それから、覚悟していたよりはずっと平和に、時間は過ぎていった。

 十月になる頃には、僕等の周りはずいぶん静かになった。未だに『ユウキ偽物説』を確認しにくる人間はいなくはならなかったが、シンゴと僕が目を光らせていたのもあって、本人に直接「お前ってさ──」等と話しかけてくる者はいなかった。

 十月半ば頃には、ユウキもユリも、以前と同じように僕等と遊ぶようになった。

 そう、世界は元通りになったのだ。


 しかし、変わってしまったものもある。

 それはあのお化け屋敷の噂だった。最近、公園で低学年の子達が話しているのを偶然耳にしたが、それは僕等が今まで知っていた噂とも、ネットで書かれていた噂とも全く違うものだった。


『ねえ、あそこのお化け屋敷知ってる? あそこには昔お金持ちの夫婦が住んでたんだけど、二人には子供が出来なかったんだって。だけど奥さんは子供が欲しくて欲しくてしかたなくて、それで、ついにおかしくなって自殺しちゃったんだってさ。それ以来、子供が屋敷に忍び込むと、その子供を自分の子供にしようと化けて出てくるんだって!』


 拙い語りではあったが、おおよそこんな話だった。

 内容が全く違ってしまっている事もそうだが、何より、さも昔から語り継がれて来たかのように話していたのに驚いた。


 一体、誰がこんな話を作ったのだろうか? 噂に聞いていた話やネットの話が混ざり合って、伝言ゲームの様に少しずつ変化していったのだろうか?


 ずるずる、と無責任に引き摺られた噂の尾が、誰も見た事のない絵を描き出したのだ。


 僕は怖くなった。

 そして、もうこの話は一生しないと心に決めた。

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