第3話 寝取られた彼女
~洋一視点~
今日は、休みのため目覚ましはかけないで寝ていた、慌てて起きると、朝の9時を過ぎていた。寝ぼけたままの格好で部屋から出て、階段を降りて居間に向かう。母親の姿は無く、まだ回復していないみたいだった。母親の部屋に入ると…。
「あー…、おはよう…」
「うん。おはよう。風邪大丈夫?」
僕は、水を持っていく。
「ありがとう…。けほっ!けほっ!」
「ううん。早く良くなってね?」
僕は部屋から出て、お粥を作る。ご飯は昨日の米がまだあったから、それを鍋に移し変えて塩を少し入れてお湯と一緒にことことと煮る。できあがったお粥に梅干しを一つ添えて、薬と一緒に母親の部屋に持っていく。
「洋一…。ありがとうね…。それとお願いがあるのだけど…」
それから、母親に頼まれた物をスーパーに買いに行くため、家を出る事にした…。玄関まで来ると母親が部屋から出てきて、僕を咳をしながらも優しい母親が見送ってくれた…。
………。
……。
…。
優しい母親に見送られるのを思い出しながら、買い物に向かう最中の事だった。後ろから、僕を誰かが呼ぶ声…。あの不快な声だ。一瞬にして幸せを壊されたような、そんな感覚だ。
「洋一く~ん?今日は休みでどこ行くのかな~?」
「…」
僕は、その不快な声の持ち主、勝の声を無視する。だけど、それが彼を苛立せてしまったのか、彼は僕の前に回り込むと。
「シカトしてるんじゃねえよ」
勝と金髪と二人でマンションとマンションの細い通路の裏道に連れてかれる。
「今日はちゃんと金持ってるのな!」
「どれどれ~?」
僕のポケットから財布を取り出され、勝は財布の中を見ようとしている。無理やり開けるものだから、財布の蓋の部分が少し破ける。
「やめてくれっ!母さんが病気なんだよっ!」
「そんなもん知るかよ!!おっ、コイツ2万も入ってるぞ!」
「これで、欲しかったラップアーティストのCD買えるぜ!」
「おい!俺がリナとあの女とホテルに行く金だぞっ!」
「本当にやめてくれっ…!母さんに栄養あるご飯をかってあげなきゃ…」
最後まで、言葉を言う前に、金髪が僕の腹をめがけて足で蹴り飛ばしてくる。
「げはっっ!!か、返せよっ!やめろよ!!本当にやめてくれっ!!」
「しつこいっつーの!邪魔なんだよっ!」
今度は勝が、僕の頭を平手打ちで思いっきり叩いてきた…。不意を突かれたのもあり、衝撃でそのまま奥の方へと吹き飛ばされてしまう…?
「がはっ!!」
それから暫くの間、僕は少し頭を打った衝撃で気を失ってしまっているみたいだ…。
「さようなら~、弱虫く~ん」
………。
……。
…。
僕が気付いたのは、多分…、家を出て3時間くらいだった。まだ頭がボーッとしたままだ…。ゆっくり立ち上がり、少し汚れてしまった服を手で軽くぱんぱんと叩いて汚れを落とす…。
(どうしよう…。あれ、母さんの生活保護のお金…)
ふと、横を見ると、自分が倒れている間に誰かが置いたであろう水の入った新しい500mlのペットボトルと紙の切れ端が置いてあった…。
「誰からだろう…?」
紙の切れ端は何かのメモ用紙を破ったようなもので、文字が書いてある。走り書きのような文字だが、その文字は丸みを帯びていて明らかに女性が書いたような文章でこう書かれていた。
『叫び声が聞こえたから、隠れて見ていました。助け呼びに行こうとしたら、既にいなくなっていたのでごめんなさい。代わりに、水を置いておきます。さっき自分が飲もうとして買った水です』
…と、紙に書かれていた。僕は、水を手に取り、細い路地からを出て道路に戻る。母親には、なんて説明しようか?今、病気だからあまり心配かけるような事は言いたくない…。そんな時だった。
「ん…、目覚めましたか!?」
一人の少女が声を書けてきた。見た所、僕らの年代より少し幼く見える、とても可愛らしい美少女だった。
「良かったり紙に書いたんですけど…」
「君が置いてくれたんだね…」
「ん…、良かったです…」
彼女は、無表情に見えるけど、若干口元が上に上がっているのを見れば喜んでくれているかのように見えた。
「警察とか呼びに以降としましたが、もう誰も居なかったし、病院もどこがいいか分からなくて目覚めるの待ってました…」
「いや、大丈夫…。よくある事だから…」
「そうですか…」
「とりあえず…。ありがとう…」
僕は、少女に挨拶をして離れようとすると…。
「あなたは、ここの地域の人ですか?」
「えっ? そうだけど…」
「じゃあ…、質問です。この辺に、刈谷さんという方が居たのって知りませんか?多分今から14年くらい前だと思いますが…」
「いや…、わからないな…」
少女は何かを無言で暫く考えた末…。
「そうですか…。もし何か分かったら、このRINEに連絡ほしいのですが…」
「えっ!?」
少女は、ぶら下げている鞄からスマホを取り出して、RINEを開く。
「もし良かったらここに連絡ください。あくまでも見つけた場合で…」
「わかった…」
僕もRINEを取り出すと、おたがいのIDを好感した…。
「ん…。ありがとうございます…。新堂さん…」
「刈谷真名…ちゃんね…」
お互い、IDを交換し、それから刈谷はお辞儀をして去っていった…。
(誰か探してる…。刈谷さんという人を探しているのかな…?もしかしたら親戚か誰か?)
僕は、そんな事を考えながら、家に戻る事にした…。
…………。
………。
……。
帰り道も、百合からのRINEを確認するが、未だに講読すらもついていない。どうしたんだろうか…。でも、学校には来ている…。学校に来ているけど、百合はどことなく雰囲気が変わった感じもした…。
帰り道、携帯を片手に百合とのRINEのやり取りを見ながら握りしめていると、百合から数日ぶりに僕の文章に講読マークがついた。それは起きた…。ついに百合が…。
「あっ…!!百合が見てくれた?!」
そして百合からRINEメッセージが届く…。届いた百合からの文章を僕はウキウキして開く…。文面を見て一瞬、氷ついたと同時に悪夢を見ている。人生の中でも一番不幸な事だ。見て僕は急激に気分を悪くして、変な声とともに朝方食べていたものを大量に口から戻してしまった…。それが何なのかと言われたら…。
『いえ~い!!洋一くぅ~ん!見てる~っ?!』
『あっ!あっ!うっん… ひゃう!ひゃあっ!あっ!』
百合のスマホから送られてきたのは、勝が誰かとセックスをしている動画だった…。
(な、なんでコイツが百合のスマホから…)
僕の背中がゾクゾクとしだし、悪寒が走り出す。何か、嫌な事を今から知りそうで嫌で直ぐに動画を止めようとするが指が言う事を聞かず、再生を止める事も出来なくなった…。
『ほら~。百合ちゃん~?もっと腰ふって?』
『ふ、ふぁ~い!!あんっ!あんっ!あっ!』
僕は硬直する。心臓がばくばくして頭が真っ白になる…。勝の上で全裸になり、自ら腰を降っている少女…。体から上が見れないから分からないけど、明らかに今、百合と名前を呼ばれていた…。
「な、なんで…?ど、どうして…?!」
動画は更に続く…。勝は体を起こして、体制を変える。すると少女の体から徐々にカメラが動きだし…。少女の顔が表になる。その少女は認めたくなかったが、僕の彼女の百合だった…。
『百合ちゃん可愛いでちゅね~ どうよ?初セックスから何回も何回もやった気分は~?ほらほら洋一くんに一杯見せてあげようよ!』
『ふぁ~い!ひゃう!ひゃう!だ、だめっ!!い、いっ、いくっ!!』
百合は、勝との行為で絶頂を迎えたのか、目がとろんとして気持ち良さそうな表情になっている…。
『うわぁ~いっぱいだしちゃって~!ついこの間まで処女だと思えないねー』
『だ…、だって~…はぁ…はぁ…、んんっつ!!勝く…んの…、大きくて欲しがり屋さんなんだもんっ!あっ!ああああっ!あっああっ!ひゃうっ!』
(やめろ!!なんなんだよ!これはっ!)
『ほらほら!ラストスパート~っ!とんとんとんってしちゃうよ~』
『と、トントンしたら…だめっ!だめだめだめっ!』
『くっつ!!いくっつつ!百合ちゃんもトんじゃえっ!』
『ひゃうっつつつ!中ぁっ!なかあああっ!中あついいいいっ!!』
(……うそ…だよ…ね…)
動画はまだ続く…。
『ほら、あの弱虫な洋一君に一言いってやれ~』
『はぁっ…はぁっ…弱虫で…キモい…、洋一…?アンタには…もう興味ないから…はぁ…はぁ…、話しかけて…こないでね?話しかけてきたら…、勝にぼこって…貰うから…。てか…生きているだけでキモい…から…消え…たら?あ…、あと…、ホテル代…だけは…ありがとう…ねっ…』
そこで動画が終わった…。
(…っつつつ!!!!)
全て、裏切られた…。苛めから始まり…。最愛だった彼女まで、その苛めの発端になった勝に取られて…。でも何故取られた…。何故に…。
(ぐっ…ひぐっ……ぐすっ……)
僕はフラフラとしながら…、家に帰っていく…。
~???視点~
(よーやく、見つけたぜぇ~っ、んでもよ?アイツよー、何をいつまでもメソメソしてベソかきやがってんだかヨーぉ…?んーまぁ、しばらくの間、ベソッカキの様子でも見ておくか)
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