えぇ…(引)

「実は愛梨はな……、俺の誕生日に下着を買おうとしているんだ」

 彼は重々しくそう言った。だから、僕も真剣に答える。

「なるほど、わからん」

具体的には、なぜパンツを選んだのかがわからん。世のカップルはパンツをプレゼントし合うのだろうか。

「愛莉は、男性の好みのパンツがわからなかったから圭のパンツについて尋ねただけなんだ。決してやましいことは無い」

 瞬はそう重々しく言った。瞬はチャラチャラした部分もあるが、結構根が真面目なやつだ。そんな瞬の彼女なんだから、きっと真面目に僕に尋ねたのだろう。僕も納得して、瞬に向かって頷く。そしてなんだかソワソワしている愛莉に話しかけた。

「愛莉さん、僕はボクサーパンツが好きだな。だけど瞬のパンツはブリーフだ。参考にしてくれ」

「ボクサーですね! 把握です!」

 ……うん、話聞いてないな。

 愛莉は「ぼくさ〜、ぼくさ〜♪」と変な鼻歌を歌っている。最初は瞬にとんでも美少女の彼女賀できたと驚いたが、実はこの子アホなのではないだろうか……? 

「なあ、圭……今度三人で遊ばないか?」

「いや急だな? 絶対僕邪魔だろそれ」

 この子もなんだか変だと思っていたが、なんだか瞬も変である。普通は彼女をほかの男……しかも自分の親友と接近させたがるのはおかしい。寝取られ趣味でもあるのならば仕方ないとも思えるが、瞬にそんな趣味があるだなんて聞いたことがない。

「三人がいやなら二人でもいい」

 瞬は僕がけげんな顔をしているのを見て、そう続けた。

「ややこしいな。僕と遊びたいなら最初からそう誘えよ」

  瞬は僕保返事を聞くや否や顔をいつもみたいに輝かせて、なぜか愛莉の方をみて言う。

「愛莉! 圭が愛莉と二人っきりでデートしてくれるって!」

「え!? わーい!」

 愛莉はその言葉を聞いてぴょんぴょん跳ねている。

「……え、俺と瞬で遊ぶんじゃないの?」

「「え……?」」

 二人は同じ間抜け顔をして僕を見る。なぜこのカップルは僕にこんなに構ってくるんだ……。もう瞬に寝取られ趣味があるとしか思えない。普通に怖い。

「……ごめん、寒くなってきたし今日は帰るわ」

 今日の瞬はなにかおかしい。瞬は僕を引き留めたが、目が合った瞬間その手を離した。僕が家に入って鍵を閉めた瞬間、背中にびっしりと汗をかいていることに気が付いた。何かがおかしい、そう僕の心が訴えていた。


 布団に入り、眠りにつく瞬間、ふと思い出したことがある。

 そういえば、愛莉はなぜ僕の家の前にいたんだろうか?



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