第4話 焼けた家


 ~洋一視点~


 「母さん、ごめんなさい…」


 あれから、家に戻り母親にお金を落としてしまったと嘘をついた。少し怒られたけど、虐められていると母親に分かってしまったら体調を悪化させたくなかったから良かった。


 (何も、やる気が起きない…)


 それから、部屋に戻りベッドに転がると自然と何も考えていなくても涙が出てくる。


 (何でなんだよ…。どうしてアイツらは、そこまでして僕の幸せを壊すんだよ…)


 あのRINEで送られてきた動画が嘘であってほしいと。ただただ、それだけを祈るばかりだ。それから気が付いたら、考えたくもないのに、動画の百合が話ている言葉を思い出してしまう。スマホを枕元に置いて目を瞑ると徐々に睡魔に襲われていき、暫くしたら僕は、寝てしまっていた…。



………。

……。

…。



 朝になり、いつものように起きる僕。でも体がいつも以上に気だるさを感じる。多分、昨日のせいだろう。今も、あの動画が合成か何かであってほしいと、願うばかりだった。そんな思いも束の間で、学校に行けば、いとも簡単に崩されてしまう。


 「おはよう!勝くんっ!昨日は激しかった~!」


 「おっはよー!百合ちゃん!また今日もいっぱいやろうねー!」


 「百合~、おは~!アンタ、つい最近エッチ覚えたばかりなのに凄いねー!今度は私も混ぜてね?」



 勝とリカは、僕の教室に入るなり、そんな会話を大きな声でわざとらしく僕に聞こえるように言ってくる。やっぱり、あの動画は嘘ではなかったみたいだ。それから、あまり考えないようにしながらも早く時間が過ぎて帰る事ばかり意識していた…。


 5時間目に入る頃、僕はポケットにいれてあるスマホからバイブがなって着信がある事に気付く。スマホをポケットから取り出し画面を見ると着信は百合からだった。


 (百合からだ。どうしよう…)

考えたくないし出ようと思わなかったけど、少しの希望が僅かにあったため、親指を震わせながらもそっと着信応答ボタンを親指で押しながら左から右へスワップさせる。


 『もしもし?洋一くん?』


 「百合…」


 『昨日は、あんな動画送ってごめんなさい…、今日はバレるの嫌だから、簡単に言うね?』


 「えっ?」


 『私、勝に犯されたんだ。それから動画を撮られたせいで毎日のように体を求めてくるようになったの…』


 「警察にいこうよ!!僕が助けてあげる!」


 『警察はやめて!!警察だけにバレたくない…。動画を見られたくない…。詳しい話は明日するからっ!明日ね?私、休むつもりだから。どこかでちゃんと話をして謝りたいな…』


 百合の電話から聞こえる声が何処と無く悲しんでいるように聞こえた。


 「うん!!僕が必ず助ける!!だから安心してっ!!」


 『うん!あっ!ごめんっ!勝が来るから電話を切るね』


 良かった…。百合はそういう事だったのか!本当に良かった。僕は、少しほっとして胸をなでおろす。僕が彼女を助けるんだ。少しだけ心の靄が晴れた気がした。彼女は裏切った訳じゃなかったからだ…。そして、その夜、百合から一通のRINEが届いた。


 『明日の16時に、ここの場所で話そう』


 その場所の位置情報が届いていたから、確認すると学校から近場の潰れたスーパーの場所だった。



…………。

……。

…。




 次の日の15時30分頃、学校から帰った僕は私服に着替えて百合に言われた場所へ向かう為の支度を整える。玄関先で、体調の悪い母親がまた優しく見送ってくれる。


 「遊んでくるの?気を付けていってらっしゃい…。けほっ!けほっ!ごほっ!」


 「うん!母さん、無理してないで寝ていてね?じゃあ行ってきます!」


 優しい母親に見送られながら玄関ドアを開けて、百合から来た指定された場所へと自転車に乗り急いで向かう…。



………。

……。

…。



 着いた場所は、1年前に廃業したスーパーで、今もまだ、潰されないで放置されている。スーパーの裏には大きな無人の工場の建物が並んでいる。ここなら勝にバレなくてすみそうだ。


 (百合、もう来ているのかな?)


 指定された時間の5分前だったけど、僕は百合にRINEを送った。


 『着いたよ!』


 送信してから、2分くらい経過して…。


 『今、スーパーの裏。早く来て』


 と返事が来た。僕は駆け足でスーパーの裏に行くと、百合は一人、制服姿で立っていた。


 「待ってた?」


 「大丈夫」


 どことなく返事が素っ気ない。勝に嫌な事をずっとされてきたのだから無理もないか…。


 「僕で良いなら助けになるし話も聞く!」


 「うん。大丈夫だよ…」


 百合は、目に涙を浮かばせながら僕に近づき、僕の胸の中でうずめる…。暫く百合を抱き締めていると、時折、鳴き声みたいに「ふっ…ふふ…」と声が出ている。


 「もう、大丈夫だから。僕が守るから」


 そう言うと、百合は僕の体がから離れる…。目には沢山の涙が浮かんで目が赤く晴れていた。


 「うん。もう大丈夫」


 百合が大丈夫と言ってからすぐの事。百合は突然…。


 「いや…、だいじょ…うぶでない!」


 さっきまで泣いていた百合の顔がどんどん笑顔になりはじめ…。


 「まじで大丈夫じゃない!あははははっ!」


 「えっ?どうしたの?」


 「いや!超うけるんだもん!!大丈夫?だって!!やばい!笑いこらえるの無理っ!」


 何が起こっているか、さっぱりわからない…。頭が…視界が、ぐるぐると回り始る。


 「あははははっ!やば!!本当に超笑える!勝の言った通り!」


 百合の言葉の後に、直ぐ…。


 「だろ?受けるだろ?こいつ笑えるんだよ!」


 「えっ…、何で…勝が…?」


 「いや、洋一、面白いよ!まさか騙されてくるなんて!」


 嘘だ!!まさか、僕を騙すためにあんな小細工したっていうのか!?なんで百合まで僕を?!


 「嘘…だよね?百合…?嫌がらせされているんだよね?」


 「嫌がらせなんてされてないし、アレは嘘。洋一は騙されてここに来たんだよ」


 「えっ?どうして!僕が守るって言ったよね!」


 僕は百合に近づこうとして手を伸ばす。


 「汚い手でふれないで!」


 「ほら!百合ちゃん嫌がってるだろ!」


 勝は、そう言うと僕の胸ぐらを掴み、投げ飛ばす。僕はそのまま工場のコンクリートの壁に体を強く打ち付ける。そして、勝が近づいてくるなり、僕の腹や足を何度も何度も蹴りつける。


 「いや、勝本当にかっこいい!」


 「な、なんでっ!?」


 「自分の胸に手を当てて聞いてみたら?勝が助けてくれたし、それにこの欲しかった指輪も買ってくれたんだよ!」


 百合が右手の薬指に身につけている指輪を見せびらかしてくる。その指輪は僕があの公園で遊んだ日にプレゼントしようと思っていた指輪だった。


 「そ、その指輪は僕の!?勝っ!!お前ってやつは!」


 「何言ってるの?勝と二人で買いに行った指輪だよ!」


 百合はそういうと、勝にそっと顔を近づけて勝の口に百合は舌先を入れてディープキスをやり始める。


 「んっ… ちゅ…」


 「んふぉい、ふぉい… いいのか?洋一の前で…」


 「いいの…、こんなストーカーなんて…」


 やがて、二人の吐息がだんだん荒くなってくると、勝は百合のスカートの中に手を入れ、下着の中に指を入れはじめる…。


 「はぁ… はぁ… 我慢できねぇ」


 勝は百合を押し倒すと、無理やり百合の下着を脱がし始めて…。


 「もうこんなに濡らしやがって…」


 「いいよ?来て?」


 百合は正常位の格好で、勝の方に両手を回し、両足を腰に回すと…。


 「や、やめろ…!」


 僕の声を無視して二人は激しく絡み始める…。二人の吐息と、百合の喘ぎ声が工場に響き渡る。


 「んっ… あっ!ひゃうっ! くぅん… いやぁ…」


 「ほらほら… はぁ… はぁ… 洋一くんにもっと聞かせてやれよ…」


 「あぅっ! ひゃあっ! ああっ!!」


 勝の腰の動きがだんだん激しくなる。百合も腰を使い前後に動き始める。僕はお腹を蹴られたせいで、この場から離れたくても動けないでいた…。


 「イクぞ!?百合!イクぞ!?」


 「うんっ! あっ! きて!きて!一緒にイこ!?」


 「ホラ!百合!イクぞっ!イケっ!!」


 「ぅわああああっ!っつつ!くぅん!!い、イクっ!!」


 二人は同時にイったみたいだ…。その光景は見たくなかった。目を瞑ろうとしたけど…。


 「ははっ!洋一くぅん?誰が目を瞑れっていった?」


 勝は僕に近づき、瞑っている目を無理やりあけさせる。目の前には百合の股が見えていて、白いある物がタラタラとこぼれると同時にクジラが塩をふくみたいにブシャーと大量の水が吹き出す。その水が勝の出した白い液体とともに僕の顔面に付着した。


 「良かったな!大好きな女の子に水をかけてもらって!」


 「勝…、はぁ… はぁ… 私、立てない…。起こして?」


 「ほら、立てよ!もう一仕事あるだろ?」


 勝は、そんな事を言うと百合の言葉を聞くとティッシュを使い股に着いた液体を拭き取ると、僕の顔面にぶつけてきた。僕は意識朦朧としてそのままゆっくり気を失ってしまった…。




………。

……。

…。



 

 気が付けば、既に夕方7時をまわっていた。僕はフラフラになりながら、自転車をこいで自宅へと帰る。そんな帰り道…。何台もの消防車が僕の後ろから、険しいサイレンを鳴らしながら僕を追い抜かしていく。どこかで火事でもあったのだろうか…?しかし、サイレンの音は途中で止まった。僕は嫌な予感がして、フラフラになりながらも急いで帰り道を駆けていく。


 そして、その嫌な予感は的中した…。僕の家の屋根から黒い煙がもくもくと大きく空に伸びていく。周りにいた野次馬の人達が騒然となって、その火事現場、僕の家が燃えているのを、ただじっとして見つめていた…。


 

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