四,???

???

 ──おい。おい、坊や。大丈夫か?

 ──息は……、してるな。おい。おいってば。まいったな……。

 ──あ、おい、ああ、気付いたか。大丈夫か? そうか。怪我はないか? え? 足? 足が痛いのか? まいったな、おい……。坊や、一人かい? お友達は? わからないって? はぐれたのか……。え? 足が痛いって? そう言われてもよ……。ここじゃ暗くて見えねえし……。じゃあ肩つかまれ。ちょっと外に出て、怪我見てやるよ。ちょっとした手当くらいならしてやるから。


 ──よっ、と。……しかし驚いたな。叫び声が聞こえたもんだから、恐る恐る来てみりゃよ、いや、ほんと、死んでるのかと思ったぜ。よし、ほら、おおそうだ。ゆっくりで良いからな。そこの裏口から出よう。


 ──よいしょ、っと。ほら、足見せてみろ。ああ、こりゃ捻挫だな。腫れちまってる。まいったな……、絆創膏くらいしか持ってないからなあ……。切った擦ったなら良かったんだけど……。


 ──ん? 何だ……? ……誰か来たみたいだ。

 ──こりゃマズい。ああ……、ごめんよ、坊や。俺は行くよ。え? なんでって……、そりゃこんなところ見られたら、誘拐犯だと思われちまうだろう?

 ──おい、ちょっと、おい、服ひっぱんなって。きっとお前を探しに誰か来たんだろうよ。怖がることねえって……。おい、ああ、もう、わかったよ、じゃあ一緒に来い。あそこ──、塀の下に穴空いているだろ? そこから裏の森に出られるからよ。おい、急ぐぞ。ああ、もう、何でこんな──。


 ──……、ユウキってのはお前の事か? ああ、ほら、やっぱりお前を探しに来たんじゃねえか。だから言っただろ……。……、警察もいるみたいだな。こりゃさっさと逃げないとヤバいな……。

 ──おい、ユウキ。俺は行くぜ。俺の姿が見えなくなってしばらく経ったら、叫べ。そんで助けてもらえ。な、わかっただろ? おっきい声出すんだぞ? この窪みは、あるって知らなきゃ絶対に通り過ぎちまうようなところだから……。

 ──え? こんな時に腹が減ったって? お前……、のんきな奴だなあ。よし、ほら、パンと水をやるよ。これ食って大人しくしてろ。

 ──え? 俺の名前? 俺の名前は良いよ。つか、警察に助けてもらっても、俺の事は言うんじゃないぞ。内緒だからな?


 ──よし、じゃあ俺は行くからな。

 ──俺の姿が見えなくなってしばらく経ったら叫ぶんだぞ。まだ叫んじゃダメだからな? まだダメだからな──。まだ────。

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