コボルトミンチ6
それなりに長く生きていると、昔は気づけなかったことに気付けたりすることもあります。今回はそんな気付きを得られました。それは大人とは子供の頃より案外怒られることが多いということです。
先日は大家さんにもガッツリ叱られましたし、今回もそうです。しかも100パーセント悪いのは私ですので反論の余地がありません。
ハァ……ため息が出てきました。
ともあれ、気を取り直していきましょう。
探索協会の職員さんの言う通り、アレで洞窟が崩落して誰かが埋まって死んだり、自分が埋まって死んだりしては大変ですし、お叱りを受けた程度で済んで良かったと思いましょう。ということで石砲弾(私命名)での乱獲は諦めることにしました。
でもね。私思うんですよ。アイディア自体は悪くなかったのではないかと。つまりもう少し工夫すれば……ということですね。
先ほどの問題は威力が大き過ぎたということです。あの場がダンジョンの入り口ということを踏まえずとも、崩落するような攻撃はNGでしょう。ましてや私のステータスは最弱。埋まったら死んでしまいます。
だからひと手間加えることを思いつきました。
要するに崩落するくらいの威力なのが不味いのですから、威力を抑えれば良いというわけです。
では、どうすれば良いのか。その答えは先ほどのように収納ゲートへと入るギリギリのサイズではなく、もっと小さな小石を入れることです。
そこらに転がってるつまめるぐらいの小石をポイポイっと収納空間に入れて、それを射出すると……
ジャガガガガガガッ
おお、上手くいきました。
飛び出た無数の石飛礫がまるで散弾銃の弾のように散らばって天井の結晶をバラバラと落としていきます。エーテル結晶もちゃんと落ちてますね。うんうん。良い感じです。
ここは入り口からそこそこ距離が離れていますし、人もいないので迷惑にもなりません。崩落についても見た感じは大丈夫そうです。まあ距離も多少とっていますし、少し崩れても問題はないでしょう。
ふふふ、これは私の時代が来たかもしれませんね。予備の石飛礫も袋に詰めて持ってますし、では収納空間にジャラジャラジャラと……
「グギャァアアアア」
「へっ? うわぁあああああああ」
グチャッ
あ、弾込めてる途中で近づいてきた何かを撃ってしまいました。
え? ええ? 今のって人の形してませんでしたか? もしかして人を撃ってしまいましたか? これは大変です。そしてもう手遅れです。目の前には血と肉片まみれのミンチのグチョグチョなものが、ああ、これは……
オエーーーーーーーー!
………………
…………
……
はい。気持ちが落ち着くのに時間がかかりましたが私は大丈夫です。
そして近づいてきた人影は人型の魔獣でした。人間じゃありませんでした。良かったです。
頭部の一部が残っておりまして、どう見てもそれは人間よりも犬っぽい形をしておりまして、多分これはコボルトという魔獣です。二本足で移動して、個体によっては道具を使って襲ってくる犬に似た魔獣の一種です。
ということでセーフですね。危ないところでした。
コボルトは完全にミンチになっておりまして、とてもとてもグロいです。まともに見ることは困難なほどにグロテスクです。
一応探索者の免許を取る時にビデオ講習で人間と魔獣の酷い状態の映像も見せられたのですけれども、実物はやはり違いますね。
ただ魔獣を倒してお金を得るには解体もこなす必要がありますし、いずれは慣れなくてはいけないのでしょうが、今の私にとってはともかくキツいですね。見た目だけではなく、やっぱり臭いの問題も大きいのですよ。
ピロリン
あ、レベルが上がりました。
魔獣を倒すと経験値が入ってレベルが上がるのが探索者というものですが、なるほど。こういう風に教えてくれるのですね。
———————————
【次回予告】
地獄を見た男は新たなる牙を得て、さらなる地獄を生み出していく。
そして彼は知るのだ。ここは人の律の及ばぬ遠き世界。命はただ軽く、善十郎は自身の力に恐怖し、更なる嘆きをこの地に吐き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます