレベルが上がります。
最初の頃はリソースを吸収し、階位を上げる……と言っていたらしいのですが、ゲーム的な言い方の方が受け入れやすいだろうということで現在では経験値とレベルアップと呼ばれるようになったとのこと。分かりやすいというのは大切ですね。
ちなみに魔獣を倒した際に発生する経験値と呼ばれる謎のエネルギーは覚醒施術で首裏に埋め込んだエクステンドプレートというものに吸収されています。
このエクステンドプレートと呼ばれるものこそが探索者を探索者たらしめているもので、異世界の技術を参考にした人工的な魔力制御器官なのだそうです。
これを埋め込むことで探索者は超人的な力を得られます。もっともオールFステータスの私の身体能力はレベルが上がってもほとんど変化はありませんが、私のスキルはどうやら成長できたようです。
もっともランクFは据え置きです。入り口が直径8センチメートルなのも変わらずで、収納容量も500ミリリットルとまったく変化なし。収納空間には中に入れたものがなんなのかが分かる軽い鑑定機能も備わっていますが、これは収納スキルの基本機能でして特にパワーアップした様子もありません。
では何が成長したのかといえばですね。
ホイ、ホイッと。
どうです? このようにレベルが上がったことで私は収納ゲートがふたつ、つまりは収納空間をふたつ造れるようになったようです。
これは容量が増えない代わりに数で勝負ということでしょうか。収納スキルとしてはハズレでも、砲身がふたつになって戦力アップというのはとても素晴らしいことだと思います。
「ァオォオオオン」
私がレベルアップの感動に浸っていると奥の方から咆哮が聞こえてきました。石散弾での乱獲は音が響きますから、魔獣を近づけやすいのかもしれませんね。
そして警戒する私の視界に入ってきたのはコボルト三匹です。先ほどミンチになったコボルトのお仲間でしょうか。
「グルルル」
コボルトは初心者殺しとも言われる、ある種悪名高い魔獣です。
それほど強くはないのですが、人間に近い姿をしているので、初心者の探索者が殺したことにトラウマを抱えてリタイアするケースが後を絶たないのだとか。
「グルッ」「ウォンッ」「フッフッ」
彼らは私を獲物と定めたのか、あっという間に近づいてきましたが、途中で足を止めました。ああ、地面に転がっている元お仲間のミンチを見てしまったのですね。それは警戒もしますか。
一応彼らは探索者ではない一般人でも倒せる程度の強さとは言われていますが、それでも私が生身で戦ったら一対一でも負ける自信があります。これまでの35年の安穏とした日々を送ってきた私の弱さを私は過信してはおりません。
ただ私もね。考えなしでここまで来たわけではないのです。彼ら相手ならば空気弾があれば対処は可能だろうという見込みがあってやってきたのです。さらに言えば、今の私はもっと効果的な攻撃手段をも手に入れたのです。
彼らが様子を見ている間にこうして冷静にじゃららららーと小石を収納空間に詰めまして、ジリジリと距離を詰めてくるコボルトを引きつけて、引きつけて……
「ァオーーーン」
近づいたところを石散弾でハイ、ドーン!
ね? 簡単で……
グチャ、グチャ、グチャリ
オエーーーーーーーー!!
———————————
【次回予告】
異界の地での戦いを経て、男は帰還を果たした。
この探索で彼が得たのは如何なるものか。
その答えは大貫善十郎、彼の笑みの中にのみ存在する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます