ユウキの家に行くと、あっけないほど普通に上がらせてもらう事が出来た。インターホンを鳴らし、ユウキの母親が出てきた時は追い返されるかと思ったが「いらっしゃい」と普通に出迎えてくれた。

 勝手知ったるで二階に上がると、ユウキはベッドに寝転がりゲームをしていた。何だか、拍子抜けした気分だ。

「おいユウキ、遊びに来たぞ」

 シンゴが言うと、ユウキは嬉しそうに飛び起きた。

「いらっしゃい!」

「なあ、お前、何で公園こないんだよ」

「だって……、お父さんがしばらく禁止だって言うから……」

(やっぱり)

 僕は心の中で呟いた。ユウキが自分から僕等を避けるなんて、考えられなかったからだ。

「今から一緒に公園行くか?」

「ううん。それより、ゲームしようよ」

 ユウキは手に持っていた携帯ゲーム機を置くと、ベッドを下りてテレビの電源を入れた。シンゴは返事もせず、ユウキの隣に腰掛け、ゲームのコントローラーを手に取った。


 それから一時間ほど、僕等はゲームで遊んだ。

「今日の事だけどさ」

唐突に言ったのはシンゴだ。

「うん?」

「お前が偽物だ、とかいうやつ」

「ああ……」

「もし絡んでくる奴がいたらさ、俺を呼べよな。ぶん殴ってやるからさ」

「……ありがとう」

 ユウキは嬉しそうに笑った。僕もシンゴの気持ちに賛同するように首を縦に振った。

「それと、さ……、気になってたんだけど……」

 言いにくそうに、うつむいたままシンゴが訊いた。

「何?」

「お前……、本当に、怪我とか大丈夫だったんだよな? 何にもされなかったんだよな?」

 それは自分も気になっていた事だった。周りから無事だったといくら聞かされても、やはり本人の口から直接聞かない事には不安だった。そして、その機会は今の今までなかったのだ。

「うん、大丈夫だよ」

「ホントだな?」

「うん」

「良かった」

 僕とシンゴは口々に言い、胸をなで下ろした。

 あの時何があったのか、そんな事は僕等にとってもはやどうでも良かった。ユウキが無事だった。その確認が出来た事が何よりだった。

「お父さんが許してくれたらさ、また公園で遊ぼうな」

「うん」

「約束だぞ」

「うん」

「よし、じゃあもう一回対戦しようぜ!」

 そう言ってシンゴは置いていたコントローラーを再び手に取った。

 僕は二人の背中を見ながら、少しだけ目頭が熱くなるのを感じた。

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