★『地縛霊側のご事情を』発売記念★ 月並きら氏インタビュー
2024年6月14日に富士見L文庫より刊行される『地縛霊側のご事情を さざなみ不動産は祓いません』。
第6回富士見ノベル大賞で〈入選〉を受賞した作品です。
本作の発売を記念して、著者の月並きらさんにお話をうかがいました。
裏側を知ることで、いっそう作品が楽しめること間違いなしです。
最後には、富士見ノベル大賞の応募を考えている皆さんへのメッセージも!
作家デビューを目ざす方にとっても必見の内容となっておりますので、ぜひ最後までお楽しみください。
![書影](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/kakuyomu-lbunko/20240613/20240613150432.jpg)
イラスト:ボダックス
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――刊行される作品はどんなお話ですか。
舞台は、曰くつきの物件ばかりを扱う不動産業者 〝さざなみ不動産〟――そこで働く、男女コンビのお話です。作中の世界では、どの不動産業者にもお抱えの〝除霊師〟がいて、彼らが物件に棲みついた地縛霊を除霊(退治)するのが当たり前になっています。それでも〝さざなみ不動産〟だけは、霊たちの気持ちを尊重し、彼らと対話・交渉をして、物件を円満に明け渡してくれることを目指します。
本編では、柔和でおっとりした
あおいと神代の掛け合いと、真相を解き明かしていくストーリーの、どちらも楽しんでいただけるように書いたつもりです。人にも霊にも寄り添おうとする、優しい物語ですので、ぜひ気楽な気持ちで読んでいただけたらと思います。
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――どんなきっかけで作品を思いつきましたか。
初めは、「少し変わった幽霊モノ」という着想で、案を色々出していきました。曰くつき物件や事故物件をテーマにした作品は多いので、一ひねり加えたいと思い、「除霊をしない除霊師が、霊と対話して、物件の明渡し交渉をする」という設定を選びました。ホラー・サスペンス風の暗くて怖い世界よりも、霊と対話をする優しい世界の方が、自分の書きたい雰囲気に近かったというのもあります。
そうやって設定が定まると、話の大筋はすぐに出来上がりました。そこから、主人公2人に行きつくまでも早かったと思います。
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――作品内のお気に入りのキャラクターとその理由を教えてください。
やはり、主人公コンビのあおいと神代です。初めはシナリオありきで造形していったキャラクターでしたが、書きすすめるにつれて、どんどん愛着が湧いてきました。
神代のような、他人に寄り添い、思いやることのできる人には憧れます。あおいのような、芯がある人にも、強い魅力を感じます(あと、関西弁を話す女性はとてもカッコいいです)。作者が言うのもアレですが、息の合ったコンビネーションと、少しムズムズする関係性も、個人的には好みです。2人にはどうか幸せになってほしい……!!
![キャラ紹介](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/kakuyomu-lbunko/20240613/20240613150849.jpg)
イラスト:ボダックス
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――賞への投稿時、作品を書くにあたってどんなことを大事にしましたか。
実はこの応募原稿は、もともといったん完成していたものを、富士見ノベル大賞用に大幅に改稿したものでした。キャラクターノベルの賞ということで、改稿の際は、登場人物の人となりがより伝わりやすくなるよう心がけました。特に主人公の2人は、僕自身思い入れが強かったこともあり、エピソードをたくさん追加するなどして、改稿にあたってかなり掘り下げています。
キャラクターを作るのは本当に難しく、いつも苦労しています。ただ、この作品に限っていえば、いつの間にか出来上がっていた2人の主人公に、作者である僕が引っ張られる感じで書いたような気がします。作り手自身がキャラクターたちを愛してあげることが、良いキャラクターを作る一つの方法なのかもしれないと、改めて痛感しました。
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――富士見ノベル大賞に応募したきっかけを教えてください。
自分が書き上げた最初の原稿が、どのジャンルに属するのか分からず、しばらくネットで新人賞を漁っていました。迷った末に、ダブル主人公の掛け合いで進んでいくという特徴と、平和でゆるゆるした雰囲気から、キャラクターノベルが合っているかもという結論に達しました。その結論に達したときにはもう4月半ばくらいで、締切ギリギリだったので、ゴールデンウィークを利用して一気に改稿したのを覚えています。
キャラクター小説の賞もいくつかある中で、富士見ノベル大賞を選んだのは、たまたまこの賞の受賞作を読んだことがあったからです。その受賞作に、自分の書きたい雰囲気と近いものを感じ、相性が良いかもしれないと思って応募しました。
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――応募が完了したときや受賞の連絡を受けたときのお気持ちを教えてください。
締切ギリギリまで改稿作業をしていたので、とにかく誤字・脱字・矛盾点がないかが心配でした。「ギリギリまでアイディアを出して、良い原稿にしたい」という攻めの気持ちと、「とはいえそろそろ頭から見直しを始めないと」という守りの気持ちがせめぎ合って、テンパっていたのを覚えています。応募した後はその熱も冷めて、「まあ、どうせ無理だろうけどね」という気持ちになっていましたが(笑)。
受賞の連絡を受けた際は、月並みな感想で申し訳ないですが、とにかく驚きました。デビューまではまだ時間がかかるだろうと予想していたので、嬉しい反面、今の実力で本を出してよいのだろうか……というやや複雑な気持ちもありました。
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――改稿の過程や編集との打ち合わせの中で印象に残っていることはありますか。
受賞後も、より富士見L文庫のカラーに合うよう、担当編集さんからたくさん助言をいただいて改稿しました。書いたものを読んでもらい、アドバイスをもらって書きなおすというのは、なかなか経験できないことでしたので、とても勉強になりました。また、改稿にあたって主人公2人をかなり掘り下げたので、応募時よりも受賞後の方が、僕の中で2人の解像度が上がったと思います。
![コメント](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/kakuyomu-lbunko/20240613/20240613151825.jpg)
担当編集コメント
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――これからどんな作品を書いてみたいですか。
できる限り、富士見L文庫の読者層にマッチしたものが書ければ、と思っています。せっかく賞をいただき、費用をかけて本を出版していただくからには、レーベルの売上げに貢献をして恩返しをしたいというのが今の目標です。作り手としての成長のためにも、自分の好きなジャンル・得意分野にとらわれ過ぎず、ニーズを意識した作品作りをしばらくは目指していこうと思います。
ただ、そういう優等生的な理想とは別に、個人的な想いも書かせていただくとすれば、今回書いたあおいと神代のコンビの活躍を、まだまだ書きたいという気持ちが強いです。本編とは別に、電子版で読めるショートストーリーも書かせていただいたのですが、書いている途中で、「これで2人の姿を見れるのは最後かもしれない」と思い、かなり感傷的になってしまいました。普段は設定・シナリオ・トリックに重きを置きがちな僕が、こうやって自分の生み出したキャラクターを好きになれたことは、本当に新鮮な体験です。
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――これから富士見ノベル大賞に応募しようとしている方へのメッセージをお願いいたします。
正直に言いますと、たまたま受賞できただけの僕から、どんな言葉を贈ったらよいのか、よく分かりません。周りにこういう趣味を持っている人もいないので、どういう方たちが応募をしているのかも、想像がついていません。ただ、同じ目標に向かっている方たちですから、応援したいという気持ちは強いです。きっと皆さんそれぞれ抱えている事情や想いがあると思いますので、これからも一緒に頑張りましょう。
一つだけ、応募のモチベーションになるようなことをお伝えすると、受賞をした後、出版に向けて準備をする期間は、興奮の連続だと思います。
デビュー作の発売日が決まり、授賞式に参加し、自分の文章がただのWordファイルから文庫本の体裁に変わり、表紙のイラストが完成し、帯のデザインが決まり、著者プロフィールが完成し、いま書いているようなインタビューの依頼も来ます。まるでプロの作家になったかのような(どうやら本当になるらしいですが)出来事が次々と続き、その都度感動していました。本を出したいと思っている方にとっては、どれも興奮必至の経験だと思いますので、是非皆さんにも味わっていただきたいと思います。
![写真](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/kakuyomu-lbunko/20240613/20240613152141.jpg)
気になった方はぜひ書籍を手に取ってみてください!
▼書籍詳細はこちらから▼
https://bookwalker.jp/de00b082d6-138c-45e2-8e95-a3953f58101a/
【増量試し読み】地縛霊側のご事情を ~さざなみ不動産は祓いません~ 月並きら/富士見L文庫 @lbunko
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