2
ユウキの家に行くと、あっけないほど普通に上がらせてもらう事が出来た。インターホンを鳴らし、ユウキの母親が出てきた時は追い返されるかと思ったが「いらっしゃい」と普通に出迎えてくれた。
勝手知ったるで二階に上がると、ユウキはベッドに寝転がりゲームをしていた。何だか、拍子抜けした気分だ。
「おいユウキ、遊びに来たぞ」
シンゴが言うと、ユウキは嬉しそうに飛び起きた。
「いらっしゃい!」
「なあ、お前、何で公園こないんだよ」
「だって……、お父さんがしばらく禁止だって言うから……」
(やっぱり)
僕は心の中で呟いた。ユウキが自分から僕等を避けるなんて、考えられなかったからだ。
「今から一緒に公園行くか?」
「ううん。それより、ゲームしようよ」
ユウキは手に持っていた携帯ゲーム機を置くと、ベッドを下りてテレビの電源を入れた。シンゴは返事もせず、ユウキの隣に腰掛け、ゲームのコントローラーを手に取った。
それから一時間ほど、僕等はゲームで遊んだ。
「今日の事だけどさ」
唐突に言ったのはシンゴだ。
「うん?」
「お前が偽物だ、とかいうやつ」
「ああ……」
「もし絡んでくる奴がいたらさ、俺を呼べよな。ぶん殴ってやるからさ」
「……ありがとう」
ユウキは嬉しそうに笑った。僕もシンゴの気持ちに賛同するように首を縦に振った。
「それと、さ……、気になってたんだけど……」
言いにくそうに、うつむいたままシンゴが訊いた。
「何?」
「お前……、本当に、怪我とか大丈夫だったんだよな? 何にもされなかったんだよな?」
それは自分も気になっていた事だった。周りから無事だったといくら聞かされても、やはり本人の口から直接聞かない事には不安だった。そして、その機会は今の今までなかったのだ。
「うん、大丈夫だよ」
「ホントだな?」
「うん」
「良かった」
僕とシンゴは口々に言い、胸をなで下ろした。
あの時何があったのか、そんな事は僕等にとってもはやどうでも良かった。ユウキが無事だった。その確認が出来た事が何よりだった。
「お父さんが許してくれたらさ、また公園で遊ぼうな」
「うん」
「約束だぞ」
「うん」
「よし、じゃあもう一回対戦しようぜ!」
そう言ってシンゴは置いていたコントローラーを再び手に取った。
僕は二人の背中を見ながら、少しだけ目頭が熱くなるのを感じた。
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