第7話 真名の暖かさ、そして制裁開始
「実はね…、4ヶ月くらい前に、私の母親の自宅を探している時に、火事があったからつい興味本位で撮った動画なんですが…」
刈谷さんは動画を再生すると…。
『洋一の母さんが悪い!俺ら何も悪くねーだろ!』
『あんたの息子が百合ちゃんにストーカーしてるって言ってあげただけだぜ!?』
『でもこれ、やりすぎじゃない!?』
そこには、僕を虐めていたあの4人と百合のような4人が映り、声もハッキリ聞こえる。
「…っつ!!」
『あんたが洋一の母親を突き飛ばすからでしょ?!というかぶっ飛びすぎだっつーの。私でもあんなに吹っ飛ばないよ?』
『でもさ?あんたの息子が百合をストーカーしてるって言ったらヒステリックになるか?!誰でも腕を捕まれたら振りほどきたくなるだろ!?それに唐揚げなんて作ってるなんて分からねーだろ!!』
『話する時くらい、油の火くらい消せってな!!マジそういうトコ、洋一そっくりじゃん』
『良いから、とりあえずやばいって!!早く逃げないと疑われる!私まで疑われる!私は小さい頃から知ってるんだから!!』
そして、5人はその場所から逃げるように走って居なくなり、刈谷さんの映した動画から完全に居なくなった所で映像が終わった…。
「なん…だよ…。これ…」
「やっぱりこの家は、新堂さんの自宅でしたか…。つい一昨日、警察にこの動画を見せようか迷って再確認の為に確認したら新堂さんの名前が入っていたから…。もしかするとって思って、この動画を見てもらいました」
段々、押さえていた怒りが沸き上がるような感覚だ。唯一の安心できた場所の家を燃やし、母さんを殺した奴ら…。
「うん…。やっぱりあいつらだったんだ…」
「知っている人達なんですか?」
僕は、真名に包み隠さず全てを話した。虐められていた事。彼女を虐めをしてくるヤツに寝取られた事。何故か彼女は俺をストーカーだと思い突き放し虐めしたやつの事を好きになっている事。学校中でストーカー扱いされている事…。そして虐めしてきたヤツにもう虐めされない為に、とある人に特訓してもらった事を全てを話した。
「ひどい…、凄く酷くないですか?!」
「ごめん…。頭がグラグラしてやばいかも…。考えたくなかったけど…。母さんはアイツらに殺されたも同然だから…」
「警察に通報した方が…。証拠もありますし…。」
「いや…。今はまだいいよ。それは最後の手段にしたい…。」
僕は、警察にはまだ通報するつもりはない…。アイツらを…、この手で…。僕は決めた。そして、そんな怒りや憎しみの感情とは対照的に、この4ヶ月くらいの間、ずっと耐えていたけど、今日の刈谷さんに見せてもらった動画を見ると…今まで我慢してきたけど、まるで、糸に重りをぶら下げ頑張って切れないようにしていたけど、糸がプツっと切れたように目から大量の涙が零れ落ちてきた…。そのままふと気を失ってしまう僕だった…。
美味しかった唐揚げ…。母さんと二人っきりで幸せに暮らしてきた日々。色々思いだしながら楽しく過ごす夢を見ている。
………。
……。
…。
どれくらい寝ていたか分からない。体に当たるひんやりとした風の冷たさで僕は目を覚ます。どうやらベンチで寝てしまっていたようだ…。僕の頭を支えてくれている物がある…。僕は、ふと上を見上げると、刈谷さんが静かに寝ていた。どうやら、僕は刈谷さんに膝枕をしてもらいながら寝てたみたいだった。僕は体を起こす。
「刈谷さん?刈谷さん?」
「んっ…んんっ…?」
「ごめん。刈谷さん。僕が寝てしまったせいで…」
刈谷さんはゆっくり微笑んでくれる。
「大丈夫ですよ!さっき助けてくれたお礼です。それに家に帰ったって本当の家族じゃないですから…」
しばらくベンチでお互いの話をした。刈谷さんは、産まれて間もない頃にじつの母親が施設に入れたみたいだ。生活できないからだったらしい。実の父親は行方不明。養父母と刈谷さんは上手くやれているらしいが、やっぱり本当の母親に会いたいからという理由で、内緒で施設の人から本当の母親の場所を聞いたという事だった。実母がこの地域にいるという情報を聞いて今に至るらしい。
「じゃあ、新堂さんのお父さんも行方不明なんだ?」
「僕が2歳の頃に居なくなったって聞いた。母さんは父さんより5歳くらい年上で、18歳の学生だったって言ってた。」
「へっ!?新堂さんってお父さんが16歳の時の子供?!ひぇえええ…」
「でも、父さんの事をよく知らないんだ。ほとんど居なかったから。たまに帰ってくるくらい。父さんが行方不明になってからこの地域に来たらしいよ」
「新堂さん?今度、一緒に遊ぼ?似た者同士で親近感沸いちゃいました!!それに私、この地域に引っ越してきたばかりで、友達もいないし…。それに、新堂さん…、格好良かった!是非、お願いしますっ!」
「僕なんかでいいの?!それなら喜んでっ!」
そんな会話をして、お互い手をふりながら帰路を歩く…。刈谷さんは僕を見ながら手を振る姿が見えた。曲がり角を曲がるまで何度も何度も…。
………。
……。
…。
そして、次の日…。
僕は、学校に来ている。皆が、僕を見ている。久々に来た僕を物珍しそうに見ていた。ストーカーだのありもしない噂も流れた事もあったが、今はどうでも良い。百合も驚いた顔を見せるが、その顔を今すぐにでも殴りまくってやりたいところだ。
「久々だね。新堂君。母親の件は聞いているから安心していい。具合悪くなったらすぐに言いなさい。それじゃあ、HRはじめるぞー。いきなりだけど、今日は校長先生の親戚がこのクラスに転校してくる事になったんだ。」
このタイミングで転校生というのも凄い。
「入ってきてくれ、朝倉くん」
「へっ?」
クラスに入ってきたのは、クラスで一人だけ浮いたような髪型をしている龍哉さんだった。しかも普通にうちの制服着てるし。
「朝倉龍哉っつーんだ。宜しくな」
「龍哉さん!?」
僕は名前を呼ぶと、龍哉さんは軽く首をふる。
「俺の席はあそこか?」
僕の斜め前に一つ、席が空いている場所がある。龍哉さんが来ると分かっていて、作ったんだろうか?龍哉さんは、そのまま僕の斜め前に座る。
「宜しくな!」
と周りの人に気さくに挨拶をしている。そして最後は僕の方を向き…。
「これから宜しくな!」
と…。
…………。
………。
…。
この日、4ヶ月ぶりにアイツらに呼び出された。前の時みたいな恐怖が不思議とない。むしろ待ってたかのようにどうやっていたぶってやろうか楽しみで仕方なかった。さて、あの殺人犯どもにどうやって制裁してやろうか?
僕は呼び出されたいつもの場所に来ている。勝、ハゲ、松葉杖を突いている金髪、リナ、そして百合がいる。
ハゲが僕の頭の髪を鷲掴みしてくる。
「よく、のこのことやってこれたね!?すげ~タフじゃん?!」
「逃げなかったの?!もう逃げたと思ったのにw いいんだけどさ?楽しみ増えるから!」
うん。あの時の恐怖心が全くない。
「ねぇ?なんか言えば!?ほんっとキモいわ!アニメオタクみたいで!チー牛みたい!きゃははは」
「うるさいよ」
よしそろそろだな。僕の髪を鷲掴みしているハゲの中指を真逆の方へ曲げて骨を折る。ポキッといい音が聞こえたと同時に。
「ぎゃああああっ!」
直ぐ様、ハゲの頭部を手の平で掴み、そのままそのハゲ頭を勢いをこめ外壁のサイディング叩きつける。ハゲの歯が数本折れている。
「は、歯ふぁああああ!歯ふぁあ!おへはぁああ!」
そして倒れて口を開けっ放しのハゲの口に、地面にあった石を突っ込み、またブロックに叩き付ける。今度は鼻が折れたのと、額から血がどばどば大量に流れ出す。
「きたねー血を流してんなよ。地球が可哀想だろ?」
その様子を見て動けないでいる4人は微動だにせず、驚き立ちすくんでいた…。
「次はお前ね?」
僕はリカに指を指した。コイツはオタクをチー牛とバカにしたクズだ。どうやって制裁してやろうかな?
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