第2話 薬草集め




獣人は可哀想だが、俺にできる事は無い。

 保護者になるにも、俺一人生きていくだけのお金を稼げるかも怪しい。

 今は自分のできる事に集中しよう。


「税金を払えなければ町を追い出されるか、増額して払う事になります」


 税金は1年に1回支払うみたいで、15才以上が金貨3枚、それより下は銀貨3枚。

 冒険者だから免税で払わなくいいとは、ならないようだ

 ただし、冒険者にも特典があって、町に入る時の入門税は取られないみたいだ。


「これが冒険者カードになります。

門を出入りする時は、こちらのカードを見せて下さい」


 長方形のカードを受け取った。

 これが身分証明書になる訳か。


「このカードを見れば、ヒラメキさんの個人情報と犯罪歴が分かります。

 くれぐれも悪い事に手を出さないように……」


「スキルは分からないように、なっていますので安心して下さい」


 犯罪は一発でバレるのか!

 冒険者も意外に厳しい世界だ!


 スキルを見られるは嫌だったから、よかった。

 通販はバレても分からないと思うが、アイテムボックスはまずい!

 むさ苦しいオッサンに絡まれるのは避けたい。

 そう言う俺もむさ苦しいオッサンだがな……



「これが見本になります……」


 薬草が描かれた紙をくれた。

 これで見比べれば、どれが薬草か分かる。


「薬草は森にいけば生えていますが、あまり森の奥に行かないように」


「分かった。 気を付けて行ってくる」


「はい! それと私の名前はミレイナです。

 ヒラメキさんの担当になると思うので、覚えておいて下さい」


「ありがとうミレイナ!」


 受付嬢のミレイナとの会話を終えてギルドを出た。

 町の門を抜ける時に身分証明書であるカードを見せたら、何も言われずに出る事ができた。

 俺はルーガの町に無断で入場したため、門で止められると思っていたが、何事も無く無事に済んで、内心ホッとしている。






「すぐ森に着いたな……」


 森に囲まれた町、ルーガ。

 広大な森、何かモンスターが出て来ても、おかしくない雰囲気がする。

 草が生い茂る森の中で、目的である薬草を見つけるのは簡単じゃないな、、、


「意外に難しい。 これが……薬草か……?」


 受付嬢のミレイナさんから貰った、薬草が描かれた紙と見比べるが、よく分からない。

 とりあえず、見つけたそばから、それっぽい草をかき集めていく、、、

 紙に説明が書いてあり、根っこは残して茎をへし折って採取する。

 取った薬草はアイテムボックスに入れた。


「はぁ〜、これだけ探したのに3本しか……見つけられなかった……」


 結構な時間が経過したが、あまり見つからない。

 薬草を見つけるのって、こんなに大変なのか!

 思っていたのと違う、もっと簡単に見つけられると思っていた。

 俺は自分の無能さに落胆してしまう。


 さわさわ……さわさわ……


 ショックで俯いていると、草むらが揺れて音が鳴る。

 俺の腰ぐらいまである茂みから何かが飛び出してきた。


「にゃっにゃっ!!!」


「人間ニャ! 魚をだすニャ!!!」


 何か可愛いのが現れた……

 幼い女の子には猫ぽい耳が頭にあり、お尻には尻尾が生えている。


 もしかして、これが、、、獣人? なのか?


 ピコンピコンと動く猫耳が気になってしまう。

 本物だろうか?……疑問に思い軽く引っ張ってみる。


「にゃっ!? なにしてるニャ! 引っ張るなニャ!」


「本物だ!!! 取れない!」


「ウチの耳で遊ぶなニャ!」


「ごめんごめん!」


珍しいうえに肌触りがいい耳だったので、ついコリコリして遊んでしまった。


「ニャニャ! はやく魚を出さないとイタズラするニャ!」


「もしかして野良獣人か?」


「そうニャー!」


 これが受付嬢のミレイナさんが言っていた、野良獣人か!!!

 魚を要求してくる猫の獣人がとても可愛い。

 殺すんではなく、イタズラで済ませてくれるあたり、悪い奴では無さそうだ。


「ごめんな、俺は貧乏だからお金も魚も持ってないんだ」


「そんニャ! ショックにゃ! 魚ないニャ」


 俺が魚を持ってないせいで、落ち込んでしまった。

 こんなに可愛い娘を助けてあげれないなんて……


「食べたかったニャ……お魚」


 そんなに魚が好きなのか!

 本物の猫みたいだ。


 う〜ん……

 どうにかしてあげたい、俺にできる事がないか考える。

 十分なお金があれば、俺の通販スキルを使って魚を購入できるかもしれない

 その為にはお金がいる、この猫の獣人に手伝って貰えば稼げるんじゃないか。


 そうだ……俺が保護者になればいいんだ!!!


「俺が保護者になるから、一緒に暮らさないか?」


「ニャニャ!」


「今は貧乏たけど、君が手伝ってくれたら、いっぱい稼げると思う。

そうなったら魚をご馳走してあげる」


「魚ほしぃニャ!!! 保護者になってニャ」


「よーし決まりだ! 俺の名前はヒラメキ。

君の名前も教えてくれ」


「ウチの名前はレリムにゃ」


 こうして俺達はパーティーを組むことになった。


 レリムの年齢は12才。

 なぜ野良獣人になったのか事の経緯を聞くと……

 親がドラゴンとの戦闘で相打ちになり死亡したため、町から追い出されて野良獣人となったらしい。


「レリムの両親は強かったんだな……いやドラゴンと相打ちって強いのレベルじゃないな……」


「ニャニャ! 父さんも母さんも、ウチの誇りニャ!!!」


 自慢の両親だったみたいだ。

 両親が居ないのに、一人逞しく生きるレリムを見てると泣けてくる……


 俺がいつまでも落ち込ん出ても仕方ないので、気を取り直して仕事に戻る。


「レリム薬草を見つけてくれ」


「任せるニャ!親に習ったから楽勝ニャ」


 俺達は一緒に薬草を探し始めた。

 猫獣人のレリムは要領が良く、すぐに薬草を見つける事ができた。

 少し森の奥に進むと、それぽい草がたくさん生えている。


「これが薬草ニャ……こっちは毒消し草。

ニャニャ! こんな所に高薬草こうやくそうが生えてるニャ」


 レリムの説明によると……

 高薬草は、普通の薬草より効力が強いらしく、上級ポーションの材料になるみたいだ。

 値段も薬草より高く、森の奥に行かないと見つからないらしい。


「ラッキーにゃ」


 他にも癒やし草や、毒消し草等を手に入れた。

 癒やし草はポーションの材料になり、毒消し草からは解毒ポーションが作れるみたいだ。


 かなりの数の薬草が集まった。

 俺一人で、この数を揃えるのは不可能だったろう。

 レリムには感謝しかない。


「ありがとなレリム」


「どういたしましてニャ! うんニャ? なんかいるニャ」


 レリムが睨んでいる方向に視線を向けると、茂みから緑色の小人みたいなのが飛び出してきた。


「ニャ? ゴブリンニャ!」


「これがゴブリンか!? 醜い姿をしてるな、2体もいる!

よし逃げるぞレリム!!!」


「フシャ〜! ご主人には手を出させないニャ」


 レリムに撤退を呼び掛けるが聞いていない。

 ていうか俺の事はご主人と呼んでいるようだ。

 戦闘態勢に入ったレリム、獣人の血がそうさせるのか、ゴブリンに対し威嚇している。

 まだ幼いのに全く怖れていない。


「ゴブ!?」


 先に攻撃を始めるレリム。

 手をグウにしてゴブリンの頭を殴る。

 ゴキっと嫌な音がなりゴブリンが倒れた。

 もう一体のゴブリンが仲間がやられた事に怒り、持ってる棍棒で攻撃を仕掛けが、レリムは素早く避けて後ろに回り込む。


「当たらないニャ! なめるなニャ!!!」


 ゴブリン以上に激昂しているレリムは、背中側から首を殴って骨をへし折ってしまった。

 殴られたゴブリンは首がシナだれて俯いた状態で倒れていく。


「す、すげぇ〜……レリムってこんなに強かったんだな!

しかも……素手って……痛くないのか?」


「大丈夫ニャ! ゴブリンぐらい素手で楽勝ニャ!!!」


 ゴブリンを瞬殺した、レリムは元気に飛び跳ねている。

 猫獣人からすれば余裕だったみたいだ。

 倒したゴブリンの内一体が持っていた棍棒はせっかくなので、頂いてレリムの装備にする。


「ニャニャ……武器があれば、もっと強い奴にも勝てるニャ!」


 頼もしい発言だ!

 採取でも俺より上手いし、戦闘に関しては本当に頼りになる。


 ゴブリン2体をアイテムボックスにしまい、日が暮れ始めたので、レリムと共に町に帰ることにした。

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猫獣人と行く異世界ほのぼの冒険記 ぺったんこ @vivir

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